第2話 作戦は失敗したらしい(/ω\*)

雨の中僕は、公園付近の駐車場を探索した。

電子キーなら簡単に、自分が乗っていたであろう車を見つけられるはず!


公園のすぐ隣は住宅街だ。

静まり返った住宅街から、安らかな寝息が聞こえてきそう・・

今の僕とは対照的で、なんか泣けてくる。


車は、思っていた以上にすぐ見つかった。

ポケットの中の鍵に気づいていれば、

こんなに時間を無駄にすることもなかったのに。


電子キーを押すと、白のワンボックスのワゴン車がライトを点滅させて、僕に合図を返した。


「なかなか可愛い奴だ」


僕は運転席に乗り込んだ。

運転席はすぐに僕の身体に馴染んだ。


間違いない、僕の車だ。多分・・・・


「う~う~」


後部座席からの声に、僕の身体は全力でビビった。


3列目の後部座席には、身体を縛られ、手錠を掛けられ、口を塞がれた少女が呻き声を上げていた。

そんな不穏な状況に、僕の身体は全力で怯えた。


一体僕は何をやったんだ?


セーラー服を着た少女は、目で何かを必死に訴えていた。


状況からして、僕が誘拐した少女か?


とりあえず・・・・


少女に話を聞いてみない事には、詳細は理解できない。

僕は少女の口を塞いでるガムテープをゆっくりと剥いだ。


すると


「お願い、逃げないから、トイレに行かせて!もう限界!」

「えっえっえっ」


どうしよう。


僕の頭脳はそれに関して、何の回答を出すことは出来ず。

「お願いです!」

彼女の声に押されて、彼女を車外に出した。 しかし、

「あ・・・」

彼女は悲しい声を出した。


作戦が失敗したらしい。


誘拐された?事に比べれば、そんなに悲劇とは言えないが、女子のプライド的には、比べものにならないレベルの悲劇だ。


目の前の少女から、清楚系美少女お嬢様オーラが、崩れ落ちる瞬間を僕は、とても残念な現場を目撃してしまった。


「なんか・・・ごめん」


清楚系美少女お嬢様オーラが、剥がれた直後の少女は呆然としていた。


「あの・・・バック取ってもらえます?」


彼女は弱々しく言った。

僕はすぐに陸上部と書かれたバックを彼女に渡した。


「大丈夫、見なかったことにするから」


僕は慰めになるかどうか解らない言葉を掛けた。


「これで私を撮ってもらえます?」


と少女は黒い箱型のカメラを僕に渡した。

実物は初めて見たけど、2眼レフカメラか?


「漏らした自分を撮ってくれと?」

「自分を、より客観的に捉えて置きたいので」

「う・・うん」


しかし、どうしよう・・・・


今は誘拐中・・多分。僕は記憶喪失中。彼女はお漏らし中。


「安心してください。後で法廷に提出とか誓ってしないので」


【法廷】その言葉が、僕の肩にずっしりと乗った。


今までの僕が真面目に生きて来たのかは解らないが、現時点で僕は罪を犯している。それも、かなりの重罪だ。

僕はその言葉の衝撃に耐えながら、カメラを彼女に向けた。


向けられた彼女は、哀しげに俯(うつむ)いた。


「ちょっと見せてもらえます?」


そう言われ、写真を一枚見せた。


数秒、確認した後、


「はい、おkです、さっきのより上手に撮れてます」


さっきも撮ってたのかよ!

何してんだよ、さっきのこの子&さっきの僕!


誘拐中だよ!


「ちょっとそこの水道で洗ってきても良いですか?」

「う・・うん」

「誘拐犯のパシリさんも、着いてきます?」

「パシリ?」


僕は主犯ではないようだ。


深夜の公園の水道で、女子の下半身を洗ってるところを、誰かに見られたら、即、通報される。

でもさいわい、深夜の公園には誰の姿も見えなかった。


「これをこーしてここに・・・・。」

彼女に言われるまま僕は、人が来るかも知れない方向に立ち、バスタオルを広げ壁になった。


「えっえっえっ、ここでスカートを脱ぐの?」

「大丈夫です」

彼女は、小さい声で囁いくと、蛇口を上にして、パンツに向けて水を噴出させた。


「また撮ってもらえます?」

「えっ、ここでも?」

「はい」


僕は仕方なくバスタオルの壁を維持しつつ、カメラで彼女を撮影した。

陸上部で鍛えられた彼女の足腰は、暗闇の中でも惹きたった。


「はい、ありがとうございます」

の声で撮影は終わった。


バスタオルを腰に巻くと、濡れたパンツを脱ぎ、陸上用の短パンに着替えた。


「記念に、いります?」


彼女は濡れた方のパンツを僕に示した。

僕は相当変態だと思われているらしい・・・。

そこまで変態じゃない。いや変態かも知れない。

まあ誘拐犯のパシリらしいし、それは仕方ないか。


しかし、なんの記念だろう?


「いらない」

「ホントに?」

「ホントに」

「良かった。そんなに変態じゃなくて」


彼女はちょっと安心したみたいだが、


それはどうだろう?


今の僕が本能に忠実じゃなかったってだけで、本能にもっと忠誠を誓っていたら、違う答えになっていたはずだ。

彼女は濡れたパンツをバックにしまった。


「はあ」


彼女は、色んな種類の意味を含んだ溜息をついた。

その小さな溜息は僕の心に沁み渡り、居た堪れなくなった。



つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る