同じ思いとわからぬ心

 名詩さんに看病してもらった時にした約束通り、名詩さんとデートという名の買い物に週末行っていた。

 そしてなぜだか俺の服を買うことになった。そしてお昼を食べようと歩いていると陽香先輩に静香ちゃんに出会った。

 そしてなぜか名詩先輩と陽香先輩に静香ちゃんはにらみ合っていた。

 そして現在なぜか一緒に昼を食べている。


「陽香先輩たちは何しにここへ?」

「本を買いに来たのさ。買うものを決めないで買いに来るのはいいものだよ。新たな本との出会い。そうだ今度一緒に買いに来ようではないか! 文芸誌で書くもののヒントがあるかもしれないからね」

「まあそういうことならいいですけど」

「神門君は何しに来たの?」


 ざるそばを食べてた、いやもう食べ終わっていた静香ちゃんが聞いてきた。確かさっき取りに行ってたはずなんだけど、食べるの早くないか?


「名詩さんの買い物に付き合っていたんですよ。風邪ひいたときにお世話になったので」

「神門君風邪ひいたのかい?めったに風邪ひかない君が。それよりお世話になったっていうのはどういうことなのかな?」

「バイト先で倒れたから家まで運んで看病したのよ」

「ほお、家で看病か。バイト先で倒れたのならしかたないだろう。でも看病までする必要はあったのかな?」


 楽しく会話していたはずだった。俺から見ていた限りでは。なのにいつの間に険悪な雰囲気になっていた。いつもおとなしい静香ちゃんもなぜだか怖い。


「倒れるほど酷かったんだから仕方ないでしょ? 放置してひどくなるよりはいいでしょ」

「確かにその通りだとも。神門君に何かあっては心配だからね。だけれど弱っている神門君に何かしてないだろうね九毬さん」

「それは自分自身に聞いてみたらどう弐闇さん」


 俺のことを話してるのは話の流れで分かるが、それにしては話の流れがおかしい。

 何がおかしいのかはっきりとわからないが。


「二人ともその辺で」

「確かに神門君の言うとおりだ。すまなかった九毬さん」

「こちらこそごめんなさい弐闇さん」


 どうにか収まったのか?


「私たちはこの辺で失礼しよう。邪魔をするわけにはいかないからな。約束のこと忘れないでくれたまえよ。神門君。さらば!」

「じゃあね神門君」


 なんというか嵐のようなお昼だったな。


「かなくん、部活はあの二人としてるんだ」

「ええ、他は幽霊部員で先生もめったに来ませんから」

「そうなんだ。じゃあ今度こそ私の服買いに行くから選ぶの手伝ってね?」

「できる限り手伝いますけど、服のことなんて何にも知りませんよ」

「いいの、かなくんが選んでくれることに意味があるんだから」

「名詩さんがそういうなら」


 服についてのアドバイスは何もできないが、時折名詩さんに聞かれることには答えるようにした。


「かなくん、左と右どっちが似合うと思う?」

「右ですかね。名詩さんのイメージは」

「ありがと」


 ただこれだけだけど、知れでも名詩さんはうれしそうにしていて。俺にはわからないことがあるんだと、実感せずにはいられなかった。


「今日はありがとね、かなくん」

「俺はプレゼントもらって、聞かれたのに返事してただけですよ」

「かなくんは本当に乙女心が分かってないんだから。かな君にとってはそれだけかもしれないけど私からすれば十分嬉しいんだからね。わかった?」

「なんとなく」

「うーん、先は長そう」


 先を歩く名詩さんが何かを言った気がしたが、よく聞こえなかった。


「なんって言ったんですか?」

「些細なことだから気にしないでいいよ。ほら早く帰ろ?」

「はい」


 こうして、名詩さんとのお出かけは終わった。

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