その10 やっと、雪解けの季節です!
それから何度も大洗濯会が開かれ、気が付けば雪解けの季節になった。
毎回ちょっとずつ違うご飯が食べられて楽しかったなぁ。
洗濯の後のご飯は、最初は洗濯のおまけだったから皆同じようなご飯だったけれど、気が付けばちょっとした料理自慢大会になっていた。
話を聞いた皆の父さんたちが川の近くに小さな小屋を建ててくれた辺りから、みんなパンの焼き加減を変えてみたり、少しでもきれいに粉をひいて、なんちゃって白パンを作ってみたりしていた。
父さんたちも冬は体を動かせないからって言って張り切って小屋以外にも粉を引く道具とかを作ったらしい。
そういえば竃を大きくしてもらったって話も聞いたような……?
私の思い付きは、気づけば近所の人たちを巻き込んだ大きな楽しみになっていた。
「あー、もうなんでこんなになるかなぁ」
この時期は道がぐちゃぐちゃになるから、お出かけがちょっと大変だ。
地面が雪とその溶けかけのぐじゅぐじゅしたのと土とが混ざって出かける気分をじりじりと削いでいく。
なんで泥はねって気を付けててもなっちゃうんだろうね?母さんは歩き方のコツがあるのよ~なんて言って全然汚れないですたすた歩いていく。
実際私の服はドロドロだけど、母さんのは綺麗だ。
その後の洗濯も、泥はねとかの泥汚れを一回乾かして払ってっていうのがめんどくさい。
水替えを余分にやれば泥を乾かさなくていいんだけどさ。
早く終わらせたら他の事出来るじゃない?
「……ここだけ取り外しできればいいのに」
服は上から下まで全部つながっているから、一回下の方をドロドロに汚しちゃったら上が綺麗でも洗濯行きだ。
今はあんまり外に出かけないからいいけど、森が解禁されたらもっといっぱい出歩くから服の洗濯が間に合わなくなる。
自分が我慢できてもせっかくきれいになった部屋がドロドロになるのは嫌だしなぁ……。
服、どうにか増やせないかなぁ。
そう、雪解けの季節と言えば、森へ行くことができるようになる時期だ。
森の浅いところで冬眠から目覚めた熊とかを山に払う狩猟期間が過ぎれば子供でも森に行けるようになる。
父さんとか、町の男の人たちが先にある程度狩りをして野生の動物を払ってくれるから木の実とかも割と安全に取りに行けるのだ。
時々迷い込んでくるのは小さい動物がほとんどだから、そうっと離れれば危なくない。
となれば、やることはひとつ!素材採集!
今年の春は、洗礼式の前の最後の春だから、手伝いがなければ1日丸々自由に時間を使える最後のチャンス!
洗礼式が終わったら父さんの店で一緒に働くようになるから、自由に色々できる今のうちにやりたいことは試しておかないと!
洗礼式の後、父さんの店で働いたときにいっぱい役に立つこと考えておくんだ!ふふん、たのしみ~!
「おーい、帰ったぞ」
「おかえりー!」
「あら、おかえりなさい。ずいぶん早かったわねぇ。」
今日の父さんはなんだか疲れているのに機嫌がいい。ということはもしかして……?
「今日はでっかい猪が出たからな。これでやっと大物狩りも終わりだ。」
その言葉に、わくわくが止まらなくなった。
「じゃあ、もしかして、今日の夜、お肉?」
「ああ、今日は特別うまいぞ!」
「やったぁ!」
久しぶりの柔らかいお肉だ!
それにこれで森にも行ける!
大物狩りの後は食べられるお肉がいっぱい手に入るから、特別に夜もご飯が食べられる。
その前の日の解体したお肉とその日に狩ってきたお肉を好きなだけ。
焼いて食べると干し肉と比べ物にならないくらいおいしい。
大きい獲物の時は広場で解体してそのままそこで焼いてみんなで食べる。
今日は広場でご飯だ!
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