待ち合わせとデートと鉢合わせ

 どこに行くかとか聞いていないけど、行きたい所あるから着いてきて欲しいと言っていたし。大丈夫だろう。


 待ち合わせ場所は、ショッピングモール。ここですることといえば買い物くらいだから、荷物持ちとして呼ばれたのだろうか?


 十時に待ち合わせをしていたから、二十分前に着くように行ったら既に名詞さんがいた。


 今日の名詞さんはハーフパンツにLOVEと小さく書かれているシャツを着ていた。

 夏で暑いのは分かるが、目のやり場に困る。


 名詞さんはその辺にいるような女性じゃない。

 モデルをしていてもおかしくないくらいには綺麗だ。

 出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる。

 要するにすれ違えば目で追いたくなるほどにはスタイルがいい。

 そんな人があんな格好をすれば目にやり場に困るのは必然だ。


「名詞さん」

「あ、かなくんおはよう」

「おはようございます。それにしても、早くないですか来るの」

「そう言うならかなくんだって早いんじゃないの?」


 まあ、20分前に来てるからそうだけど。


「そうですね。で、いつから待ってたんですか?」

「ん?別に何時でもいいじゃない」

「待たせすぎてたらこっちが困るんですよ。いつから待ってたんですか」

「えっと、9時?」

「なんで疑問形なんですか。というか九時って開店時間から待ってたんですか?」

「だって、かなくんとのデートだよ!昨日はどの服着ていくかで迷って寝れなかったんだから。それでどう?」


 何をと言わないあたりが名詞さんらしいが、なんのことかくらいは想像出来る。


「綺麗です。心配になるくらいには。絡まれてませんよね?」

「1回だけ絡まれたかな?」

「大丈夫だったんですか!いや大丈夫だったのは分かりますけど」


 俺はつい名詞さんの肩を掴んでいた。色々あったけど心配になるのは変わらない。


「すみません」

「大丈夫、心配してのことだってわかってるから。ありがとう心配してくれて」

「当然です。赤の他人てわけじゃないんですから」


 名詞さんの笑顔に少し照れながらも、思ってることを言った。

 それが紛れもなく本心だったから。


「あっ、照れてる」

「早く行きましょう。買い物するんですよね」

「じゃあ、行こっか」


 名詞さんの買い物に付き合うんだから当然名詞が欲しいものを買うものだと思っていた。

 だけど、実際は違った。


「うーん、こっちの方がいいかな。でもこっちも良さそうだし」

「買い物しに来たんですよね名詞さん」

「そうだよ、かなくん」

「なんでメンズ服のお店来てるんですか。名詞さんの服なら他のお店ですよね」

「確かに私の服も買うけど、今日はかなくんの服ん買いに来たんだよ。いつも同じような服ばかりでしょ?デートなんだからかなくんにもお洒落してもらわないと」


 要するに、俺が来てきた服はあまりお洒落じゃないと。

 まあ確かに流行の服でないのは確かか。


「こんなものかなー、お会計してくるね」

「自分の服くらい自分で払います」

「いいの。これは私からのブレゼントなんだから。かなくんは食事の時にお金出してちょうだい。ね?」

「ね?って言われても」


 自分で着る服なわけだから、自分でお金を払うべきだけど。プレゼントならここは言う通りにした方がいいのか?


「かなくんがお金払ったらプレゼントにならないでしょ?ここは年上の言うことを聞くの」

「分かりました、ありがとうございます」

「いいのいいの。好きな人にはカッコ良くいて欲しいだけだから」


 名詞さんは直接の値段を言わなかったが。値札を見て勘定した限りでは一万は越していたはずだ。

 何か、俺も贈り物をした方が良さそうだな。

 貰いっぱなしは気が引けるし。


 服を買っているうちに思いのほか時間が経っていたようで、フードコートで何か食べることにした。

 そして、向かう途中に思いがけない人達と出会った。


「おお、そこにいるのはかなくんじゃないか」

「かなくんおはよう」

「陽香先輩に静香ちゃん。おはようございます」

「うむ、おはよう。所で隣の女性は誰かな?」

「この人は」

「かなくんと一緒にバイトしてる。九毬名詞です。よろしく」


 名詞さんの紹介をしようとしたら、先に名詞さんが名乗っていた。


「どうも。私はかなくんの部活の先輩の弐闇陽香という。こっちは妹の静香だ。どうぞよろしく九毬さん」


 なんだか、名詞さんと陽香先輩の間に火花がちっているようだった。

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