6章 新しい事が始まった
ガンモ警戒中
ついにこの日が来た。
「生き物の皆さん、サーキット内に入っちゃダメだよ〜。」
長い、長い道のりだった。
「排気ガスを吸いたいアルラウネさんは、サーキットの廻りに集まって〜。」
魔王・東郷和真君が持ってる日本製を修理改造したものじゃない。
「救護班のガンモと猫さん達〜、準備は良い〜?」
99%が聖域で作られた部品で出来てる。1%はもちろん魚谷さん。
「俺の本物のナナハンキラーに勝てると思うなよカンタ君。」
俺が跨る16歳から乗ってる350でも無い。
「ニノにい、オイラ達を舐めて貰っちゃ困るぜ。この日の為に沢山、沢山練習したんだからな。」
選ばれた5人の
「慈王君、オウちゃん、ミドリ君、リョクちゃん、準備は良い?」
それぞれの関係者も観覧席で見ている。
「クラッシュしたら、浮いて押して直ぐにピットに戻ってくるんじゃ。ワシらがあっちゅう間にコースに戻してやるわい。」
ピットは2ヶ所設置した、でも俺が使う事は無いと思う。
「俺の前は
もちろん言わなきゃだろ?お約束ってやつだ。懐かしいか?俺はたまに読むから懐かしいって程じゃない。
「ニノさん、カンタ様、慈王さん、オウさん、ミドリさん、リョクさん、怪我をしないように安全運転ですよ。」
安全運転なんてしませんよマルトさん。ギリギリを攻めるのがレーサーだろ?安全運転のレーサーなんて……いるのかな?
メイド・イン・パンツとでも言うのかな……。
俺のRZ35〇をモデルにした、聖域で殆どを作られたオートバイ達。
最初は250ccクラスで始めるつもりだったけど、やっぱりナナハンキラーに乗って戦いたいから、俺以外の5人が乗るメイド・イン・パンツノオートバイも350ccにしてある。
ツナギもヘルメットも、もちろん全部聖域で作られた、と言いたいけど……慈王君のだけ自前。
「慈王! 仮面ラ〇ダーみたいな見た目してるんだから、鬼族なんかに負けんなよ!」
今叫んだのは先代魔王の安西隆文。
本体は魔水晶になってたけど、俺が思いっきり神力を込めた魔石を作って、ジャージのポケットに入れてあげたら、なんか知らないけど復活したんだ。今はダンジョンの管理課と
「慈王!魔族代表とか考えないで良いから楽しんでこい!」
慈王君のお父さんの今代の魔王・東郷和真君もモーブさんサマンサさんと一緒に観覧席から応援してる。
タマオさんはマルトさんの横でいちゃいちゃしてるけど、ちゃんと救護班と一緒に真剣な眼差し。皆浮けるし透けられるから怪我なんてしないだろうけどね。まあ一応ってやつだ。
「オウ、ミドリ、リョク、神に挑むのに遠慮は要らん。蹴散らせ。」
鬼さん達もニカラ代表の3人を応援してる。数人はファンファーレの為に楽器を持ちながら。最近打楽器だけじゃなくて、金管楽器にもハマってるようだ。
「なんで参加資格が16歳以上なの!来年は絶対あそこにエルフも立つんだからね。」
「姉ちゃんには負けないぞ、オレが出場選手になってやる。」
産まれた時はエルフだったアカさんとエメリーさんの二卵性双生児達。
アバターあげたから、緑鬼にもなれるんだ。
来年から来年から出場したいらしい、だから毎日のように転びそうな時のリカバリーの練習をしてたりする。エクストリームライダーみたいな感じでね。
「外界に金の力でサーキットを増やそうと試みたが神には通用しなかった。自分達の力で頑張りなさい。」
アントニウスさん……来年は俺が参加しないから、1枠増えますよ参加者の枠は。だから大金を積んで外界に自前のサーキット場を作ろうとしないで。
ここまで来るのに15年かかった。長い、長い道のりだった。
争う事は嫌いだけど、競い合う事は嫌いじゃない。
鬼さん達のファンファーレが鳴り響く。
惑星パンツ初の公式レースが幕を上げる。
「緊張し過ぎてウイリーしないようにね!」
3・2・1……
シグナルが緑に変わって走り出す6台のオートバイ。
惑星パンツに新しい競技が加わった日。
俺が神になって20年目の出来後だった。
と言っても、いきなり12年も時間が進むのもなんだから元の時間に戻そう。
マルトさんの
「ニノさん、1回100円なんですか……。」
「申し訳ない、ソーラーパネル代だけでも稼ぎたいので。」
ちゃんと普通のジュースも売ってあるけど買いに来る人なんか……。
「ジュースも置いてくれてますけど、こんな獣道しか無いような場所に設置しなくても……。」
「出来るだけマルトさんに便利な場所が良いかな?と思いまして。」
過疎化が進んで、周りにある家は誰も住んでなくて、道も古くからの私道だったから、獣道化してるんだ。集落のジジババ達は滅多にここまで来ることも無い。
「費用を回収するのに相当な時間がかかるのではないですか?」
「そこは気長にですよ。ふふっ。」
笑って誤魔化しといた。赤字でも良いんだよ。
「出雲大社とか高天原とかも行先に含まれてるのは有難いですね。」
「あっ、それは1度私が直接行って地点登録しないと使えないんですよ。だから観光ついでに行きませんか?」
なんかマルトさんが焦った顔になってる。
「私は自分で歩く事に慣れてますから、出雲大社や高天原などは無くて大丈夫ですよ。」
「う〜ん。それじゃしばらくは私の家の横の転移門だけをラインナップしときますね。他はジュースとお茶で。」
設置が終わった後にマルトさんを連れて聖域に帰ってきた。マルトさんに兎姿になって貰ってさ。俺もチンパンジーアバターになってる。
転移だから素っ裸になっちゃうんだもん。
ボロ布が人気神器って意味が分かるよ。
「マルト様、おかえりなさいませ。お待ちしておりました。」
出迎えてくれたのはタマオさん(雌)……。
マルトさんを一目見た時にビビビっと来たらしく、マルトさんを迎えに行くと、何時も連れて帰ってくるまで転移門の出現ポイントの前で待ってるらしい。
兎姿のマルトさんを地面に下ろしたんだけど、マルトさんは直ぐに人型になっちゃう。でも顔は兎のままで……。
「タマオさん、様付など不必要ですよ。確かに私は貴方達からすると、どんな事をしても滅せない存在ですが、私も貴方達を滅する事など出来ない木っ端神なんですから。」
魔物から霊獣化してしまったタマオさんはマルトさんよりかなり強いらしい。
でも神人って透けられるだろ? だから透けちゃえば倒される事なんか無いんだ。それに基本的に不死だし。
聖域の案内をしたかったのに、タマオさんがマルトさんを連れて行っちゃった……。
「ニノにい、おかえり。マルトっちと仲が良いんだな、オイラ知らなかったよ。」
「ん、カンタ君ただいま。マルトさんは一番お世話になってて、一番良い
「さすがモフラーだね。ニノ・モフモフスキーに改名しようとしてただけあるよ。モフモフに目がないのは知ってたけど。」
首から下が何時もの和装に戻ってるマルトさんの後ろ姿を見ながら、カンタ君が誤解してるようだから。
「モフモフじゃなくても、マルトさんは良い友神だよ。」
はいはい、って言いながらカンタ君が本題に入った。
「地熱発電の事だけど、煙の処理をしてくれるってアルラウネさんが大勢来てるよ。ちゃんと選んであげないと。」
大量に土属性と、水属性を含んだ水蒸気が立ち上る、地熱発電の排煙システム(煙突)の周りに住みたいって、数百のアルラウネさんから要望が来てるんだ。
「どうだろう、温泉みたいな感じで、アルラウネさん達の休息所的な場所にしたら?」
「う〜ん……住ませるより、そっちの方が良さそうだね。霊草同士の一等地の奪い合いとかシャレにならないし。」
一部のアルラウネさんから大人気な排煙設備……。
俺にはわからん。
ここ最近は前に話した、ヤ〇オクで買った日本製の工作機械、壊れてる不動品を1つずつ修理してる所なんだ。もちろんドワーフさんが大活躍してる。
工作機械の動画を見せた時なんか……
「ニノ様、このフライス盤っちゅう機械はよく出来ておるな。刃を動かすのでは無く、削る物を上下左右に動かすと言う発想は無かった。」
「ただ穴を開けるだけに、これ程に精度を出してあるボール盤と言う物もかなりの技術力ですね。正確に精密に、手作業でこの技術を習得するなんて……不可能に近い気が。」
「旋盤と言う機械を水車を動力にして動かしているものを見た時は衝撃が走りましたが、雷属性なんていう珍しい属性を使って、鉄のくっつく石と合わせて、回転力に変えるなんて、衝撃を通り越してしまいました。」
「ワシが感動したのは溶接機じゃ。雷属性を使うっちゅうのは理解出来ても、それを熱に変換するっちゅう発想に辿り着いた事に尊敬の念すら覚えておる。」
動画を見せて、工作機械の事を理解して貰ったんだけど。1つずつ治すのに、どれくらいかかるんだろう。
錆びて動かないし、Vベルトは切れたり伸びたり劣化してカチカチになってたり……
ドワーフさん達と要修理な工作機械の置いてある、俺お手製の建物まで移動して来たんだけど……
ガンモがずっ〜と工作機械小屋の前で、遠くを見ながら尻尾を水平にしてゆらゆら左右に揺らしてた。
何を警戒してるんだろ?なんか嫌な予感がする。
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