S.M.Zのお使い 蒼大陸 人魚と獣人
スッポンの背に乗りおくってもらい、出来るだけ生き物の少ない地域、蒼大陸南東部に降り立った3人組。
「ありがとうございました聖亀様。聖域の皆に心配しないでって伝えて貰えたら嬉しいです。」
モモちゃんの言葉に、「もちろんだよ、楽しんで来なさい。旅の無事を祈っているからね」と紳士な部分を見せるスッポン。
シメジと慈王君は途中迄のはしゃぎっぷりが嘘だったかの様に激しい船酔いで、二人揃って青ざめている。
「ヒーラーが先にくたばったらダメ! 僕は頑張る。」
「示芽慈彦、無理はするな。世界が揺れているんだぞ。」
そして少し休憩をして回復した3人組が動き出した。
目的地は、蒼大陸2辛ダンジョン・その2植物魔界。
多種多様な植物達が織り成す果物が発する甘い誘惑と、イケメン揃いのアルラウネさんや美人揃いのドライアドさんが半裸で日光浴をしている魅惑の森林ダンジョン。
それともう1ヶ所、古来より生活習慣を変えることなく、古き姿を保ち続けているエルフの森。
植物魔界の方が近いようで、大陸の西端に位置しているエルフの森は後回しのようだ。
船酔いも完全に治まったシメジに乗って、慈王君とモモちゃんは移動している。ニノが見たら、めちゃくちゃ怒るぞ!と教えてあげたい。
シメジは乗り物じゃないって、羨ましがりながら。
「最初の魔物の領域までは、少しのんびり行きましょう。」
「そうですね、別段急ぐ旅でも無いですから。」
「慈王、モモ。猫さんとお魚さんの匂いがする。探検したい。」
慈王君はシメジの言った事を考えて、あれ?ここら辺に猫っていたかな?と考えている。
魚の匂いは遠目に見えているアレだろう。
人魚。
沢山の人魚が海岸に上陸しており、ヒレに挟まった藻や海藻を落としている。
「示芽慈。人魚アレは人種だから小さくなって尻尾を
4tトラックサイズのシメジに普通サイズの猫又になるよう指示を出した慈王君。
「わかった! 尻尾は二本にまとめとく。」
もふもふ尻尾ともふもふカギ尻尾の2種類に纏めたシメジ。急に小さくなったものだから、背中に乗っていた慈王君もモモちゃんも落下してしまう。
そして……
「急に小さくなったら危ないですよ示芽慈彦様。」
ふわりと地面に降り立ったモモちゃんの履いているスカートがめくれ上がりそうになり、それを凝視してしまった慈王君は着地に失敗。
尻から落ちて痛打していた。
シメジが通常サイズの猫又になって、慈王君は鎧を解除した後に触覚を幻影で見えなくした。普通の金髪ハーフイケメンなのが少しイラッとする。
モモちゃんは普通の緑鬼に戻った、緑鬼は人種だから。果たして本当に
初めて見る人魚に大興奮のシメジ。
聖域には半魚人タイプの魚人しかいないから。
「ふぉぉぉ!お魚さんの匂いのする人だ! 凄い!これ好きぃぃ。」
突然現れた猫又に困惑するも、擦り寄ってきて下半身を舐めるシメジのもふもふに人魚さんは殺られたようだ。
シメジに殺られて、ホッコリしている人魚を狙って数人の獣人が岩の影から飛び出してくる。
「モモさん、助けましょう。」
「はい、慈王さん。」
飛び出して来たのは、冒険者風の格好をした猫獣人3人。
人魚の匂いと味に夢中のシメジ。
シメジのもふもふに心を癒さている人魚達。どちらも狙われているとは気付いていない。
走り始めた慈王君とモモちゃんは本気で焦っていた。
猫獣人に、最初に気付いた人魚が大声で叫ぶ。
「ヤツらが来たぞ!海に逃げ込め!」
そして、十数人居た人魚が一斉に海に飛び込む。
しかし、シメジにまとわりつかれていた人魚さんが逃げ遅れた。そこに、冒険者風の武装した猫獣人3人が襲い掛かる。
慈王君もモモちゃんも、走っているが間に合わない。
「マグロ様ぁぁぁ!マグロ人魚様ぁぁぁぁ!」「旨いにゃ!マグロ人魚様は旨いにゃ!」「うひょー、少年!私に舐められるにゃ!」
シメジがまとわりついていた人魚は、まだ10歳の男の子。そして、モモちゃんと慈王君が防ぐ前に、人魚に辿り着いた猫獣人の冒険者達は、ひたすら人魚君の下半身を舐めている。
「うみゃい!うみゃい!海の旨みがたっぷりにゃ。」「猫又様も分かってるにゃ!マグロ人魚さんは美味しいにゃ!」「生きたマグロ人魚様を舐めるのは幸せだにゃ。いっその事、私らと冒険者になるにゃ!毎日舐めて綺麗にしてあげるにゃ。」
慈王君もモモちゃんも、呆気に取られている。
「なんでしょうコレは……」
「さあ?なんでしょう……」
猫獣人達は人魚君を撫で回し。丁寧に布を敷いて、上に座らせたのだが……
まるで、崇拝する何かを見つけた狂信者の様に、ひたすら土下座して仲間になってくれと勧誘している。
そして海から、親の人魚さんが人魚君を大きな声で呼んでいる。
「サミュエル。早く逃げて来なさい。そいつらは危険だ!全身を舐め回されるぞ。」
「ザラザラした舌で、全身くまなく綺麗にされてしまうわ。早く逃げて来なさい。」
う〜ん、どう言う事なのだろう?
「この人たち悪い人じゃ無いよ。尾びれに付いた取りにくいフジツボとか綺麗に取ってくれるし。」
そして大人の人魚数人掛りで、水魔法を発動する。そこそこ大きな水の塊が飛んで来たので、濡れるのが苦手なシメジも猫獣人も避けた。
その隙に、人魚君は大人達に連れていかれたようだ。後に残ったシメジと猫獣人3人。
慈王君とモモちゃんが近付いて来た事なんか気にしていない。
「ものすごく力の有る猫又様にゃ。」
「神々しいにゃ!こんな猫又様に初めて会ったにゃ。」
「私生きてて良かったにゃ。こんな癒しな猫又様は初めてにゃ。」
シメジに向かって自己紹介をしようとしている猫獣人3人組。
「私たち、お魚大好き冒険者パーティーにゃ!パーティー名は“青い魚”にゃ。」
う〜ん、冒険者パーティー・青い魚……
どう考えてもサバとかアジとかイワシとかを連想してしまう。
「僕はトラ吉だにゃ。逃げ足に自信があるにゃ!」
そう言って逃げる仕草をする。
「僕はマダラにゃ。隠れるのが上手いにゃ。」
草むらに頭を突っ込んで隠れるマダラ、お尻と尻尾が丸出しである。
「私はポムにゃ。戦うのは苦手にゃ。」
背中に背負った弓を持とうとするも、肉球で掴めない……。矢筒を背負っていないので矢を1本も持っていないのだが。
「僕は若竹若芽彦と若葉春芽姫の息子で若竹示芽慈彦。癒すのが得意だよ。」
シメジがちゃんと挨拶してるのを、モモちゃんと慈王君が、あたたかい眼差しで見守っている。
「うにゃ!若竹若芽彦と言う猫様は知らにゃいけど、春芽姫様は知ってるにゃ!」
「むかしむかしに、お隠れににゃった猫の神様にゃ!」
「本当に若竹示芽慈彦様は、春芽姫様の息子かにゃ?」
シメジが尻尾を解いた。
9本の尻尾全てがモフモフ、そのうち5本のカギ尻尾。
「うにゃ!猫又様じゃ無いにゃ!ナインテイル様にゃ!ありがたやーありがたやー。」
「初めて見たにゃ。本物のナインテイル様にゃ、ありがたやーありがたやー。」
「もふもふでカギ尻尾のナインテイル様にゃ、ありがたやーありがたやー。」
3人の猫獣人がシメジを拝み出す。
「なんでしょうコレは……」
「さあ?なんでしょう……」
目の前で繰り広げられる、猫神獣と猫獣人のやり取りは、慈王君もモモちゃんも理解不能だった。
その後に植物魔界と呼ばれるダンジョンに向かう3人組に、猫獣人の冒険者3人組も付いて来るようだ。
少しだけ猫獣人の外見について書いておこう。
身長1mほど、革のチョッキを着ていて、下半身は通気性の良い薄い短パンを履いている。短パンから飛び出した尻尾は長かったり短かったりしているが、3人共に毛がマダラに生えている。
そして顔だが……普通の猫なのである。
二足歩行に適していない下半身。ア〇ルーやメ〇ルー、もしくは最後の幻想に出てくるケット・シーにしか見えない。
星神である、我等の主人公ニノ・モフモフスキー(仮称)が見たら……
確実に保護を提唱し大騒ぎする程に愛くるしい。
モモちゃんが、外見を変化させる事が出来ると伝えると、見たい見たいとはしゃぎ回り。
ゴブリンシャーマンクイーンに変化したモモちゃんを見て、尻尾を股の下に隠した3人の猫獣人。
「大丈夫ですよ。私はベジタリアンなので、お肉なんて余程の事が無い限り食べませんから。」
そう伝えると、安心したようで。
モモちゃんの匂いを嗅ぎまくっていた。
「ぐぬぬ、猫人共。羨ましいじゃないか。示芽慈彦なら許すが、お前達が嗅ぐのは……」
慈王君の憤った言葉は、シメジにもモモちゃんにも、ましてや猫獣人3人組にも聞こえていない。
「示芽慈彦様は何処に住んでるにゃ?教えて欲しいにゃ。」
「教えてもにゃえたら、家族を連れて参拝に行かせて貰うにゃ。」
「春芽姫様にも参拝しに行くにゃ!」
そんな事をシメジと話している猫獣人3人組。
「ママに会いに行きたいの? それなら連れて行こうか?」
そう答えたシメジ。モモちゃんと慈王君は焦っている。神の承諾も無しで人種を聖域に連れて行ってもいいのか?と。この種族なら大丈夫。見た目もだが種族的にも。
突然シメジが大きさを変える。最大サイズの4tトラックの大きさに。
「背中に乗って。君達の家に寄って、仲間を連れてママに会いに行こう。」
そして猫獣人3人組を背に乗せ走り出す。
置いて行かれた、モモちゃんと慈王君が走り出す。勿論空中を。
モモちゃんはゴブリンシャーマンクイーンの姿のままで。
慈王君は、神器を纏って仮面ラ〇ダー型に羽の生えた外見で。
しかし、本気で走るシメジは音速を余裕で超える。
背に乗せた猫獣人達を尻尾で抑えて、モコフワな体毛で保護しながらなので、最高速では無いのだが。
「ナインテイル様の背中は癒しだにゃ。」
「もふもふでふかふかで落ち着くにゃ。」
「なんか眠くなってくるにゃ。」
3人組の匂いを辿って家に着いたシメジは、周りに居た猫獣人を全て捕獲して背に乗せたようだ。
その数52人。
そしてそのまま、聖域へと向かう。
慈王君とモモちゃん、2人は兎に角急いで蒼大陸最大の山、死の系譜と呼ばれる山に向かった。
お使い何処に行った。
そして数時間後の聖域では。
「ほほう示芽慈様。珍しい種族をお連れになりましたな。」
盆栽サイズの最長老を含む聖域の生き物達が、シメジの背に乗せられ連れて来られた52人の猫獣人達を囲んでいる。
「あら?にゃん族ですね。直接会うのは何千年ぶりでしょう。元気にしてましたか?」
ハルちゃんが猫獣人達に近付くと、猫獣人達は「ありがたやーありがたやー」と言って拝み始めた。
その後ろで、西〇運輸の配達員さんから何かを受け取ったニノ。
受け取った荷物は最高級・マタタビ入り7種の魚味カリカリ。
それを手にして、だらなしなく顔を緩ませて猫獣人達に近づいて行く。
「いらっしゃい。にゃん族さん達。お腹減ってません?こちらをどうぞ。」
手にしたカリカリを、そっと差し出すと。
「マグロの匂いがするにゃ。」
「イワシの匂いもするにゃ。」
「カツオの匂いもするにゃ。」
「にゃんと言っても、マタタビの匂いがするにゃ。」
『コレは良い物にゃ。』
そう言ってカリカリを食べ始めた、にゃん族を。
「この方達は、私が責任持って保護します。聖域の一員に迎え入れますので、聖域全体に通知よろしくお願いします。」
凄くキリッとした表情でタブレットを構えて動画撮影を開始する神。
もう1柱の神は……
「若芽彦が嫉妬してるよ、ニノにい。聞いちゃいない。引っ掻かれるよ……」
そして……
「何をするガンモ!目がぁ目がぁ」と、目を引っ掻かれて、転げ回る神。
眼球を直接なんてエグいなガンモ。
「やっぱりね。」
焦りながら、帰ってきた慈王君とモモちゃんは、その光景を見て何が起きたか分かっていなかった。
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