その25 お茶を作りました!
「あ、ヴィネーラ!」
「あらソフィアじゃない!ひさしぶり~」
ちまちまと貯めておいたアザミのトゲを武器屋に売りに行くと、先客がいた。
「どうしたの、武器屋なんて来る用事ないでしょ?」
「それがね~針がすぐだめになるから研いでもらいにきたの。刺繍するとすぐ先が丸くなっちゃって、針穴が大きくなっちゃうから。」
「へ~、そうなんだ。あ、おじちゃん、いつものトゲ。」
武器屋に下ろすのは薬には使いにくい育ちすぎたものや、抜くときに折れてしまったもの。
武器にするには状態より量が決めてらしから、折れた分だけ。薬が取れるいい状態のはもちろんこっちでおさえてあります。二日酔いの薬、すごい評判いいからね。ここのおじちゃんもいいお客さん。
「刺繍で今クッション作っているんだけどね、楽しいわよ。布の上に刺していくと花や葉っぱがどんどん出来上がるの。恩恵もあって、今は一番大きな模様の担当もさせてもらっているのよ。」
「へぇ、すごいね。さすがヴィネーラ。」
「そういえば二日酔いの薬、うちのお父さんもすごく良く効いたって喜んでたわよ。ありがとね。」
「ああ、うまく使ってくれたなら良かった。あ、そうだ。ヴィネーラこれあげる。」
「あら、また新しい薬?私は特に具合が悪いところはないわよ?」
「こっちのクリームが刺し傷とかに効くかもしれない軟膏、こっちのはお茶。」
「あら、お茶?」
「うん。お屋敷で本を読ませてもらったときに、書いてあったの。最近疲れているだろうし、薬ほどじゃないけど少し楽になるかなって。ちょうど材料もあったしね。」
「ありがとう!うれしい!実は最近ちょっと疲れすぎて眠れないことがあって気になってたの。これは普通に大鍋で沸かせばいいのね?」
「うん。多分大きいお鍋に1袋でいいと思う。もしそれで濃いと思ったら飲むときに水で薄めて。それからその袋ごと入れれば葉っぱが鍋の中でばらけないから楽だよ。」
乾燥したカモミールと少しのミントを小分けの袋に入れてある。3回分あるから、試してもらって評判が良かったらお店でも考えようかな。あ、でもそんな余裕ないかな。学校がどうとか言ってたし。
「じゃあ、これで大鍋いっぱいに作って飲めばいいのね。それならみんなで分けても1人コップ1杯は飲めそうだわ!」
きゃっきゃと話していると、アザミの計量と研いだ針の確認が終わったおじちゃんがカウンター越しに声をかけてきた。
「おうソフィア、それまだあるか?」
「え、ああ、あと1つあるけど。」
「じゃあそれくれ。カミさんが最近ちょっとしんどそうにしてる時があってな。もちろんその分は買い取りに乗っけておくよ。」
「えーそうなんですか?大変ですね。」
「じゃあ、聞いてたかもしれないけど、これを大鍋の水に対して1つ。ぐらぐらにしたお湯に入れて冷めるまで待った方が薬としては良いと思う。ただ、寝る前とかだとお湯に袋をつけて飲めるぐらいに冷めるまででもいいかも。」
「じゃあ、先に作っておいたのを後で温めなおしてもいいかもしれないわね。」
あ、確かに。
「さすがヴィネーラ、あったまいい!」
「そんなことないわよ。じゃあ、針ありがとうございます。またねソフィア。」
針を受け取ったヴィネーラは心なしか元気な足取りで店を出ていった。
「じゃあ、おじちゃんも。効くといいんだけど。」
「おう、ソフィアんちの薬はどれも良いからな。ほれ、アザミとこの薬の分だ。」
「だから薬じゃなくてお茶だってば。」
思っていた以上におまけしてもらった金額を受け取って自分の店に帰る。
こうなれば早速準備だ。
「ただいま父さん。多分明日からお茶が飛ぶように売れるよ。」
「おうそうか」
もはや突飛な行動に驚かなくなってくれたので、こちらとしてもやりやすい。
多分、色々思ってはいるんだろうけど。
「それでどの薬草使うんだ。」
「カモミール。後少しだけミント。」
「ならそこの瓶の中のを先だ。」
「うん分かった。」
カモミールのちょっと甘いいい香りに自然と口角が上がる。
明日、いい報告聞けるといいなぁ。
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