その14 しょうがないのでベッドを直します!

急いで作られるお屋敷のお仕事も、今日は休み!5日ぶりにみんなと遊べる!森でヴィネーラの秘密のプレゼント用の染める材料を集めて、みんなでベリーを摘んで、それからみんなで……と色々計画を立てていたのに、目覚めて見れば、久しぶりのお休みは、朝から無情な雨だった。

「あー、もー、せっかくみんなで森に行こうって話してたのに―。」

雨になると、森には行けないから皆と遊べないし、父さんの手伝いもできない。

出かける場所も、特にない。つまり、おとなしく家にいるしかない。無理に出かけても洗濯物を増やして、それから風邪を引きやすくなるだけだ。

家の中も、掃除は母さんが、私が台所を綺麗にして以来、もうそれは見事に磨き上げるようにやってくれているから私がやるところはほぼない。パンはもう焼いてあるし、スープも作ってある。そうなったら、ずっとやった方が良いけど、めんどくさくてやってなかったあの事に手を付けるしかない。

「母さん、新しい紐ある?」

「たしか物置にあるわよ。やっとベッド直す気になったのねぇ。」

そう、掃除のために藁を引き抜いた件のぼこぼこのベッド。めんどくさいからとそのままにしていたら、掃除をし始めた母さんにすぐさま気が付かれて事あるごとに直さないのかと言われていた。だって全部ほどいてまた結びなおすの時間かかるんだもん。それにそのままでも寝れるし、その寝心地にも慣れて馴染んできたし。

「しょうがないからやるよ。母さんはやることないの。」

「そうねぇ、じゃあソフィアがベッドを直している所を見ていようかしら。」


ベッドの藁をほぐすと、思ったよりも藁が虫食いされていたり色々して新しい藁と替える部分が多かった。いや、まさか虫の卵が埋まってるなんて思わないじゃない。いつも押しつぶしてる藁の束の中にさ。


「ああ、疲れた。もうしばらくは安心して寝れそうだ……。」

藁を縛り終わって、虫食いや卵の付いたものは窯の奥に放り入れて燃えたことを確認したらどっと疲れた。

「じゃあご飯にしましょうか。ソフィアが頑張ったから今日は豆のスープにしましょう。」

「待って、私のご飯に豆を入れないで。卵を思い出すようなことはしたくない。あんなものの上に寝てたの本当にショックでちょっと無理。」

「そうしたら今日のスープ、具なしになっちゃうわよ」

「うん、それでいい。むしろその方が安心して食べられるからうれしい。」

「そう、じゃあその分パンはちょっと豪華にしましょうか。」

その後、ふいうちの白パンで頭を抱えて悶絶したのはいうまでもない。

この前塗り薬の配達に行ったときにもらって大事に残しておいた白パン。

昨日は幸せの塊だったのに。いや、今でも気持ち的には幸せの塊なのに。こんな、こんなところで精神的にダメージを受けることになるなんて。そんな、そんな。これは虫の卵ではないのは頭ではわかっているのに。

それから何日かは白パンがどうしても受け付けなくて、やっと食べられるようになった時には白パンはかちかちに硬くなっていましたとさ。

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