その24 王都のお医者さんと父さんの親ばかです‼
「じゃあ、南の方だと全然治療法が違うんだ。」
王都では体に傷をつけて血を抜いてみたり、犬に噛ませてみたり、泥を塗ってみたり、色々と苦肉の策がとられているらしいというのはお屋敷でメディチさんから聞いていたけど、それ以外にも私からすればとんでもないことが治療として行われていたらしい。血を抜いた傷口じゃなくて切った剣に薬の泥を塗るとか聞いて、もうどこから突っ込めばいいのかめまいがした。血を抜いても、いやそのために傷を作るところからダメだよ!王都のお医者さんたち何やってるの。
「じゃあ王都のお医者さんたちは魔力が使えなくなって、手あたり次第やけくそになってるってこと?」
王都のお医者さんたちは、最初は魔力をもって治癒魔法を使っていたらしいんだけど、だんだん使える魔力が少なくなったらしく、治癒魔法に頼らない治療法を血眼になって探しているらしい。その結果がこの迷走ぶり。私はそんな迷走しないで煮沸消毒にたどり着けて良かった。
「それにしてもソフィアちゃんはなんで煮沸消毒?とかいうのが良いって気が付いたんだ?大発見だぞ。」
「いや~、自分でもよくわからないんだよね。熱で朦朧としてるときになんか分かるようになったというか、それがされてないと嫌だって思うような感じになったというか……。」
正直うまく説明できないんだよね。
自分の快・不快の感覚が前と少し変わったのは分かるけど、恩恵で目に見えてすごいことが出来るようになったわけでもないし。
そもそもなんで感覚が変わったのかすらも自分で説明できないし。
できるのは自分で感じたことに対する対処が浮かんだ時にそれを実行することだけ。
基本受け身だし、欲しいと思ったときに絶対何かが浮かぶわけでもない。
きっかけがなければなにもない。ただの薬屋の娘だ。ただの薬屋の娘だし、それでいい。あんまり忙しいとぼうっとする時間が無くなるし、空を見上げて雲が流れるのを眺めていられる時間がないなら、きっと私は幸せじゃなくなる。多分他の人には笑われるだろうけど。
「ソフィアちゃんはそうやってぼんやりしながらすごいことをするからなぁ。」
「ああ、もうまた風邪薬の調合の話を。あれはまぐれだし、そもそも調合ほとんど父さんがやったから私は薬草ちょっと入れただけだって言ってるでしょー。」
「あの日ソフィアちゃんが寝てから親父さんずっとその話してたんだぞ。うちのソフィアは天才だ、最強の天使だってずっと言っててな、親の愛は本当にすごいからな。」
若干遠い眼してるね、おじさん。お疲れ様です。というか、父さんそんなこと言ってたの⁉
「特に男親は娘に入れ込むって聞いたことがあるがな、すごかったぞー。それに実際もすごいんだ。もっと自信もっていいさ。」
うーん、なんだろう。嬉しいんだけど微妙に喜びきれないこの感じ。
その日は、なんだかちょっと父さんにどう接すればいいのか分からなくて、なにもないのにドギマギしてしまった。
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