その26 不養生はいけません!
それからというもの、私は薬屋なのかお茶屋なのか分からない日が続いた。
「もう今日の分はおしまいです!後は明日の優先リストに名前と欲しい数書いて!でも書いても絶対じゃないからね!それだけは分かってね!」
ヴィネーラと武器屋の奥さんにあげた元気になるお茶は瞬く間に皆に広まって、今では街のみんながこぞって買いにくる品になっていた。
しかももうすぐ出発する商人隊からも仕入れのお願いをされている。
街の皆を優先にします、とは言ったのであまり量は持たせられないけど、もしこれで王都やそこまでの道のりの人々が元気になるなら少しは多めに持たせてあげたいと思う。
お客さんにリストを書かせて店の裏に戻ると父さんが乾燥棚を見ている所だった。
「父さん、カモミールの乾燥はどう?」
「こっちはもう大丈夫だな。これはまだだめだ。」
「ソフィア、お茶を入れる袋持ってきたわよ~」
「あ、ありがと母さん。」
もう中身を作るので精一杯なので、お茶を入れる袋はすべてお母さんが作ってくれている。
本当はみんなに自分の袋を持ってきてもらうつもりだったんだけど、母さんが絶対に売れるし、持ってきた袋の大きさで戦争が起きるからやめるようにいわれたのだ。
あの時母さんの言うとおりにしておいてよかった。こんなに売れると思わなかった。
「じゃあこっちの乾いたのを袋詰めしよう。ミントは確か昨日詰めたときの残りがあったはずだよね?」
乾かしたものを使ったお茶と、乾かす前の状態で作ったお茶。
薬屋としては効き目はどっちもどっちな気がするけど、皆手間賃が上乗せされた乾かした方のお茶を買っていく。
その争奪戦であぶれた人たちや乗り遅れた人たちがそのままの状態のをまた取り合うって感じなわけで。
「正直生の状態のお茶に絞っちゃってもいいんだよね、種類。」
毎日カモミールとミントを袋に詰める作業をするのに飽きてきた。
いい匂いだし、みんなが元気になるお手伝いができるのはいいんだけど他のこともしたい。
例えば新しいお薬の調合試すとか、森に薬草さがしに行くとか、森でお散歩するとか……。
最初はヴィネーラ達がお屋敷関連の仕事でみんなが根を詰めていることを心配する立場だったけど、このままいくと一番根を詰めることになりそうだ。
森できままにお散歩したい。ベリー摘んで、ジャムも作って、いつも通りならもうそろそろ商人のおっちゃんたちからバターを買ってパンに塗って食べたりしたい。
「あー、もう無理!疲れた‼」
父さんも母さんも目の下のクマがひどい。父さんは薬屋としての仕事をしながらだし、母さんも家事にお茶の売り子にと色々掛け持ちでやってもらっている。多分私以上に休んでない。
「よし、決めた!明日頑張ったらしばらくお休みにする!ちょうどカモミールもそろそろ在庫切れるし、倒れる前にお休みする!」
お茶のおかげである程度の売り上げはある。しばらく薬屋を休んでも生活には多分支障はないはず。だって材料は森にもらったものがほとんど、袋代にちょっと色を付けただけの値段で作れる。
そう決めたら父さんと母さんに言ってこなきゃ。早く二人をゆっくり寝かせたい。
町一番の薬屋が倒れたらシャレにならないからね。
なんとかの不養生っていうでしょ?
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