その23 久しぶりの商人のおじちゃんです!

春になったので、久しぶりに流れの商人が街を訪れるようになった。

うちにももう顔なじみになった商人が泊まりに来ている。

「いや~ソフィアちゃんが流行り病から持ち直して、しかも流行り病の治し方をみつけちまうとはなぁ!」

うちの広いとは言えない、いや狭い部屋で、父さんと一緒にいい感じに酔いの回った商人のおじちゃん。

「もー、あんまり飲みすぎないでね。」


アザミのトゲを抜きながら、ちょっとだけ釘をさした。

まだ春でも寒い日は寒い。窯の辺りで暖を取りながら食卓を見やる。

「今日は良いんだ。南からここまでくる間に目も当てられない街を散々見てきたからな。これは祝い酒だよ。」

「もー、調子いいんだから。明日二日酔いでも知らないからね。」

ちまちまとトゲを小瓶に入れながら膨れてみせる。これといくつかの野草をごりごりとすってお湯に溶かせば大体の二日酔いに効く薬になるらしい。まだ本を読んだだけで、効果は未知数。明日試してみようか。実験台(おじさん)は自分が持ってきた強いお酒を開けて飲んでるからもってこいだとおもうんだ。

「そういえば、今日はいい薬ないの?」

いつもならお酒が回ると持ってきた薬の話が止まらなくなるのに、今日はそんな話が一向に出てこない。

「……いやぁ、なんというかなぁ。道中売って、効くかどうかを見た限り、いいものはないな。」

さっきまで陽気だったおじさんの顔にさっと陰が差す。

「なにより、この街じゃおまえらがいるから俺の持っている薬はいらない。街に入ったときにそれは分かったよ。あ、もちろん効かないのが分かっていて買うならいくらでも売るぞ?」

「じゃあもちろん安くしてね?」

働いて得たお金はどんなに少なくても貴重な私のお金だ。お貴族様のように、気の向くまま道楽としての使い方はできない。

「こりゃぁ、一杯やられたな、親父さん、ソフィアちゃんは大物になるぞ。そらもう一杯」

これはもうこのままつぶれるまで終わらないやつだ。

母さんもスープを出した後は早々に寝ると言っているし、私もそこそこのところで切り上げて寝よう。もう。

アザミは逃げないからちまちまやればいいし。二日酔いの薬の分以外は武器屋に持っていくけどどのくらい残しておけばいいかな。半量あればいい?いやでも効果てき面だったら絶対売れるから多めにとっときたいよな。

でも効果がなければ武器屋で売った方がお金ははいるんだよなぁ。

結局配分はどうするか結局決めかねたまま、その日はベッドに潜り込んだ。

母さんの寝息が規則正しく聞こえる。

その寝息に誘われるようにソフィアも夢の世界に引き込まれていった。

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