第一界 第一章 第一話 ~日常崩壊~


鈍い光が差し込んでくる。

「んがぁ~?」

気がつくと火闇は朝日が差し込む部屋の二段ベッドの下で寝ていた。火闇が住んでいる学生寮の部屋だ。

「んがぁ~ぁ~夢かぁ~。」

〈界暦2091年5月25日(金)午前5時〉

欠伸をした火闇はベッドを降り、服を着替え、朝食をとる。

朝食のメニューは、牛丼!!!!!!

自身の左脇辺りにあるボタンを押すと、

電子レンジを使った時の騒音がなる。

チンと音がなり、火闇は自身の腹部を開いた。すると中には牛丼があった。

火闇はそれをとりだし、近くのテーブル前に座った。テーブル上に置いてあるいくつかの割り箸のひとつを手に取り、口に挟んで片手で箸を割り、牛丼を一気に口の中にかきこんだ。

「ふぅ~、しっかし何だったんだぁあの夢はぁ~。」

火闇は一人虚空に呟く。

火闇は2階建ての学生寮(1部屋1DK)に住んでいる。

火闇のいる部屋には、もう一人、裏牙 天涙(リガ アマルイ)という同級生も住んでいる。

彼はまだ寝ているようだ

「んがぁ~ぁ」

火闇は身仕度を調えて、外へ出る。

朝日が眩しく火闇を照らす事もなく、寮の影におおわれた外は、静けさに包まれていた。

「んがぁ~てとぉ~、まだ朝の五時かぁ~?ちょいと走り込みでもするかなぁ~」

火闇は走った。

すがすがしい空気に包まれる

緑豊かな木々の連なる歩道。

その外側では朝日が登り初め、静かに海を照しだす。

「夢で見たあの女警察官、めっちゃ速かったなぁ~、ちょいと全速力で走ってみるかぁ~‼」

火闇はさらに速く走った。

時速 20km~74kmと加速していった。

と、火闇は思い込んでいたが、実際は14km~20kmに加速した程度だった

「よっ、朝から走り込みたぁ、気が入ってるね。」

女が声をかけた

「んがぁ?あぁ、美咲希かぁ、何だ?」

彼女は磨小鳥 美咲希(マコトリ ミサキ)火闇と同じ高校に通う火闇の同級生。

女子テニス部所属。委員会は生徒会会計

「何だ?じゃないわよ、近々大会あるんでしょ?」

「んがぁ~、あれなぁ」

火闇はサッカー部所属

6月1日に県内大会があるそうだ。

「まぁ、楽勝だろ」

「その割りには、全速力で走り込んでたわよねぇ」

「なんとなくだ」

「フフフッ(笑)」

火闇と美咲希は走りながら喋る。

「んじゃ、また学校でー」

「んがぁ~」

火闇と美咲は別れてそれぞれの家に帰った

「ただいまぁ~、天涙ぃ、起きてるかぁ?」

時刻は5:58分

「あぁ、起きてるぜ…」

天涙はまだ布団の中

「んがぁ~んじゃ、飯作っとくからぁ、ちゃんと食っとけよぉ」

「わかってるょ…」

火闇は台所に立った。

自分の飯は自分の体で作るが、天涙の飯は火闇の手料理らしい。

「天涙のはぁ、ま、パンでいいよな」

火闇は台所にある食パンを手に取り、

ケチャップをかけ、ベーコンをのせ、とろけるチーズをふりかけ、オーブンで焼く。

「んじゃ、俺先行ってっからぁ、飯はオーブンの中なぁ」

「あぁ…」

火闇は、寮を出て、学校に向かった。

「んがぁ~、さてと、登校してる間暇だからぁ、World After DETH@RELIFEを手にとって読んでくれてる皆様にぃ、色々諸々話しながらいくぜぇ~。多分。」

まずぁ、俺の通ってる学校だがぁ。

月観乃國(ツキミノクニ)鳳凰県(ホウオウケン)にある

黒鳳市立 國ヶ崎高等学校

クロトリシリツ クニガサキコウトウガッコウ

っつぅ名前でぇ、まぁ、他の学校とかと比べると、あんまり華やかじゃねぇんだよなぁ~。

んがぁ~?偏差値?

30とまぁ~、低い方じゃねぇのぉ?

んでぇ、俺はこれから朝練なぁのよぉ~

っつなわけでぇ、6時に家出た訳だが、

授業始まるのが8:10分からでぇ、俺が学校につくのはぁ、大体6:30位だぁ~

早ぇなぁ~。

んがぁ、ちなみにぃ、登校手段は歩きなぁ。

「っとぉ、適当に喋ってたら着いちまったぁ~」

火闇はグラウンドに向かった。

「おはよう火闇ぃ、相変わらず来るの早いなぁ」

「んがぁ!?、んぎょ~‼、お前もなぁ」

こいつは紅崎 秋平(コウザキ シュウヘイ)

國ヶ崎高校2年3組

俺と同じサッカー部だぁ。

んがぁ、ちなみに俺は2年1組

ついでに天涙も2年1組だぁ。

「火闇、一緒にグラウンド走ろうぜ」

「んがぁ~わり、俺もうさっきはしり込んだから、準備運動して先始めてるぜ」

「はぁ、わかった」

火闇は準備運動を始めた。

その頃、サッカー部の面々が徐々に集まってきた。

「んぎょ~、部長ぉ」

「火闇、いつも早いな」

こいつはサッカー部部長の

広野 文博(コウノ フミヒロ)3年3組

まぁ、俗に言うサッカー少年だな。

「んがぁ~、暇だからなぁ~、朝練以外にやることがねぇだけだよ」

「よし、なら俺と勝負だ」

文博が近くに転がっていたボールを拾いながら言った。

「んがぁ~?」

「まずは、ボールを真ん中に置く。」

「ほう」

「で、お互いボールから5メートル離れる」

火闇と文博は真ん中に置いたボールから

5メートル離れた。

「んで?」

「一対一でボールを取り合って、ゴールに入れる。簡単だろ?」

「なるほどぉ、簡単だなぁ。楽勝だぁ」

「よし、秋平、スタート頼む」

秋平は練習を中断して、火闇達の元へ走りよってきた。

「はぁ、はぁ、何ですか?」

秋平はあまり体力に自信がない故、少し疲れているようだ。

「俺とこいつの勝負のスターターを頼みたいんだとよぉ~」

「なるほど…」

秋平は文博のほうを見て些か呆れたように呟いた。

「んじゃぁ、スタート…」

秋平が面倒臭くも仕方なく合図をすると

火闇と文博がほぼ同時に、ボールをめがけて走る。

文博が先にボールに触れ、蹴り出した。

その瞬間にボールが火闇の足に当たり、反射的に火闇はそのボールを司り、

文博を華麗にすり抜け、ゴールに球を放った。

「はぁ、俺の負けか、やっぱ強いな火闇 ぃ、何でこうも勝てないんだ?」

「はぁ~、それくらい自分で考えろよぉ じゃなきゃ強くなれねぇぜぇ~」

こいつはサッカーバカとはいえ、それほど上手くはないんだよなぁ。あ、でも、シュートはかなり強烈だぜぇ~。

「さすが火闇ぃ、カッコいい‼」

「お前はもっと練習しろぉ、秋平」

「アハハハハ…」

文博が火闇と秋平の会話をわって言う。

「さて、そろそろ授業始まるぞ?」

「んがぁ!?もうそんな時間かぁ」

「やっば‼最初の授業数学じゃん‼宿題やるの忘れてたぁー‼」

頭を抱えながら秋平は叫んだ。

「御愁傷様ぁ~、俺は美術だからぁ」

「俺は国語…」

「んじゃ、行くかぁ~。」

「うぅ…」

火闇と秋平は文博を無視して校舎内に入ってく。

「・・・俺を無視しないで‼!」

文博もしぶしぶ校舎に向かう。

「♪キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…」

授業開始の鐘が鳴った。

「あぁ…ヤバい…」

文博は急いで校舎内に入り、教室に入っていった。

するとそこには・・・

「すみません、遅れまsh t…」

文博は思わず言葉を失った。

あ、いや、そもそもこんな状況は誰も想定しないだろう。

「な、な、な、あ…ぁぁ…」

外で鳥が鳴いた。

しかし、文博の耳には入らない

「み・・・ん・な・・・?」

文博のクラス、3年3組の生徒が皆・・・

身体中から赤い液体を滴らせながら、

死んでいる…。

文博は一時的に冷静になって、血塗れの教室に入った。

血溜まりの上を歩み、文博の親友だった

吉田 章眞(ヨシダ アキマサ)の顔を見た。

文博は章眞の顔を手でなぞった。

これだけ見ると、まるで文博が殺ったかのように見える。

「章眞…」

落ち着いた声で呟いた。

「章眞っ…‼」

「章マサァ…」

「アキマサァ…」

「アキマサァ‼…」

徐々に感情が高ぶり、泣き叫んだ。

文博は現状を改めて理解した。

自分以外のクラスメイトとクラス担任が死んでいる。

その頃、火闇のいる2年1組や秋平のいる2年3組は、下の階から叫び声がしたことにざわついていた。

「んだぁ~、今の声ぇ、文博か?」

「し、し、しし知らね~よ…な、何なんだよ今の叫び声ぇ…」

火闇はなぜか比較的冷静に話しているのに対し、隣の席の少年

壱河 庵斗(イチカワ イオト)は震えていた。

んがぁ~、まぁ、無理もねぇよなぁ~。

下の階で何が起こったのかと不安になるのは当然だなぁ~。けど、ここまでビビるかぁ~?

「んがぁ~なぁ、下見に行かねぇか?」

「ふ、ふ、ふざけるな‼…死にたいのか お前はぁ‼…」

誘いかける火闇に庵斗は拒む。

「んがぁ~、仕方ねぇ、俺一人で行ってくるよ」

「ま、ま、待てよぉ、いざという時、 誰が俺を守るんだよぉ・・・」

歩みだした火闇に庵斗はあわててしがみついた。

「んがぁ~!?、知らねぇよ、邪魔するなぁ‼」

火闇は庵斗を振り払い、文博のクラスがある下の階に向かった。

下の階に着くと、火闇よりも先に3年3組以外の3年の野次馬どもがたむろい、それを注意する教師達がいた。

そんな人混みの中をかき分けながら火闇は文博を探す。

「文博ぉ~、いるかぁ~?」

「・・・」

「文博ぉ~!?」

「・・・」

「文博ぉー‼」

「・・・」

いくら呼んでも返事がない。すると

「ねぇ、どんな気分?(笑)」

こいつは3年2組 隼前 賢耶(ハヤサキ サカヤ)

サッカー部

「んがぁ~、何が?」

「文博君のクラス、全滅だよ(笑)フフッ…」

「んがぁ‼‼!?嘘ぉ!?」

「見てみなよぉ(笑)」

火闇は恐る恐る3年3組の教室を覗いた。

「ヌゥァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」

火闇は絶叫した。

血塗れの教室。そこにいた文博は地べたに尻餅をついたままポカーンとしていた。

その様子に火闇は文博が死んだと思った

「マジか‼‼!誰だ!?これやったの‼!」

「さぁねぇ、でも・・・面白いね(笑)」

隼前が背後から近づきながら言った。

「はぁぁぁぁぁ‼!!?何が!?」

「でもさぁ、よく見てみなよ(笑)」

「んがぁ?」

「文博君、生きてるよ(笑)」

それを聞いた火闇はゆっくりと首を動かし、再び中を確認する。

「んが?・・・マジで‼!?」

そしてまた隼前の顔を見る。

「しかも無傷。 不思議だと思わない?(笑)」

「あぁ?そんなん簡単だろぉ~!?、文博のやつに朝練の片付け任せたからぁ、遅刻して運良く殺されなかったんじゃねぇ~のぉ~?」

「あぁ~。(笑)」

賢耶は納得したようだ。

「お~い、文博ぉ、大丈夫かぁ?」

火闇は血塗れの教室に入り、文博に声をかけた。

「・・・火闇ぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!…(涙)」

文博は急に表情を変え、泣きじゃくりながら火闇に抱きついた。

「何だよぉ、先輩のくせにだらしねぇ、つか、今更だけど悪臭ひでぇなぁ~。」

火闇は文博を突き放し、血塗れの教室を出る。

「んじゃ~、俺自分の教室に戻るからぁ~、こんなところに居続けたらおかしくなっちまいそうだぁ。廊下もげろ臭ぇしぃ、だれかその嘔吐物を…んぁ?」

校内放送が始まり、女性の声がスピーカーから響き渡る。

「♪ピーンポーンパーンポーン~

全校生徒にお伝えします、全ての荷物を持って、至急体育館に集合してください。全校集会を行います。繰り返します、全校生徒に命令です、大至急体育館に集会しろぉ!!!!全校集会だってよぉ!!!!」

それを聞いた生徒たちは駄弁りながら、または嘔吐しながら無秩序に体育館へと向かう。

「んがぁ~ぁ~、集会ねぇ、めんどくせぇ、どうせ今すぐ帰宅しろっつぅ類いのことだろぅよぉ。」

全校生徒と全教師陣が体育館に集まり、

全校集会が始まった。

「えー、皆さんに悲しいお知らせです。単刀直入に言うと、広野文博さん以外の3年3組の皆さんが亡くなりまsh t… ウッ…オウェ~…」

教頭は話しているときに3年3組の悲惨な場目を思いだし、全校生徒の前で嘔吐したが、話は続く。

「と言うわけで…しばらく学校はお休みになります、次いで本日も、集会終了後下校になります。教室等には戻らないでください、予め荷物は持ってくるよう放送は行き届いてるはずなので。皆さん不審者等にはくれぐれも気をつけて下校してください。登校日は一週間後の6月1日金曜日です。以上」

集会が終わり、全ての生徒が帰宅した。

教師陣は全校生徒が帰宅したのを確認すると、3年3組の教室に向かった。

「これを掃除しなきゃならないのか?」

「うっ、ひどい臭い」

「酷い・・・誰が…こんな・・・(涙)」

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(涙)」

教師たちが諸々に愚痴をこぼしたり、泣き叫んだりしている。

「仕方ない、この問題をどうにかするのは明日にしよう。今日は大変だったからねぇ。」

一人の教師がそう言ったことで皆帰りだした。

教師達が帰った時刻は午前10時、死体は放置されたままである。

午後1:21分一人の女教師が、勝手に警察に通報した。

次の日 5月26日(土) 午前10:00頃、教師達が死体を片付けようと

学校に集まった。

校門前には規制線が張られ、校庭の一部には無かったはずの血痕があった。

教師達はそれを見て怯える。

一部の教師が校舎内に入り、事件のあった教室を確認すると、そこにあるのは乾ききっていない血溜まりと散乱している肉片だけで人の形を留めているものが何一つとしてどこにもなかった。

辺りを見ると、廊下や壁にも血痕がそこかしこにみうけられる。

校舎内に居た数名の教師が逃げる。

残った教師陣は穢れきった教室を掃除しようとする。しかし、そこに警察の増援が来て、その場ににいた教師達は事情聴取を受けることになった。(12:00~13:45)

教師達はそれぞれ自分が見たありのままの事を話した。

警察は教師達からはたいした情報が得られなかったため、生徒たちも事情聴取をうけることになった。(14:00~16:00)

「火闇 留師、君が知っていること全て話してくれ、どんな些細なことでもかまわない」

「んがぁ~、すいませんねぇ~、なぁ~んも知りませんわぁ~…んがぁ~ぁ~…」

「ん~・・・」

「んがぁ~、でもぉ、賢耶の奴がぁ、ちょっと怪しいかもなぁ~。」

「ほぅ、なぜそう思う?」

「いやぁ、だってよぉ~、あの現場見て笑ってたんだぜぇ?おかしくねぇか?異常だと思わないか?」

「なるほど、ではその賢耶という男にもあたってみよう」

5月26日(土)午後14:45分頃

隼前 賢耶が事情聴取を受けている。

「なにぃ~、僕をうたがってるの?」

「いや、そういうわけでは…」

「フフン、そうだよ。」

「!?」

「僕が、犯人だよ」

「なんだと‼?」

刑事は机を叩いて立ち上がる

なんの動揺もない賢耶に対し刑事は回りの刑事に賢耶を逮捕するように命令する

賢耶は取り押さえる刑事には抵抗せず、素直に捕まった。(14:50分)

これにて事件は幕を閉じた。はずだった

警察はこの事件において賢耶が犯人であることに対して矛盾が生じた事に気付いた。

賢耶は事件当日3年2組の教室にいたと言う証言が多数あがっていた。

それを忘れていた刑事が誤って逮捕してしまった。

5月27日(日) 10:00時

「すまなかった」

刑事が賢耶に謝罪している。

「何言ってるの?僕が犯人だって」

「お前では無理なんだ‼」

「はぁ?」

刑事は賢耶に怒鳴り付けた。

賢耶はそれを理解できたかった。

「お前が犯人だっていう証拠がどこにもないんだよ・・・」

「犯行なら可能だよ、分身を使えば」

「何ぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?????」

刑事はまた手錠を手に取り賢耶を逮捕し、を牢屋にぶちこんだ。

牢屋の中で賢耶はこう呟いた。

「警察って、どこまで馬鹿なんだろう

少しでも辻褄が合えば、何でもかんでも無秩序に逮捕する。ただの無能偽善者の集まりじゃないか・・・(笑)」

その呟きを隣で聴いていた男が賢耶に話しかける。

「よぉ、ずいぶんな事言うじゃないか、なんの罪で捕まったんだ?お前」

「殺人罪?(笑)」

「なるほど、なぁ、どんな感じだ?人を殺すってのは」

「さぁ、でもきっと…すごく楽しいことだと思う(笑)」

賢耶は満面の笑みで答える

「怖ぇ~、お前、本当は殺してないんだろ?」

「あぁ、そうだよ(笑)」

「なのに何で捕まったんだ?」

「警察を観察したくて(笑)」

「本当怖ぇぇなぁ~。」

「ところでさぁ~、脱獄する方法、無い?」

「あ~、そうだなぁ~、あるにはぁ、あるなぁ。でもどうして?」

「疑われるためにぃ(笑)(笑)」

「お前イカれてるだろ…」

「(笑)」

「まぁ、いいや、脱獄する方法、教えてやる。簡単に言えば、そこの窓の鉄格子を外せれば、簡単に抜けられる。だが、外は警備が厳重だ。例え出られたとしても、また捕まるのが落だ。結論を言うと、脱獄は不可能だ」

「構わないよ(笑)」

「ほう、じゃぁ早速準備だ」

「(笑)フフ…」

賢耶とその男は結託した。

「そういやっ、名前を聞いてなかったなぁ」

「あぁ、僕は早前 賢耶、君は?」

「俺は森醒 李知明(モリザメ リチア)だ。んじゃ、自由時間を利用して準備する。俺の指示に従って動いてくれ」

「わかった(笑)」

昼の自由時間、賢耶と森醒は何人かの囚人たちと情報交換物々交換をして、脱獄に備える。

夜になった。作戦事態はとても浅はかだが、賢耶がそれでいいと言うので、作戦を決行する事になった。




その頃、主人公である火闇は…

「…Zzzzzz」

寝ていた。時刻は午後10時だ。

天涙はまだ起きている。

どうやらゲームをプレイしているようだ。

すると、コンコンと玄関からの扉をたたく音がした。

天涙はゲームを中断し、玄関に出て扉を開ける。

そこには、2人の女と1人の男がいた。

真ん中にいる男が前に出て天涙に言葉をかける。

「おい、天涙」

「あぁ、どうした?こんな時間に」

その男、榊嶋 維鍔(サガキシマ イガク)29歳

天涙の親戚の友人だが、天涙が幼い時から彼とは親交があるようだ。

「ちょっと面貸せ」

「はぁ?」

天涙は気だるげに答えた。

「いいから来い‼」

訳もわからず天涙は維鍔につれ回され、

車の中に放り込まれる。

「おいおい、何のつもりだ?」

「静かにしろ! これからお前を俺らの世界に連れていく おもしれぇからお前に勧めてんだ、感謝しろ」

「はぁ?まぁいいけど、何でこんな強引なんだ?」

「テストだ」

「テスト?」

維鍔がドライバーに合図すると、車が動き出す。

「んで、テストってのは?」

「殴り合いだ」

「は?」

すると急に維鍔は天涙に殴りかかる

が、わずかに1ミリの間を空けて止める

しかし、天涙は一切動揺しない。

「相変わらず、肝はしっかりしてんなぁ」

「大体分かったよ」

天涙は微笑みながら答えた。

「着いたようだな。おりろ」

天涙と維鍔は車を降りた。

降りた先、繁華街の路地裏を通り抜けると、路地裏とは思えないほどの広い空間があり、数多の道が広がっている

その先には、城のようなものが堂々と佇んでいる。

「ここが、アンダーグラウンド(裏社会)の入り口、クラプションストリートだ」

「ここが・・・」

天涙は城を見上げて呟いた。

天涙と維鍔は城を目指し、クラプションストリートを進んで行く。

その頃、森醒と共に脱獄を試みた隼前達は再逮捕され、より一層疑いを深められた。

「計画とうりだ(笑)」

改めて聴取を受けていた隼前が呟いた。

(5月27日(日)10:45頃)

「!?」

警官がそれに反応した。しかしなにも起きなかった。

結局新たな情報をいっさい得られなかった

警察だが、隼前は解放せずに、もうしばらく様子を見て、粘り強く捜査する方針を決めた。




さて、火闇はというと

「Zzzzzz…っがぁっ…んぐ…んがぁ~ぁ~ 、んぁ?」

玄関からの風で目を覚ました。

(5月27日23:45)

風が気になったのでベッドを降りて玄関に向かう。

「んがぁ~、玄関開けっ放しじゃねぇかぁ天涙の奴ぅ~」

火闇は玄関を閉める。

その時、外から女性の高い悲鳴が真っ暗な夜の町に響いた。

火闇は気になって外に出る。

道に出て右を見ると、うっすらと女性らしき影が見える。

火闇はその影に近づき、声をかける。

「んごぉい、大丈夫か?」

「ええ、私は…うぐっ」

どうやら傷を負っているようだ。

「おいおい、あんた血まみれじゃないかぁ~‼」

「・・・」

「誰にやられたんだ?」

「・・・ごめんなさい…暗くて、よくわからなかったわ…うぅ‼…」

女性が傷口をおさえたその瞬間、火闇の目に、人影が写り込んだ。その影は、ナイフのようなものを持っていた。

「ぬぅぁ!?待て‼」

火闇は、影を追った。

女は置いていかれ、その場に倒れ込んだ

そして、人知れず死んでいった。

その頃火闇は影に追い付き、対立していた。

「おい、お前ぇ‼自分が何したかわかってんのか?」

「わかってなかったらやらないさ、ハハハハハ(笑)」

その男は火闇に近づいてゆく。

街灯に照しだされながら名乗る。

「初めまして、火闇留師君。私は神 龍(シン リュウ)、君をゲームに誘いに来た。」

神龍は名刺を火闇に渡した。

「んがぁ~、ゲームだぁ?ッてかそれどころじゃねぇだろ‼」

「ハハハハハ、心配には及ばないよ。この世界じゃ、死んでも甦るシステムが存在するからねぇ」

「だからって‼…」

「彼女なら大丈夫さ、一分もすれば転生する。」

「はぁ?」

「さて、そろそろだ」

「んがぁ?」

後ろを振り向くと、何もない夜空から

黄色い光の粉が一部に降り積もり、

足先から頭へと女性のシルエットを象っていく。

その光のシルエットは足元から徐々に

色を変え、先ほどの女性の姿になる。

「おいおい、どんなマジックだよ!?」

「これはマジックでもカラクリでもない、システムだ」

火闇は転生した女をありとあらゆる角度から見て確認する。

「ホントに女だなぁ~」

転生した女が火闇に答えるように言う

「どう?驚いた?」

火闇が女に問う

「あぁ、で?こんなもん俺に見せてどういうつもりだ?」

神龍が答える

「ゲームに誘いに来た」

「あぁ~」

火闇は納得した。

「ところで、あんた誰?」

火闇が女にむかって言った。

「私?私は壽形 裕美子 (ヒサカタ ユミコ)よ」

「ふ~ん」

火闇の以外にも素っ気ない反応に裕美子は少し怒り顔で神龍に怒鳴る。

「ちょっとぉ‼ホントにこんな男ぉ、ゲームに加えていいの?なんかすごいムカつくんだけどぉ‼」

裕美子の怒りを抑えようとする神龍

そこに火闇が話を割る。

「んがぁのさぁ~、ゲームって、具体的に何やんのぉ?」

「!?」

「!?」

神龍と裕美子がそれに気づき、冷静になって神龍が火闇に話す。

「フゥ、我々が繰り広げるゲームは、お互いの力や富 名声を賭けて戦う、題して Battle Play Risk(バトル プレイリスク)通称BPR」

続いて裕美子が補足する。

「参加資格は私達主催者からの招待状。神龍があなたに渡した名刺がそれよ」

「君は既に参加資格を得た。これでいつでもBPRに参加できる」

「BPRのルールは簡単よ。自分が持てる力や名声等を賭けて戦う。負ければ賭けたものは相手のものになるし、勝てば相手が賭けたものが、あなたのものになる」

神龍と裕美子は火闇に背を向ける

歩み際に神龍が呟く。

「君の参加を心待ちにしてるよ」

そう言って二人は去っていった。

その後火闇は部屋に戻り寝たとのこと。




一方の天涙(5月28日(月)0:30頃)

クラプションストリートにて、天涙は

維鍔から言い渡されたテストを受けていた。

目の前にいる男を天涙は殴る。

右手の拳が相手の顔をめがけて飛びかかるが相手はそれをよけ、右足を天涙の首をめがけあがる。それを左腕で受けとめ、そこに重心をおいて飛び上がり、空中で横になって両足で首を蹴り倒す。

その流れで相手の腕をその後ろで固める

「フフフ…なかなかの逸材だな」

天涙の後ろから男が現れる。

「初めまして、だな。俺は限薙 辰寿(キリナギ ノブヒサ)このアンダーグラウンドを仕切っている。ここにいる連中は皆俺のことをボスと呼ぶ。お前もこれから俺のことをボスと呼んでくれ。」

「あぁ…」

天涙は戸惑いながら答える。

「ということは、彼は」

「合格だ、いずれ牙を剥くことになるだろう」

テストを端から見ていた維鍔と辰寿が天涙のことを見る。そして、天涙を城の中へと連れていく。

「アンダーグラウンドを見せてあげよう、君にとって最高の舞台になるはずだ」

「俺の期待を裏切るなよ」

「・・・」

そうして、彼らは城に入った。

そこはとても広く、そして、城の見た目とは相反し、ピンク色の光でアダルトなムードをかもし出している。

「ここって…」

天涙が尋ねる。

「あぁ、ラブホテルだ。それとカジノがそこにある」

「…はぁ」

「イメージと違うか?」

「あぁ…」

「こっちだ」

そう言ってアダルティな廊下を通り抜けると、エレベーターがある。

維鍔がボタンを押してエレベーターを呼ぶ

「ところで今、どこに向かってるんだ?」

天涙が尋ねた。それに辰寿が答える。

「本当のアンダーグラウンド ロウレスタウンに向かってる」

エレベーターの扉が開き、彼らは入っていった。その内装はまるで高級宿泊施設のようなゴージャスな内装だ。

「ロウレスタウン?クラプションストリートと何が違うんだ?」

天涙が質問する。

「見ればわかるだろう」

辰寿がカードキーをスキャナーに通すと、1階を指示するボタンのしたに U と記されたボタンが、なにもなかったはずの壁から現れ、辰寿がそのボタンを押した。

エレベーターが下に向かって動く。

しばらくすると、エレベーターの照明が消えた。すると、壁に青い光の線が現れ、グリッドを描く。

「これは?」

「スキャナーだ」

しばらくすると、グリッドは消え、真っ暗なままエレベーターのドアが開いた。

「!?」

エレベーターを降りるとその先は薄暗い広場になっていた。

そしてその先には・・・

「なぁ、あれって」

「門だ。あそこでチェックをうけないと、中には入れない。」

三人は門の前に向かった。

門の両端には門番らしき人影が見える。

一人は左腰に刀をにさし、右腰に拳銃を納めている。

もう一人はタブレット端末を持っている男

だ。ちなみに眼鏡をかけている。

「限薙 辰寿様と 榊嶋 維鍔 裏牙 天涙 だな?」

眼鏡の門番が訪ねる

「あぁ」

「チェック…クリア 入っていいぞ」

門が開いた。

「これが…ロウレスタウン」

「改めてようこそ、真のこの世の闇へ」

天涙が今見ている景色は、まさしくこの世の闇、穢れた魂をもった人間達 血生臭い空気がただよい、鼻腔をつよく刺激する。

辰寿達三人は目の前の道を歩く。

時おり、道端に死体が転がっている。

どうりで血生臭いわけだ。

そんなこの世の汚れきった道を歩む三人

「さて、天涙とやら、源力というもを知っているか?」

「げんりょく?」

「源力、この世の森羅万象の根源だ」

「はぁ?」

「俺たちのいる地球(夢想世界)にある自然のほとんどが源力によって補われている」

「そんな…」

「かつてこの世は地獄だった。」

「!?…」

「界暦100年、人間の手によって文明が発展しつつあったこの星に隕石が堕ちてきた」

「隕石?それって、もしかして博物館とかで破片が展示されてるアストラルとか言うやつか?・・・」

「そう、そのアストラルが、この世屈指の大陸、フロンティア大陸の中心に堕ちた」

「すげぇなぁ…」

「アストラルは直径10m程度」

「デカイな」

「あぁ、それだけだったら、まだましなんだが」

「?」

「その星には不思議な力があった」

「どんな力だ?」

「創造力」

「はぁ?」

「その隕石は最初に、人間を創造した」

「人間を?どうやって」

「源礎を使って創造した」

「源礎?」

「源力の素だな」

「何が何だか・・・」

「ところで、フロンティア大陸の初代帝王が誰だか知ってるか?」

「あぁ、確か、エビュラレス 闇六図 だったかな…」

「そいつはアストラルが創造した人間だ」

「うそぉ!?」

「事実だ」

「初代 エビュラレス 闇六図はアストラルによって創造されたため、アストラルが持つ創造力を初代帝王も持っていた。そして初代は、その力、源力をもってして初代帝王の座にたった一週間でのぼりつめたそうだ」

「すごいな」

「というわけで、お前が持つ源力を、これから覚醒させる」

「はぁ?俺源力なんて持ってないぞ」

「この世界の人間は皆源力を持っている。が、文明が発展していくごとに、その存在は忘れ去られていった。その忘れ去られた力を覚醒させ、愚か者達がつくりあげた法や権力を潰して自由を手に入れるのが、

このアンダーグラウンド全体の目標だ。お前もそれに協力しろ」

「なるほどな。しかし、ホントにひどい世の中だな」

「ふん、そう思うお前だからこそこのアンダーグラウンドにふさわしい。政府はこの場所を知らないから一切目をつけられない、そのため、ここではどんな法に触れても文句は言われない。言わば法外の理想郷。ここで力を身につけなければ、もはや貴様に生きる価値はない。」

「いきなりひどいな…」

「せっかくだ、あそこにいる女とでもヤってこい、殺ってきても構わないぜ」

「・・・」

天涙は、近くにいた適当な商売女に声をかけ、近くの宿に入っていった。そして…

夜が明けるまで存分にセックスした。

天涙はここで童貞を卒業した。



5月28日(月)、11:30頃 火闇は都会のとある街を歩いていた。

これから会社に行く予定だ。

?何かがおかしい。火闇は学生だ。就職などしていないぞ。何故だ?

あぁ、夢か。夢なのだろう。ならばもうじき覚めるだろう。

火闇は交差点を渡る。

その瞬間、火闇の横には…時速160㎞で走行するトラックが‼

・・・火闇は引かれた。142mほど先まで押し引かれ…火闇は死んだ。

もちろん夢だから、ここで目が覚める。

?、誰の夢かって?もちろん寝ている火闇の夢だ。

火闇は飛び起きようとしたが、ベッドから落ちる瞬間だった。

「んがぁっ!?」

5月28日(月) 午前5:00

「んがぁ~、そういやぁ学校休みだったなぁ…んがぁ~退屈だぁ~Zzzzzz…」

二度寝する火闇。まだ天涙が帰っていないことも知らずに、のんきに、寝る。

また、夢を見る・・・

誰かの声が、朧気に聴こえる。

「浩助、入社試験頑張るのよ」

「わかってるよ、じゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

浩助と呼ばれる男は玄関を出る。

自転車に乗り、駅へ向かう。

自転車を駐輪場に止め、駅のホームを目指し歩く。

浩助という男は身長169cm位の細め

素行の良さそうな青年だ。

ちなみに、この夢を見ている火闇の身長は174cmだ

さて、浩助は電車に乗った。

電車のなかは、真新しいスーツに身を包んだ新社会人たちで混雑していた。

次々と駅に着くたび、車内の人口密度は減っていく。

浩助が降りる駅につき、電車から降りた。

地下にある駅を出るとすぐ交差点が見える

浩助は青信号を渡る。その瞬間だった。

浩助が横断歩道を渡るとき、時速160kmで走行するトラックが浩助を142mほど押し引いた。

そして火闇は目をさます。

「何か…なんだ?」

火闇は天を仰いだ。

「懐かしい夢を見た・・・」

火闇は思い出した。

「っ!?…俺‼死んじまったのかぁ~!‼?」

火闇が見ていた夢は、彼の前世での記憶だった。そこで火闇は理解した。今自分がいる世界が、死後の世界であることを・・・

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