第一界 第一章 第二話 ~現実変化~


「んがぁ~、にしてもひでぇ死に方だなぁ」

前世の記憶を取り戻した火闇。

まるで前世の自分と決別したかのような今の火闇に、なぜ前世の記憶が蘇るのか、不思議でならなかった。

だから火闇はいろいろと考えた。

ここがどういう意味で存在する死後の世界なのか、自分は生まれ変わってその上で前世の記憶をもつ宿命なのか。

火闇の頭のなかは、処理しきれない情報や考察が交錯し、もう何も考えることが出来なくなってしまっていた。ので…

「んがぁ~、まぁいいかぁ、とりあえず面倒なことは後だぁ」

ベッドから降りた火闇はとりあえず朝食をとる。メニューは…すき焼き丼。

自分の腹部を開いて丼をとりだし食べる。

そして、身支度を整え、外に出る。

時刻は午前8:00

火闇は街道に行く。(街道の名前はプロスパー ストリート)

「おや、これは偶然かな?」

誰かが火闇に声をかける。

「んがぁ?」

振り向く火闇、そこにいたのは見覚えのある顔。神龍だった。

「誰?」

「!?…昨日会ったばかりじゃないかぁ、忘れるなんてひどいなぁ」

「いや、マジで誰?」

「フ…名刺は渡してあるはずだよ」

そういうと神龍は煙草を吸い始めた。

「名刺?あぁ~…んがぁ今寮にあるわぁ」

「はぁ、神 龍だ。で、BPRには参加してくれるのかな?」

「あ~、あぁ…考え中だ」

「ふむ、ところで火闇君、学校はどうしたのかな?もしかして不登校?」

「んがぁ~!?ちげーよ‼ちょっとした事件があって、しばらく休みなんだ」

「あぁ~、あれ君の学校だったんだぁ、あんな悲惨な事件は最近では珍しいね」

「珍しいだぁ?」

「きっとあの事件は解決しないだろうね、"彼"がいなければ」

「んがぁ?」

「20年位前の話」

神龍は煙草を地に捨て、語り出す。

「ある日、一人の少年が呟いた。

『この世界は退屈でつまらない』と、

その瞬間に少年は思い出した。今ここにいる自分はかつての"自分"が作り出した自分であると」

「んぁ?…話が読めないんだが…」

「少年は超能力に覚醒した」

「は?」

「後にその超能力はICPAと呼ばれるようになった」

「アイ シー ピー エーだぁ?」

「Imagination Creative Psychic Ability

(イマジネーション クリエイティブ サイキック アビリティ)

想像したものを創造する超能力」

「!?超能力?どこから?」

「わからない。けどその少年は、超能力のせいかどうかわからないが、まるで全てを知っているかのように、この世界で起きた事件の場に必ず現れていた」

「コヱェー‼」

「あぁ、まるで幽霊だね」

「まるで、っつかもう神だろ‼」

「本当に神様だったらすごいけどねぇ」

「神じゃないのか?」

「それは、自分の眼で確かめてくれ」

「無理だろ‼どこにいんだよその神ぃ‼」

「いや、今君の目の前に、君の言う神はいるよ」

「あ"?」

神龍はとりあえずと左手をだし、手のひらに天を仰がせた。するとその手のひらに

水色の光の粉がワ~ッと現れる。

「んがぁ‼ナニコレ‼??」

「ICPA想像したものを創造する超能力の素 まぁ、RPGで言うとこのMPみたいなものかな」

「マジか‼じゃぁファイアボールとか電撃とか、あ‼モンスター召喚なんかできんのか?」

「魔法じゃないからモンスターを"召喚"するのは無理だが…造り出すことはできる」

「ほぇー‼見せてくれよ」

辺りを見渡す神龍。

「フン、場所を変えようか。ここは人が多い」

「んごぉ~けぇい」

二人は路地裏へと入った。

「さて、ここなら問題無いな」

すると、神龍は火闇に腕を向け手のひらを

天に仰がせ…炎が無から現れた。

その炎は神龍の手のひらよりも大きく、メラメラと力強く燃えている。

しかし、その炎の見た目とは裏腹に、燃える炎の音は灯火の如く静かだった。

「すげぇ~‼マジ魔法だぁー‼」

「魔法じゃない、ICPAだ。ちなみに言うが、魔力は確かにこの世界に存在するが、誰もそれには手をつけられない」

「マジで!?つか何で?」

「それを管理してる魔物を誰も倒せないからだ」

「へぇ~、その魔物ってのは?」

「ジン ギヴァース フォザリガ」

神龍がその名を口にした瞬間、火闇は背筋が凍った。

すると、神龍はその魔物をイメージし、ICPを使って具現化した。

神龍の横にその魔物の造り物が現れる。

「こんな感じの魔王だ」

「ぁ…」

その姿を言葉で言い表すのは難しい。

特徴をあげるとこんな感じだろう


・角が頭の横に一本ずつに映えている。

・鼻と口、そして目に至るまではまるで龍

・目の色は赤だが、角度を変えると青く見えたり紫に見えたりする。時には光の反射が強すぎて黄色く見えることがまれにある

・身長がとてつもなく大きい 4mくらい

・体の色は赤黒い

・筋肉が凄まじく、その見た目だけで思わず足がすくんでしまう。

・爪が長い 1mほど

・翼が6本生えている 色は黒

・背鰭が生えている 鉄よりも固い

・腰やもも ふくらはぎ、腹部の一部と背中に、ダークブルーに煌めく鱗がついているダイアモンドほどの固さだ。

・ボロボロに切れた布で秘部をかくしている

・額にはエメラルドが埋め込まれている。

・ある程度髪は生えている。


その姿、この上ない化物いや、悪魔だ。

「さてと、これもICPAを使えばお手の物。お気に召してもらえたかな?」

「・・・」

火闇はもう、作られたその魔物の姿に口を開いたままひれ伏すばかりだった。

「造り物でこのレベルだ。本物となると、もはや呼吸もできなくなるだろう」

「・・・」

火闇がその造り物の魔物から目をそらせなくなっていたので、仕方なく神龍は魔物を消した。

水色の光の粉が空へ舞い消えて行く。

「これがICPAだ」

「すげぇ~‼」

「あ、まだ話が途中だったな」

「んぁ?」

「20年前の話」

「あぁ~、そういやぁそういう話だったなぁ~」

「はぁ、で、その少年が神の如くありとあらゆる事件現場にいたという話までしたよな?」

「あぁ…ぁあ?まさか!?」

「そのまさかだ」

火闇は携帯をとりだし、警察に電話をかけた。

「Prrrrr…Prrrrr……誰だ」

相手は事情聴取を受けたときの警官だった。

何かわかったら連絡してほしいと、電話番号を聞いていた。

「んがぁ、どうも、火闇です。んがぁのぅ、例の事件の犯人判りましたぁ」

「なんだとぅ‼‼誰だ今すぐ言えぃ‼‼」

「"神 龍"って奴です‼」

「ちょっ…待った待った‼」

神龍があわてて火闇を制止しようとする。

「んぁ?どした?」

「僕は犯人じゃない」

断言する神龍

「ん?なんだ、よく聞こえんぞ火闇 留師」

携帯の向こうから声が聞こえるが、二人には届かない。

「じゃあ誰が犯人なんだ?」

「それを今から言うよ、理解してないみたいだから」

その時だった。警察が駆けつけてきた。

火闇が電話した相手が、神龍という名前を聞いた瞬間にその男をとらえるよう本部に要請していたのだ。全く気の早い奴め。

「神龍、貴様を逮捕する‼」

・・・神龍は逮捕された・・・

「あらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~…」

神龍がむなしく叫ぶ…そして、引きずられながら連行されている神龍を哀れみの眼で見届ける火闇であった。

「火闇君だね、君の協力に感謝するよ」

「いえいえ」

「あんな事件があって、色々大変だったろうけど、本当にありがとう」

すでに警察共は事件を解決した気になっている。

そんな警察共も火闇は哀れみの眼で見届ける。

で、火闇は適当に買い物をして家に帰った



というわけで、神龍は警察署で事情聴取を受けていた。

「すみませーん、カツ丼くださーい」

「ふざけているのか?」

余裕な雰囲気の神龍に対し警察は何としてでもこの男を犯人に仕立てようとしていた

冤罪でも構わないと言わんばかりに。

「だからさっきから正直に話しているでしょう。僕はただ、あの現場に居合わせただけだって」

「そうではない‼貴様の妄想に付き合っている暇はないのだ‼真実を吐け‼」

すると、一人の警官が部屋に入ってきた。

「カツ丼、お待たせいたしました」

「あぁ、どうも…いただきます♪」

「聞いてるのか?このタコすけ‼‼」

怒鳴り散らす警官、気ままにカツ丼を食べる神龍。

「モグモグ…ゴクン・・・じゃあ改めて申し上げましょう」

辺りが静かになった。

「犯人は・・・」

皆が神龍が吐こうとする真実に聴覚を研ぎ澄ます。

「・・・死神です(Deth)」

その一言で警察は溢れんばかりの怒りを神龍にぶつける。物が飛び交い、暴言や暴力が無秩序にさまよい、暴れる。中には刃物が混じっていたりもする。

一分もしないうちに神龍は傷だらけになった。そして、神龍が一言放つ。

「黙れ‼」

その一言で、瞬く間にざわついていた警察共が制止された。まるで何かに押さえつけられるように。

「僕は犯人じゃない、それと、隼前君も無罪だから、ちゃんと釈放してあげてね。じゃないと・・・」

神龍が食べたカツ丼の器が割れた。

その音、飛び散った破片、そして、いつの間にか治っている神龍の傷、それを目の当たりにする。

「フン、じゃあね」

警察は怯えて声も出ず、何もなすすべがないので、潔く神龍を外へと逃がした。

その後警察勢は、神龍の下した助言のせいか、賢耶を釈放する事を決定した。



ロウレスタウンにある宿で性処理をすませた天涙は、源力を覚醒させる儀式を受けていた。

(5月28日月曜日 午前9時)

「よし、その陣の中に入れ」

そう言われて天涙は魔方陣の中央に立った

魔方陣の周りには灯の代わりに石の置かれた灯籠がある。

「これからお前の源力を覚醒させる。準備は良いか?」

「あぁ」

陣の外にいる辰壽と維鍔は、灯籠に手を向け念を込める。すると、灯籠に置かれている石が青白く光り、それに続き魔方陣が紫色に輝く。その状態が三分ほど続いた。

「これで終わりか?」

「あぁ、どうだ?感覚は」

天涙はスーっと息を吸って陣を抜ける。

「あぁ、まるで生き返ったような感覚だ」

「よし、じゃあ早速試すか、お前の能力を」

3人はロウレスタウンの上にある城の最上階である闘技場(アリーナ)へと向かった。





この城は地獄城(キャッスル オブ ヘル)と呼ばれているこの城は4階建てにもかかわらず、回りに混在するビルで外からは全く見えない。

地下も含めて5つのフロアがある。簡単に挙げるとこうだ。


U アンダーグラウンド

1Fラブホテル兼カジノ

2F貸金庫施設

3F病院施設

4F闘技場(アリーナ)






「なにかと戦いが多いみたいだな、この世界」

天涙は闘技場の中央から5mほど離れたところにいる。

闘技場の直径は100mそして、天涙に対して、維鍔も中央から5m離れたところにいる。

「殺し合いは茶飯事だ、これくらいで肝冷やすなよ」

闘技場の地面には、まだ色鮮やかな血液が無様に散っていた。それに、所々遺骨の破片が見受けられる。

「まさか、おちょくってんのか?なめんなよ!?」

辰壽が闘技場の観戦席のある2Fから天涙達に声をかける。

「ルールを説明する」

天涙と維鍔が辰壽を見上げる。

「源力を使って"殺し会え"」

その言葉に童謡する者はここには一人としていない。そこにいる誰もがわかっていた

"殺し合い"をさせるんだなと。

「源力の使い方を説明する。まずは火をイメージしろ」

そう言われて天涙はろうそくの火をイメージした。すると、天涙の前に灯火だけが突如として表れた。

「ふむ、初めにしては上出来な方か…次だ、水をイメージしてみろ」

天涙は川を流れる水をイメージした。

こんどは、突如として川のように流れる水が表れ、闘技場の一部をおおった。

「上出来だ」

「すごいな、これが源力か」

天涙は自分自信に感心する。

「次だ、風を起こしてみろ」

天涙は風をイメージした、しかし何も起きなかった。

「どうやら、風に対する適正は無いみたいだぜ」

維鍔が天涙をバカにするかのような口振りで言った。

それが何となく気に入らない天涙はもう一度風をイメージするが、やはり何も起きなかった。

「残念だったなぁ~天涙、ま、気に病むことはないぜ、誰だって無理なことの一つや二つはある」

維鍔が天涙を哀れみながら言った。

そんな彼をみかねた辰壽が、

「仕方ないだろう、これは遺伝だ。維鍔、お前、天涙の先祖皆を罵る事になるぞ」

と維鍔を叱るように言った。

「フン、サーセン」

「天涙、心配することはない。遺伝性だからと言って、必ずしも風がつかさどれないわけではない、ある程度修行すれば身に付く」

反省の見えない維鍔に代わり、辰壽が天涙を励ます。

無言の天涙。

気を取り直して辰壽は再び天涙に指示する

「では、雷をイメージしてみろ」

天涙は稲妻をイメージした。その瞬間、ズパーン‼とも言わんばかりの稲妻が、天涙から維鍔へと向かうように凄まじい速さで彼の横を掠め行き、アリーナの壁の一部を破壊した。その衝撃はあまりにも凄まじく、維鍔はそれに射すくめられ凍りついている。

天涙の放った稲妻の残響に、誰もが言葉を失った。

5秒程経ち、ようやく辰壽が口を開いた。

「素晴らしい、上出来だ。いや、それ以上の見事な完成度だ」

続いて維鍔が

「嘘だろ、コイツ…横に流れる稲妻放つやつ、始めて見たぞ!?」

まるで自慢するかのように、天涙が口を開いた。

「俺は別に、何も心配しちゃあいない。俺は俺だから、無理に俺以上になる必要はないと思ってる。だから気にすんな」

しばらく暗い顔をしていた天涙から発せられた言葉に、二人は動揺した。そして天涙は言葉を続ける。

「残りの土だが、こんなもんだな」

そう言い放つと、突然維鍔の足元が揺れ、土が震い起つ。そして築山ができた。

「フン、大したこと無いな」

どうしても天涙を見下そうとする維鍔に更々あきれたように辰壽は

「これ‼」

まるで子供を叱りつけるように言ったその時、スパーン‼と雷が築山に落ちた。そのあとには、ゴロゴロと雷雲を思わせる音が、アリーナ中に響き渡った。

雷はアリーナの天井を突き破っていた。

雷は空から落ちてきたのだ。

間一髪、稲妻は維鍔に直撃することはなかったが、恐怖を植え付けるには充分過ぎた。

「今のは、天涙貴様か?」

辰壽が尋ねた。天涙は貫かれた天井を仰ぎながら辰壽に目をやり微笑む。

「まさか、わざと外した?」

「あぁ」

それを聞いた維鍔は、おののいたマナコで天涙を見ながら

「嘘…だろ…」

とつぶやいてしまう。

「よし‼、演習兼測定はこれで終了だ。続いて本題である殺試合(コロシアイ)を始める‼」

辰壽がアリーナ中に響くように宣言した。

「フン、天涙‼」

「ん」

「覚悟はついたか!?」

維鍔はまた天涙をけなすような口調で話しかけるが、天涙は視線を辰壽から維鍔へと移し、睨み付ける。そこから放たれる殺意は獣のごとく。

「ま、本気かよ…」

思わず維鍔は呟いてしまう。

「・・・」

天涙は鋭い視線を維鍔に向けるまま。

「それでは、死合、開始‼」

辰壽の合図の瞬間、維鍔は天涙に向かってものすごい勢いで走ってくる。

天涙はその維鍔を見つめている。

維鍔が6メートル先に差し掛かったところで、

雷がまたアリーナの屋根を突き破り、維鍔に直撃した。その瞬間、天涙は維鍔に向かって走りだした。維鍔は天涙にが3メートル先に差し掛かったところで立ち上がった。が、その瞬間にはまた稲妻が天涙から維鍔へと放たれ、直撃し、また倒れる

天涙は既に、維鍔の目の前に立っていた。

余りにも一方的な攻撃に維鍔は成す術無く

これで勝負は着いたかと思われた。しかし

「く…素人の癖に…ナメられたもんだ…」

「あんたはいつも人をおちょくり過ぎだ」

維鍔は立ち上がり際に拳を握りしめ、その拳に炎を覆わせ天涙に殴りかかる。

天涙は反射的にそれをかわし、維鍔の腹を殴ろうとするが、何故かその拳が維鍔に届かない。

「!?」

良く見ると、天涙が殴ろうと差し掛かった先には、風が壁状に渦を巻き、天涙の拳をその風圧で押さえていた。

その反動で距離を置こうとした天涙に、次なる一撃がかかろうとしていた。

先程と同じ炎をまとった拳が天涙を襲うが

再びそれを避ける。しかし、その拳を覆っていた炎がひとりでに襲ってくる。

「何っ!?」

天涙はその炎に吹っ飛ばされる。

拳を覆っていた炎を風にのせて司る事で、

勢い良く天涙を吹き飛ばしながら燃やす。

なかなかの使い手だ。

天涙はその炎に吹っ飛ばされた勢いで、思い切り壁に叩きつけられた。

「フン、目上の人間は敬うもんだぜ」

「・・・」

天涙は気絶している。

「そこまで‼」

辰壽が試合終了の指示を出した。

「はぁ?何でだボス、天涙はまだ死んでねぇぞ!?」

維鍔は辰壽に対し鋭い目付きで問いかける

「初試合で死なせては引き入れた意味が無かろう、愚か者」

叱り答える辰壽。

その反応に己を省みる維鍔は、静かにアリーナをあとにしようとする。

そんな維鍔を見かねてか、辰壽は維鍔に"アリーナ ザ ブラックリスト トーナメント"に参加しないかと誘いかける。

「ブラックリストトーナメント?」

「アンダーワールド内のランキングを決める トーナメントだ。特別に参戦権をやる」

「・・・フン、ではお言葉に甘えて、参戦致します」

「うむ」

維鍔はアリーナをあとにした。

ひとまず維鍔の機嫌を取り戻す事に成功した辰壽は、天涙を3Fの病院へ運んだ。

「ん…うぅ…!?」

まばゆい光が目に入り込む中、女の子の声が耳に入った。

「ぅお?やっと起きたか」

「ここは?」

「地獄城3Fの病室だよ」

回りを見渡すと真っ白なベッドがきれいにならんでいる。

「君は?」

天涙が女の子を尋ねた。

「うちは李滝ミオ(イタキ ミオ)だよ」

相手を下に見る感じで答えるミオ

「なぁ、ここ病室なんだよな?」

「そうだけど?」

天涙の問いに不思議な程不思議がるミオ

「…何で小学生が居んの?しかもナース服で、遊びに付き合わされてるのか?」

天涙は呟く。

「むぅ‼、うちは小学生じゃないし、これは遊びじゃない‼ナメんなコラァ‼」

李滝ミオは異常なまでのロリボディ&ロリボイスなので小学生と間違われやすいが、実は大学院生で22歳。身長147cm

彼女も自身の体型と小さな胸を気にしている。

「お前年いくつだ?」

「女の子に年を聞くな‼」

「ババァとガキならどっちがいい?」

「どっちでもない‼22だよ‼」

「普通だな」

「何か悪いかコルァ‼」

「いや、別に」

「フン‼」

「ところで、辰壽さんはどこ?」

「あぁ、ボスは忙しいんで、帰ったらどう ?君アンダーグラウンドにきてもう三日目になるでしょ?」

「え?」

天涙は気絶して長い時間寝ていたのできずかなかったが、いつのまにか8時半ばを差そうとしていた。

「マジかよ…仕方ね、帰るか」

「じゃーねー」

ミオは手を振り天涙を見送る。

「さてと、帰ろ」

ミオは家に帰る。



5月29(火)日9:00

ガチャンと玄関が開く音が聞こえた

「よぅ」

「んごぅ天涙、帰ってきたか」

ゲームをプレイしている火闇は少し大きめの声で答えた。その直後に玄関の扉が閉まった。

「あぁ、腹へった。何か飯無いか?」

靴を脱ぎながら言った。

「んがぁ、冷蔵庫に豚カツあるぜ」

「おぉ‼ちょうどガッツリしたもんが食いたかったんだよなぁ」

天涙は冷蔵庫から豚カツを取りだし、レンジで温める。

丼を棚から取りだし、ご飯をよそい、温まったカツをご飯の上にのせソースをかけ

食らう。

「また維鍔さんとこ行ってたのか?」

火闇が他愛もなく聞く。

「あぁ、ちょっとな」

食べながら言った。

「んがぁ~、あんまり堕ちんじゃねぇぞ」

「わかってる」

「んがぁ~、ところで天涙、宿題溜まってっけどどうする?」

「は?」

「この休み期間中にバカになられねぇようにと、学校から皆の家に送りつけやがってよぉ~」

そう言って火闇はプレイしていたゲームを中断し、部屋の隅から30cmほどの高さに重なったプリントを持ってきた。そしてそれをテーブルの上にドサッと置いた。

その量に我が眼を疑う天涙は、

「今から手ぇ着けねぇとやべぇぜぇ」

と火闇が言った後、とても大きなため息を吐いた…

「まぁ、少しは助けてやっから、さっさと片付けようぜ」

「はぁ、そうだな。サンキュー」

落ち着いたトーンで言った。

火闇はゲームデータをセーブし、ハードの電源を切った。そして、テーブル上にあるリモコンを手に取りテレビのチャンネルを変えた。

そうして二人は、テーブル上に置かれたプリントを整理し、テレビを見ながら着実に宿題を消費していく。

『さて、本日のニュースのラインナップはご覧のようになっております。』

『まずは、6月19日に"ミルキースティック"の発売を予定している株式会社ダイヤモンズエンペラー。その超若手社長である"スモークァ・マスターべ"氏が、女正社員に対し、わいせつな行為をしていた事がわかりました。警察の取り調べに対しスモークァ氏は「私は彼女の行為を真摯に受け止めただけだ」と、容疑を否認しています。それを受け、株式市場でも株価が急激に下落しています。』

『続いてのニュースです。連日話題になっている"國ヶ崎高校三年三組一生他殺事件" その容疑者として逮捕されていた当校の学生である""隼前 賢耶"氏が本日の午前 10時50分に釈放されました。その際、隼前氏は「もっと遊びたかったのに」などと、意味不明かつ意味深な言葉を残していきました。』

天涙の宿題を手伝うかたわら、ニュース番組を見ていた火闇が言う。

「賢耶の奴、釈放されたってよぉ」

「ふぅん」

素っ気なく答える天涙

『対して、それ以前に起きた隼前氏の脱獄に協力した"森醒 李知明"氏は、織蛇県 明智市(オダケン アケチシ)にある明智刑務所へと移送されました。』

「何でそんな素っ気ないんだぁ?」

火闇が問う。

「俺、あいつ嫌いだし」

嫌みっぽいように低い声で答えた。

「あぁ~、まぁそうだよなぁ。見るからに中二病だもんなぁ~」

「・・・」

察したように話す火闇に反応するのが面倒だと感じる天涙。

「ま、何はともあれさっさと宿題片付けるか」

このお気楽さに呆れたような感覚を覚えた天涙。二人の会話が途切れるなかCMだけが部屋中に唯一響く音となった。

『ナノテックス』

『…これは革命だ・・・』

『…信じられない・・・』

『この小さなビーズをレンジで温めるだけで?』

『…料理が出来ちゃう…』

『新時代のインスタント食品』

『革命を、その口に。』

『フードビーズ』

『この小さなビーズが、あなたを華やかにする』

『…明日には俺、死んでるかもしれない』

『行かせない‼あなたは私が守る』

『おめぇが望んでるのは世界の終わりか?それとも力か?』

『光が俺を呼んでいる!?』

『例え世界が闇におおわれていても、俺がこの世の光であるからには、逃げるわけにはいかないんだ』

『光の奇跡よ‼新たなる夜明けを‼』

『プレイスタント用 ドラマアクションRPG 、フロムエンド』

『ウロボロス…』




・・・5月29日(火)・・・14時30分・・・

「はぁ~、退屈だなぁ、なにか面白いことないかなぁ~」

隼前 賢耶は家でゴロゴロと漫画を読んでいた。

「何で釈放されちゃったんだろ、脱獄をはかった事で罪を重くしてもらおうと思ったのに」

ポツリと呟いてもどうにもならない。

賢耶は漫画を読みながら、次の面白いことを探るのだった。



どっぷりと夜がふけた頃の火闇たちはというと・・・

「んがぁ~‼」

「終わったぁ~…」

溜まっていた宿題を1日で終わらせるという神業をなしえて、ようやく自由の時間を取り戻した頃…

「ピンポーン」

とインターホンがなった。時刻は23時頃を指していた。

天涙は基本玄関には出ないので、仕方なく火闇がでる。

「んがぁ~、どちらさ~ん?」

玄関を開けると、また見覚えのある顔だ。

「やぁ」

「うわっ‼犯罪者‼」

そこにいたのは神龍だった。

「うわっ…てそんな、害虫を見るような眼で見ないでくれよ…しかも犯罪者って」

神龍はちょっとガッカリしたように言った。

「脱獄してきたのかぁ?」

ポワリと浮かんだような口調で問いかける。

「ちげーよ‼」

真っ向から否定するように怒鳴った。

「んで、何しに来たんだぁ?」

そんな事どうでもいいと言わんばかりに尋ねた。

「はぁ、日を改めよう」

そう言って玄関から離れようとする神龍。

「んがぁ~待てよ、何か用があるんだろ?入れよ」

何故かそれを引き留める火闇。

「ふっ、じゃあお邪魔しようか」

神龍は光沢のある黒い革靴を脱ぎ、部屋に上がる。

「んがぁ~適当なところに座ってくれ」

神龍はとりあえず部屋の中央にある椅子に座った。

火闇がコーヒーを入れて持ってきた。

「真夜中にコーヒーとは、1日中起きてる気か?」

火闇を小馬鹿にするように言った。

「んがぁ?いやぁ~、あんたの雰囲気に合うかなって思って入れたのよぉ~」

当然の事のような口調で言った。

「スゴいな、僕コーヒー大好きなんだよ」

神龍は火闇の入れたコーヒーを啜る。

「それで、何しに来たんだ?」

「あぁ、火闇君にはまだ超能力について話してないことがあるから、補足しに来た」

神龍はコーヒーをテーブルに置いた。

「へぇ~。超能力って確かアイ シー ピーエーとかいう奴か?」

「あぁ、」

その時既にベッドに潜り込んでいた天涙は思った。超能力が源力以外にも存在するのかと。

「ちょーっと頭を触らせてね」

神龍は火闇の頭に右手をのせる。そして、念を込めるように右手に力を入れる。

神龍の念に呼応するかのように火闇の頭の中では、電気が走ったように麻痺していた

「んがぁ~‼」

「ふぅ」

火闇は頭を抱えてしゃがみこむ。

「おめぇ、何しやがる!?(泣)」

軽く涙目になり神龍に問う。

「覚醒させただけだよ」

そんな神龍の言葉に頭を抱えながら聞く。

「んがぁ?」

それに答えるように神龍は右掌を出した。

その掌からは青く光る粉のようなものがパラパラとちらついていた。

それを火闇に見せるようにしながら神龍は言う。

「ICPA」

「えぇっ‼あれあんただけの超能力じゃねぇの!?」

驚く火闇に優しく微笑む神龍。

その光景はまるで、無邪気な子供とそれを見守る母のようだった。

「あぁ、今ではこの地球上の全員に備わっているとおもうよ。だけど、この力を使っている人は少ないと思うよ」

「へぇ~、なんで?」

「その力をみんな忘れてるから」

「忘れてる?」

「この力は、小惑星アストラルが星を膨張させるためにもちいたとされ、それが地球堕ちてきたときに、原子力発電所に突撃した衝撃で核爆発が起きて、フロンティア大陸中にICPAの素が広まりった。

その爆発によって滅びた自然を当時の人は崩壊した自然をその力で復活させた。

その力は時を経るごとに、世界中に広まっていった。だけど、それもまた時を経るごとに退化していったんだ」

「こんなすげぇ能力を退化させるなんて勿体ねぇなぁ~」

「当時の人にとっては、むしろ邪魔な能力だったのかもね。あまりにも優れた力ばかりに頼ると、人として成長できないから、長の命令で、少しでも過去の科学文明に近づこうと、超能力を捨てて研究に勤しませたんじゃないかな」

「それで今に至るってか?」

「そのとうり、まぁこれはあくまでも帝都の話だから、クレモア国民の君にはあまり関係ないけど」

「クレモア国って、この国の事か?」

「え?」

「んがぁいや、こっちじゃこの国、兎月(トツキ)って言ぅからさぁ」

「あぁ~…」

神龍はさらっと逝ったように納得した。

そんな神龍を見かねてか火闇は尋ねる。

「ところでこの超能力さぁ~、どうやって使うの?」

神龍はよみがえったように言の葉を返す。

「あぁ、イメージ 想像するんだ」

「想像ねぇ~、どんなもん想像すりゃいい?」

火闇は聞いた。

「無難なのは、君の身の回りにあるもの、例えば火や水、土砂や雷、嵐」

「なんか途中から災害混じってねぇか?」

「イメージしやすいと思ったから」

「なるほど。でもまぁ、夜遅いし超能力のテストはまた別の日にしようぜぇ」

「察しがいいなぁ、でも昼は目立つから今夜のうちに覚えてもらわないと。あ、ちなみにだが、Battle Pray Riskの君の出場枠だけど、来年になりそうなんだ」

「ふ~ん、まぁいいんじゃね?俺別に参加するって決めてねぇし、富も名声もねぇから」

「なるほど、まぁまだ時間はあるからとりあえず、君の能力を試すとしよう」

「んがぁ~」

火闇達は、寮を出て近くの公園にむかった

火闇と神龍が向き合うかたちでたっている

「じゃあまずは簡単なものからいこうか」

「んがぁ~」

「とりあえず、口から火を吹いてみよう」

「こうか?」

火闇は大きく息を吸い、一気に吐き出す。

吐き出された息は、もはや炎と化していた。

「なかなかやるじゃないか、これならすぐに実戦に移れるな」

二人は早速一対一での実戦形式での試験を始めようとした。しかしその時、草木の揺れる音がした。

「!?」

火闇と神龍が辺りを見回すが、誰もいない

しばらくすると、草木の影から姿が現れた

「んがぁ、なんだこいつら」

「死神だ」

神龍は冷静だ。対する火闇は、むしろ彼らに興味を持っているようだった。

「死神っ!?、コイツらが!?ッハハ、ゲームみてぇ‼(笑)」

火闇はこの風景をコスプレパーティーか何かと勘違いしているようだ。

「火闇君、これ本物だから、離れて‼」

神龍が注意するも、火闇は死神に近づく。

そして、

「ズサッ」

火闇は首を…切り離された・・・

「火闇ぃ‼」

静かな夜の空に、神龍の声が轟いていたのを最後に、火闇の意識は遠退いた。

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