女子と男子


・・・時を同じくしてやい、じぇねの行方を捜すべく動き出したのえるとすずふみ。


じぇねにメールを送った直後に、受信されたそのメッセージを確認するとのえるは頭を抱えた。その内容はこうだ。


ーテストが終わった再来週の日曜日、カラオケに行く予定をれつさんがたてたんだけど、のえるも一緒にいかない?ー


『ったく、ゆういちのやつ。いまこっちはそれどころじゃないってのっ!』


苛立ちというよりも呆れのほうが先にきて、のえるは自分の肉体から力が抜けるのを感じる。


『・・・ゆういちくん?・・・いふちゃんからじゃなかったんだ・・・』

『うん、・・・そう・・・はいこれ』


のえるは気だるそうに自分のスマホを差し出す。そしてそれを受けとるすずふみ。そしてメッセージを確認する。


・・・目を通し終わったように見受けられるが、何故かすずふみは画面を見たまま黙りこんでいる。


そしてしばらくして閉じていた口を開いた。


『ねぇ、のえる。ゆういちくんにも、いふちゃんやじぇねちゃんを捜すのを手伝ってもらったらどうかな?』

『えっ?』


ゆういちからのメールに関しての返答を予想していたのえるは、その予想外のすずふみの答えに戸惑いを覚え、相手の顔をみる。


『・・・やっぱり男の人もいたほうがいいとおもう。それに二人を捜すのに人数が多いほうがいいとおもうの』

『それはそうだけどさ、・・・なにもゆういちじゃなくてもいいんじゃない?』


『・・・だってあいつ調子ばっかりよくてさ、いつもエッチなことばっかりいってるし、


役にたたないってっ!。それに変な要求とかされそうだし』


『・・・それはないとおもうよ・・・ねぇ、のえる覚えてない?』

『えっ、・・・なにを?』

『のえるが腹痛になったときのこと』

『私が・・・腹痛?』


人が何かを思い出すときによくする考え込む動作をし、のえるは頭の中でその言葉の意味を探す。


『あっ・・・確かあいつが保健室に付き添ってくれたんだっけ・・・そのときの私はお腹がすっごく痛くて・・・なんでゆういちがなんて考える暇なんてなかったけど・・・優しかった。』

『そう・・・わたしがのえるに付き添ってあげようと自分の席を立ったとき・・・


―のえるは俺が保健室に連れていくから、すずふみは座ってなよ・・・女の子の力じゃおぶるの大変だろ?―


って。席を立ってそういったんだよ・・・わたしすっごく感動したよ。


クラスのみんなからも冷やかしとかあったよ・・・でもね、ゆういちくん真面目な表情だった。


・・・ちょっといい言い方じゃないけど、・・・のえる、気をわるくしたらごめんね。ゆういちくんね女子、のえるだから付き添ったんじゃないとおもうよ。


これはわたしの感じたことなんだけど、きっと、それは男子にでも同じことをしたんじゃないかな?・・・本当はゆういちくんすっごく優しい人なんだよ。』

『うん・・・そうかもしれない・・・ね』


のえるはただ頷くしかできなかった。


(・・・てっきりゆういちも私のことが好きだからだと思ってた。それがあたりまえだと思ってた・・・今まで何人もの男子に告白されてきて・・・


いつの間にかに私は自意識過剰になってたんだな・・・もしかしたらゆういちの、ううん他の男子のことも見下していたのかもしれない。


・・・そういえばいつも、格好いいとかわるいとか、男子を見かけだけで判断してた・・・ほんとうに大事なのは中身なのにね)


『のえる?』

『あ・・・うん 、ごめん。考え事しちゃってた』


不意に名前を呼ばれ、のえるは思考回路を今の状況に戻し、すずふみに視線を向ける。


『せっかくだから話しておこうと思って』

『ん?』

『・・・さっき冷やかされてたって話はしたと思うんだけど』

『うん、きいてたよ』

『そのときのことなんだけど、れつくん怒ったんだよ・・・それもね思いっきり机をたたいて』

『えっ・・・れつが?』

『うん 、そうだよ・・・わたしもびっくりしたんだけど・・・れつくんいつも明るくて面白いことばっかりいってるでしょ?


・・・でもそのときはすっごく怖かったの、不良みたいなしゃべり方で声も低くて・・・


・・・んとね確かこんなかんじ


―たくよぉっ、お前らさぁ、んなくだらねえことばっかりいってんじゃねぇよっ!


・・・男子がさぁ、体調の悪い女子を保健室に連れていくのに好きだとかっ、惚れてるとかそういう感情がなくちゃいけねぇのかよっ!


えぇっ?、ほんと馬鹿じゃねぇのかっ!!仲間がこんなに苦しんでるときに、よくそんなことが言えるなぁっ!!―


・・・あっ、悪い、ゆういち。気にしないでいってこいよ』


―れつさんありがとうございます。でも俺全然気にしてないですから―


『そうだったんだ・・・れつが・・・知らなかった』

『・・・わたしね。いまここにゆういちくんやれつくんがいてくれたらってほんとおもうよ』

『すず・・・ゆういち・・・れつのどっちかのこと・・・』

『え?』


すずふみは驚きの表情となる。のえるは(・・・すきなの?)って言いそうになったがその続きを口に出すのをやめた。


先ほどのすずふみの言葉ではないが、協力を要請するのに、そんな感情など必要ないと考えをあらためたからだ。


『・・・じゃあ、さっそくゆういちにメール送ってみるよ』

『うん』

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