第2話 幼馴染(馬鹿)との出会い



 今日はカルル村で商売をする日だ。


 馬車を止めて、町の人に挨拶。


 両親たちはあちこちお伺いを立てたりして大変だ。


 様々な場所を巡りながら、商品を売りつけているが、ここは比較的流浪の人間にも優しいから助かる。


 たまに商人なんていれるもんか、うちはうちで商売してるから帰れって言われることもあるからな。

 

 その旅に同行していた僕はもちろん、いつも後であいつらをのろっておくけど。


 最近良い仮面が手に入ったから、それ以降調子が良いんだよな。


 両親は変なデザインだって言うけど、そうだろうか?


 ステラお嬢様も、ツェルトのバカも俺にセンスがないとか言ってくるけど、そんなことないよな?


 そんなことを考えながら商売を始める前に村をぶらついていると、友人の一人と出会ったのだった。


 見るからに何も考えてなさそうな少年が話しかけてくる。


 ツェルトのバカだ。


 棒切れを持って、村の子供たちを引き連れていたらしい。


「なあ、よるんよるん。よるりん。お前商人の息子なんだよな」

「そうだが?」


 変なあだ名をつけられた俺は、額に皺が寄った気がするが、いちいち怒っていてはきりがない。

 なので、平静を装ってそう言った。


「お前んとこ薬草って、売ってるよな?」

「売ってる」

「交換してくれよ」


 と言って話しかけてきたそいつが木の実を出して薬草を交換しようとした。


 僕は呆れてしまう。


 それはミミックの実といって、何に役にも立たないやつだ。


 叩いたら、たまにはじけて派手な音がする。

 それだけの子供の玩具。


「そういうのはお小遣いをもらえるようになってから言え」


 しっしと追い払おうとすると、馬鹿がしつこく寄ってくる。


「でも、女の子が熱を出してるんだよ。薬が必要なんだ」

「その子の親が今頃お金を出して買ってるだろ?」


 あたりで群れている子供達の顔をチェック。

 いちおう、なじみの顔はかけていないように見えるが。


「いま、いない」

「は?」

「だから、おやいない」


 話を聞くと、その子の家は、村から離れたところにあるらしくて、今は遊びに来ているらしかった。


 ちょっと説明が足りなくて理解するのが大変だったが、きっとその子の事が心配で言葉足らずになってしまっているんだろう。


 馬鹿は馬鹿だけど、根は良い奴だあkら。


「仕方ないな」


 薬草はある、だがただでくれてやるわけにはいけない。


 両親は、生活のために商売をしてているからだ。


 だから僕は、薬がある場所を教えることにしたのだ。


 地図を指さす。


「ここでなら、薬の元になる薬草がとれるぞ」


 でもその森、迷いの森とかいって有名な場所だったらしい。


 他の子供達が「おばけでる」とか「こわいまものでる」とか騒ぎ始めた。

 

 結局僕は、迷子になったそいつを探しに行く羽目になってしまった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る