その37 恐れ多すぎます……!

「でね、この魔物は狼が魔素にあてられて魔物化したものなの。炎の性質は南の方に多い魔素だからこのあたりでは珍しいわね。もう少し魔物として成長すると戦狼になって」

仕方ないと言いながら問題の物をしまったルース様がどこか嬉しそうに炎狼の説明をしてくれる。

「ちょ、ちょっと待ってください!炎狼も大変だけど戦狼って物語に出てくるすごい危ない奴じゃないですか!」

「ねえ言葉が硬くなってる!もう!」

「いや、今は言葉どころじゃなくって、いやそれも大切なんだけど……」

ダメだ。もうなんか私には手に負えない。そう思って周りに視線をやると、すべて上手にかわされてしまった。

「聞きたいことがありすぎるんだけどどこから聞いたものか……。」

「あら、そんなにあせらなくてもいいわよ。ねえ、今日はとまっていく?」

「かしこまりました。全て整っております。」

「えええ、泊まるなんてただの平民ですよ。おやめください。このことが他のお貴族様に知れたらどうなるか」

「あら、その時はまたその時よ。ふふ、あの時は楽しかったわぁ。」

いや、あの、えええええ。

「とりあえず色々お話しましょう。私は魔法は分かっても民間の薬のことは分からないの。あなたも治癒魔法の事、気になっているんじゃなくて?」

「それは……その……。でも私はそれを知ったところで使えるだけの魔力を持っていませんから。」

「あらそう?じゃあうちの書庫は見ていかなくてもいいかしら?」

「えっ」

ルース様の家の書庫。あきらかに他のお屋敷よりも大きなお屋敷の書庫となればそこにある本の数だってきっとすごい差があるはずだ。魔法のことを書いた本以外になにか面白いものもあるかもしれない。それにお誘いを無下にするのも失礼に当たるとしたら。

「よし、その顔は決まりね。じゃあ、せっかくだから部屋に移動しましょ。その方が本を見ながら説明したりできるもの。話も早いわ。」

「え、ええ、はい。」


それからはもうままよと言う感じで身を任せると、柔らかな綺麗な服に着替えさせられ、なぜか髪の毛もルース様と同じように結いなおされ、自分の家よりも大きな部屋に通された。

なにこのお部屋。なんかお花のいい匂いがするし、すごい空気がきらきらしてる気すらする。こんなにきれいな場所があったんだ。

「すごい……。」

「さあ、今日はもう帰る時間を考えなくていいわ!ゆっくりお話しましょ!」

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