エピローグ
エピローグ その1 ニノ
惑星パンツがパンツノ惑星になって、三千世界に新しく加わった新世界になってから9年くらい過ぎたかな?
もう俺は日本に行く用事も無いし、最近は使ってなかった月の観光地化や、新しい住環境を宇宙に創り出すのに忙しい。
「デスクワークにも慣れたつもりだけど、やっぱ書類仕事は肩が凝るなあ……ガンモー、ちょっと癒して。」
ここ最近の聖域は少し変わっちゃった。
「ニノ!ウサギさんが捕まらない、だからちょっと待って。」
マルトさんも1日ずつ日本と聖域を行ったり来たりしてるし、カンタ君は8割くらい日本に帰るようになった。
「仕方ないな、マルトさんが来たら喜びっぷりが半端ないんだから。マルトさん何処まで走って行ったんだろ?」
日本じゃ社長が1番働かないけど、海外じゃ社長が1番働く人だろ?俺もそんな感じになってる。
そうそう、エリザベートとの結婚だけど、実はまだ出来てない。色々あってさ……
「仕事しよ、国さんのダンジョンと繋がってるダンジョンの新構想の手続きを終わらせないと……」
なんだかんだ言って日本に行かない理由ってのは、なにもしてなくて余ってた黄色い月カリィに交流の場所を設けたから。聖域に住んでた皆も最近昼間はそっちで働いてて、転移門を使って通勤してるって感じだな。
「和信おじさん。おひさ〜。」
「おお!千夏ちゃんか、お久しぶり。どうしたの珍しい。」
たまに水や風と一緒になって遊びに来てた千夏ちゃんだけど最近は全然来てなかった、飽きたのかな?って思ってたけど……
「どうしたの?制服姿じゃないのって珍しいね。」
だいたい何時も下校の時に来てたんだよな……
「へへへ、大学受かりました。菅原道真の加護は受験に最高ですよ。」
何してんだよ隠形……加護なんか渡すな。
「そうか、向こうではまだ2年ちょいしか過ぎて無いのか……時間軸が違うから気付かなかったよ。おめでとう。ズルしてない?」
「してませんよ。加護は貰ったけど。」
それは日本全国の受験生が欲しいだろうよ。東郷君が知ったら羨ましがるだろうな……必死に受験勉強してたけど、魔王業に追われて浪人確定してたし……
「それでですね……せっかく第1志望に受かったんですから、なんか下さい。」
唖然としたね、神様に合格祝いをたかりに来たのかよ……
「うわあ……最近は予算が足りなくてカツカツでやってるから……なんかあったっけかな?」
一応ね、田崎 和信だった頃の親戚とかの話を教えて貰ってるお礼ってのも含めて……
「これなんかどうかな? 男物だけどソコソコ良い奴だよ。」
「時計ですか?確かに高そうでゴツゴツしてるけどベルトの長さとか調整出来なくないですかこれ。」
まあ高級腕時計ってベルトのコマを外さないと長さを変えられないのは仕方ないよな。女の子は知らないか。
「ベルトのコマを外せば調整出来るからね。オリュンポスの主神のゼウスから貰った奴だから頑丈だよ。ヨーロッパの超一流ブランドの奴なんだけど、こっちだと毎日1秒ズレるからさ、どうせなら地球で使ってあげてよ。」
さんざん俺を痛め付けてくれたゼウスだったけど、ちゃんと話したら凄く苦労してる良い奴で、なんか意気投合して週のうち3日は遊びに来るようになった、今じゃお互いに名前で呼び合うくらいだよ。
マルトさんや国さんも交えて、今じゃなかなかの飲み友達だったりする。なんでか知らないけど……
たぶん嫁の事で意気投合したんだと思う。
「ゴツ過ぎですよねコレ。私って女の子ですよ?」
「東京の学校って言ってたじゃん、満員電車で痴漢とか出たら、それを拳にはめて顔面ぶん殴ってやりなよ。」
痴漢とか、それくらいされても良いと思う。
「やだなあ、和信おじさん。私って唯一絶対の勇者ですよ?こんなの付けなくたって、殴ったら乗ってる車両ごと爆散しちゃいそうですけど?」
9年前にタブレットがフリーズした時に、サーバーやら通信設備なんかの項目の見直しが入って、三千世界中を手直ししてる最中だから、冥界の地下でせっせとタブレットを作ってるティターン神族の方々は、新しい神器の作成依頼を断ってるらしい。俺も頼んでるのが5年待ちだったりする。ル〇バがな。
「確かにそうだよね……能力制限系の神器……早く作って貰わないとね。」
「それに東京じゃ無いんですよ、だから満員電車なんて乗る必要無いですし。」
おお!都会の荒波にもまれて垢抜けて汚れなくて済むのか。
「どこの大学にしたの?」
「えへへ、北海道なんです。だから免許も取りましたよ。バイク下さい。」
聖域製のバイクは日本じゃ登録できないよ。
「バイクはダメだよ。それはバイトするか、両親に出して貰いなよ。でもなんで北海道?東京のデザイン系の学校に進むって言ってなかった?」
女の子らしい選択だなあって思ってたけど……
「こっちに来て少し考え方が変わったと言うか、色々見ちゃって知っちゃいましたから、獣医になろうと思って、北海道の大学に決めたんですよ。」
ああ、インフルエンザの時にどんな感じだったのか後で見せたもんな。たまに四鬼引き連れて観光とかもしてたし。
四鬼って水、風、隠形、大嶽丸な。玉藻御前が鬼の形相で追いかけて来て、大獄丸は途中離脱してたけど。
「獣医とか辛い事も沢山あるよ、若い時は家畜がほとんどだろうし、動物病院とか……まあ良いか、頑張りな。」
「ふふふ……ガンモくぅぅん。もふもふやー!」
「げ、千夏!出てけー僕らの部屋から出てけー。」
手をワキワキさせてる千夏ちゃんから逃げるガンモ……仕方ないよな……毎回会う度にお腹の毛に顔を埋めて、3時間くらいがっしりと固定されてんだし。ガンモが逃げる唯一の相手だっりして。
「あ〜逃げた。って和信おじさん仕事するの?」
「そりゃ急がないと、裏出雲大社と次元が繋がってる直通の複合レジャー施設の合同経営なんだし、こっちだけで終わる話でも無いからさ。」
向こうは、屋内。こっちは剣と魔法の世界を体験したい神々へのアスレチック場って感じかな。
巨大テーマパーク化しようって話になってる。
「ニノ!ちょっと匿ってくれ。マリーが激おこプンプン丸なのだ!」
「何してんですかカペーさん。また動画撮ってて相手しなかったんでしょ?いい大人なんですからユー〇ューバーとか……」
我が王の一家……最近はルイ16世ことカペーさんはユーチ〇ーバーになっちゃって、作ってみよう系動画の収益で暮らしてるらしい。チャンネル登録者数5万人くらいで、そこそこちゃんとした月給になってたりするけど、まだバズった事は無いらしい。
「カペーおじさんおひさ〜。世界史とか外来語すっごく助かりましたよ。受かりましたよ大学。」
「おお!勇者ちゃん、おめでとう。役に立てたなら良かった。」
世界史の裏話とか王族の戯れとか、小ネタとかマメ知識しか教えてなかった気が……
「ニノ!カペーは来て無い? お昼ご飯にも帰って来ないのです……って勇者ちゃ〜ん。」
マリー様は……今じゃ主婦だな。ちょくちょく日本に行ってディスカウントストアの案内を千夏ちゃんに頼んでたりする。千夏ちゃんの事が超お気に入りみたいなんだけど……
「マリーおばさん、昨日ぶり〜。今日もお綺麗ですね。」
俺もカペーさんも顔が引きつってる……パンツノ惑星圏の主婦や鬼嫁を守護する主神だったりするマリー様に……おばさんとか……ダメだよ……
「ごきげんよう、勇者ちゃんも日本人形みたくて可愛いわ。いつでも綺麗にしておくのが男をつけ上がらせない秘訣よ、覚えておきなさい。」
マリー様の言ってる日本人形ってこけしだから、褒め言葉じゃ無い気がする。
「はい。テレーズさんやジョゼフ君とかシャルル君とかソフィーちゃんにも会えますか?久々に会いたいんですど。」
ああそれはね……
「エリザベートが無茶を言いましてね、10日程前からテレーズとソフィーを巻き込んで、天元大陸にある魔法学園で寮生活していますのよ。全員10歳から始めるそうですわ……内緒にしておきたかったのですが。」
グ〇コの看板のギルドが経営してる学園だな
エリザベートは魔法少女になりたいらしい、だから卒業まで結婚はお預け。その前の9年間は冒険者としてダンジョンを回ってた。
魔法くらい好きなだけスキルオーブを渡すって言っても聞いちゃくれない。日本のアニメを見せた影響なのか、眼鏡男子の活躍する魔法学園モノの映画に出てくるハーなマイオニーの影響なのか……
「それとね、ジョゼフもシャルルも……ハンスまで……」
「ああ、それはな。なんだったか……」
マリー様の手に掴まれた北斗の拳イ〇ゴ味。マリー様のコメカミに青筋が浮いてる……
「何の影響を受けたのか知りませんが……」
色々混ざってんだよ。間違った方向に。
「私の聡明で可愛いドーファンは金髪のオールバックに紫のタンクトップを着て、あれ程光輝いていた愛のキャベツはモヒカンにサングラスで……」
「革ジャンの袖を千切って棘の付いた肩パットを付けてな……首周りには黒い羽飾りまで……」
見た目はまんまなんだよ……
「100人程の同じようなむさ苦しい殿方を集めて回って……徒党を組んで……」
ハンス様は心配過ぎて2人について回ってる。
「女性には紳士的に、子供には優しく、老人達を敬い、男には……」
「闘魂注入だぁ!と言いながら、ボランティアで災害支援活動をしとるんだよ。」
悪い事してる訳じゃ無いから止めるに止めれなくて……
「飢饉には食料を、疫病にはワクチンを、汚れた水には綺麗な井戸を、水害には堤防を、地震が起きたら復興支援を野郎共!かかれっ!ヒャッハァァァァァ!が合言葉でしたっけ?」
世界中で活躍しまくってる。
マスコットキャラに、数人のにゃん族を連れて……
「うわあ……それは酷い……悪い事してる訳じゃないから良いのかな?」
そんな話をしてたら……外にエンジンの爆音が鳴り響いて……
「もしかしてカペーさん……あれだけ作らないでって言ってた……」
直ぐに大排気量の車を作ろうとするんだよ、アメリカに憧れてるのか、暇さえあればアメ車のレストアを始めようとするし。聖域には不必要だからダメって言ってるのに……
「よーす!ニノにい。見てこれ!凄いだろ。」
おっカンタ君だった。外に出て見たら……
「メッキパーツとか超ピカピカのコブラじゃん、凄いな。アルミボディだったりする?」
「もちろんそうだぜ、こっちでレストアするとニノにいが怒るから、カペーが買ったボロボロの中古車をオイラの世田谷の家でカペーと一緒にレストアして動画投稿してたんだ。めちゃくちゃアルミ溶接が難しかったよ。」
ちょっと……
「いやあ……ニノ……だって欲しいじゃないか。私だってマイカーが欲しいじゃないか。いい加減に自転車は嫌なのだ。」
まったく……
「何してくれてんですか!免許も持ってないのに。走れる所なんてサーキットくらいしか無いでしょ!ちゃんと浮くんですか?いくら使ったんですか!」
まあ、こんな感じで慌ただしい毎日だけど楽しくやってるよ。
一応言っとこうかな。
聖域は今日も平和です。
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