第5話 新入社員ドラフト会議
恵「今日はあなたに、わが社の見学をしてもらうわ。」
薫「それはいいんだけど、今日は何かの式典なの?」
会社の見学だというのに、大きな舞台と観覧席それに大勢の人々がひしめいていて、物々しさすら感じさせた。
恵「今日はわが社における一大イベントのひとつ、新入社員ドラフト会議が行われる日よ。」
薫「新入社員ドラフト会議!?そんなの聞いたことないよ!?」
恵「当然ね。私が発案した行事だもの。」
薫「えぇ……。」
恵「思い付きで面白がって始めたわけではないのよ?これ。わりと真剣な事なのだから。」
薫「理由を訊いてもいい?」
恵「ええ、もちろん。これには大きな企業が抱えるいくつかの問題が関わっていて、部署同士の力関係、世代の偏り、学閥、雇用機会の平等性などが挙げられるわ。この中でまず一番に対策を取らなければならないのはどれだと思う?」
薫「えっと、世代の偏りかなあ。場合によっては力関係もだと思う。」
恵「エクセレントよ薫。愛してるわ。」
薫「ストレートだな君は、いつでも。」
恵「うなじを嗅いでもいいかしら。」
薫「……帰ってからにしてね。」
その後、指名の基準が仕事におおよそ関係無さそうな、やれ眼鏡枠だの料理上手枠だの、登山ガチ枠だの、わけのわからない理由で部署決めがされていく様子を薫は呆然と見つめていた。今日も世界は平和だった。
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