離婚
「僕と別れてほしい」
いつも通りの食事、会話。
その中に突然大型の爆弾が放り込まれた
私は、頭を鈍器で殴られた痛みを覚えながら聞いた。
「最近あなたの帰りが遅かったのも、きれいな黒髪が服についてたのはやっぱり浮気してたのね?」
「そ、それは・・・」
違うとでも言いたいのだろうか?
何も間違ってはないのに。
浮気なんてしない人だとっ思った。
ヘタレだし、少し天然が入ってて優しい人。
浮気しようとしても私を蔑ろにするような非常識な人じゃないのに。
でも、離婚することが彼の幸せになるなら・・・
「いいわ。離婚届を書きましょう」
「え」
そう告げたことが以外だったのか、驚いた顔をする彼。
「泣き縋ると思った?生憎、そんな涙は今捨てたわ。」
「・・・」
「離婚届を持ってきて。ないなら明日ね」
「・・・・」
「私はこの家から出ていくわ。こんな家住みたくないし」
「・・・・・・」
「両親にも話さなきゃ。年末帰る予定だったけどもう無理ね」
「どうして・・・・」
「なに?」
「どうしてそんなに冷静なんだ」
「取り乱したらあなたは私のことを愛してくれるの?」
「・・・・・・」
「今日は私外で寝るわ。」
「え、それは」
「夕飯は・・・もういいわね捨てておいて」
「・・・・・・・・」
「じゃ、”また”明日。」
「うん・・・・・・・・・」
少し早足でリビングを出る。
大きな深呼吸をしてから、貴重品を取りに寝室に入る。
二人の思い出が詰まった部屋。
今は見ると泣き出しそうなものばかりなので、急いで鞄をもつ。
冷静にできていたのかしら。
服などの荷物を詰めながら考える。
正直泣きそうだった。
彼が唯一の存在だった。
毎日狭いテーブルで向き合いながらご飯を食べる。
結婚前にご飯だけは揃って食べようって言ったのも彼だった。
大学生の時から付き合って、3年経ったら結婚した。結婚生活はもう5年だ
八年。長かったようで短かった。
この先も続いていくような日々は突然終りを迎えた。
そう思うと涙が出てきそうになる。
目を袖で拭って、靴を履く。
”行ってきます” そう言いかけたが、”行ってらしゃい”と声をかけてくれる人はもういない。
さようなら。小声でそう言って家を出た。
ーーーーーーーー
次の日、僕は家にいた。
謝るために。
そしてやっぱり離婚なんかしないって伝えるために
彼女は泣きたくなるとき指を握るくせがある。
やっぱり僕のことを思って別れようって言ってくれたと思った。
浮気なんてするんじゃなかっった
また狭いテーブルを囲んでご飯を食べたい
ゆるしてはもらえないだろう。
それでも、謝り続けよう。
いくら待っても彼女が来ない。
もう夕方だ。
少し外を見てみるか・・・・?
そう思った僕は玄関に足を運ぶ。
ふと気づいた。あれ?彼女の鍵が何故かここにある。
嫌な予感がした。
急いでエレベーターを降りて郵便受けを確認する。
そこには記入済みの離婚届が入っていた。
短編集 @neko____com
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