その32 狩りでなぜか大やけど?です!

お茶会の後、なぜか本を持ち出したことを怒られ、それをルースちゃんがとりなしたりする一幕があって、私はるんるんで家に向かっていた。

「ルースちゃん、いやルース様にたくさんお菓子もらっちゃった。いくつかに分けて隠しておいてゆっくり食べよう。」

お茶の間ずっとルースちゃんって呼んでたからうっかり呼びそうになっちゃったけど、本当なら会うことすら難しいくらい雲の上の人なんだよね。全然そんな感じしなくなっちゃったけども。

お土産のお菓子は、母さんや父さんに見せる分を持たせてくれた籠の中に、それ以外の自分で食べる用の小さな包みをわざわざルースちゃんがもたせてくれて、それは服の下にそうっと隠してある。ヴィネーラが来たら一緒に食べたいな。

最近ミェーチとマーリン見かけないし。

久しぶりに会いたいけど多分今頃狩りに自分ちの仕事で忙しいんだろうな。



「おい!ソフィア、急いで家に戻ってくれ!」


ぼうっと考えながら歩いていると、武器屋のおじちゃんが慌てた様子で駆け寄ってきた。


「あれ、どうしたの?おじちゃん。」

「狩りに行った奴らが皆大やけどして帰ってきたらしい。お前の父さんと母さんが急いで手当してるんで呼んでくるように言われたんだ。」

狩りに行って大やけど?

特に山火事にもなってないんだよね?なんで?

「とりあえず分かった。けがの人数はどれくらい?父さんがなにか薬草足りないって言ってなかった?」

「さっき帰って来たのは5人だな。先駆けで帰ってきたやつらだからこれから増えるだろうよ。とりあえず足りないのは人手だって言ってたな。」

「うーん、そっか。……じゃあちょっと頼み事していい?」


これから人数が増えるなら、寝かせる所と処置の前に清潔にする準備が必要だろうから……。


「おう。とりあえずその籠を持てばいいか?」


これはルースちゃんがくれたお菓子だからダメ。ダメったらダメ。


「いや、これは家に持って帰ってそのついでに色々持っていくから大丈夫。どこかで皆に声をかけてまだ洗濯したばかりの使ってないシーツをあるだけ集めて。それからもし人手があれば父さんの店の裏にあるたらいにお湯を沸かしてなみなみ入れておいて。」


そうすればシーツに寝かせてお湯で体をふいてやけどの診察に入りやすくなる。

後はどれだけやけどの広さと深さがあるかだな。

あんまりひどいようなら私たちが薬で痛みを止めている間にルースちゃんに何かいい方法を聞きに行く必要も出てくるかもしれない。

大人数が狩りができないとなると冬支度にも影響が出るし、名前忘れたけど父さんと仲良くなってた人に効けばもっといい治療が出来るかもしれないし。

あー、だめだ頭がパンクしそう!


「よし、シーツとお湯だな。」


うん、とりあえず今は考えるのやめ!


「うん、シーツとお湯!よろしく!」


そうと決まればおっちゃんの行動は早かった。近くの店の人たちにさっさと声をかけ始めている。ああいうのって口づてであっという間に広まって、すごく効果があったりするからすごいよねぇ。

じゃあ私はお菓子を置いたら瓶と消毒液とあと何をもっていけばいいかな……。

お菓子は……ひと段落するまでお預けだね、早く食べられればいいんだけど。

そうぶつぶつ考えながら私も小走りで家に向かうのだった。

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