その36 進むペースが速すぎます!
ルース様との何度目かのお茶会。最近呼ばれるペースが速い。
お土産のお菓子をもらえるのはうれしいけど、ほぼ毎日呼ばれるから怪我人の様子見とかお茶の販売とかがほとんど父さんと母さん任せだ。ほんと、ごめん。
街のみんなももう小麦を挽き終わって、果物も干してある。薪も準備して、後はお肉の貯蔵ができれば冬を越せるだろうという時期だった。けがをした人たちも何日か経って、少しずつ状態が良くなってきている所だ。
「じゃあ、まだ魔物の問題は解決してないのね?」
「ええ、狩りが得意な人たちが大けがをして帰ってきたものですから……手に負えなくて。」
「じゃあ、冬支度のお肉は?」
「幸い行商人から買えた分と、後は街の近くで野ウサギが時々とれるのでそれを。」
「そう。」
ルース様はちょっと考え事をしながらこちらの話を聞いてくれる。
メディチ家でのひと悶着があってからはお使いの人が小さな馬車という乗り物で迎えに来てくれて、ルース様の家の庭でお茶会をするようになった。
あのお嬢様はメディチ家のお嬢様で、殴ってきた取り巻きはそのお友達だったらしい。
その関係の説明はなんかよく分かんなかったけど、お貴族様って大変らしい。
「ねえ、マカロンのおかわりをちょうだい。」
ルース様は時々、人払いしたいときにこう言う。
「かしこまりました。」
給仕をしてくれた人たちがさっとどこかへ隠れてくれる。
なぜか控えのテーブルセット(そう、控え。つまり予備。毎回使わないのにあるの。)を端に寄せて座っているテーブルセットの隣に大きな場所を作って。
「よし、じゃあ出してもいいわね。」
人がいなくなったことを確認したルース様はドレスのポケットから小さな袋を取り出す。
そこからにょきにょきと獣の大きな足が出てきて……。
ドン!
お世話の人が予備のテーブルやらを運び出した石のタイルの上に緋色の毛皮を持つ小山のような獣が取り出されていく。
真っ赤な血を固めたような蹄。燃えるような毛並み。大きく鋭い牙。
まさか、これって……。
「これ、今日の朝森の近くで仕留めてきたの。村のみんなを襲った仇討ちはできたかしら?」
「「え?……えええええええええええええ!」」
人払いでどこか行ったはずのお世話の人達と私の声が思いっきりシンクロした。
「つまり、今日の朝、ルース様は人目をかいくぐって森に一人でこの炎狼を仕留めてきた、ってことで……?」
「ええ、そうよ。」
「ルース様、そうよではなくてですね……とりあえずしまってもらっても?」
ちょっと自慢気に答える彼女の後ろで給仕の方が2人ほど失神した。
急いで気付薬を嗅がせる。なんかすごいことしてくれましたね、ルース様?
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