イマジナリーフレンド?

○●子供の頃の不思議な体験 2話目●○



221 :1/4

ちょっと長い話になるんだが、聞いて欲しい。


小五の夏休み、初めてじいちゃんち(父方の実家)に遊びに行った。

今まではじいちゃんたちが俺んちに来てたけど、そろそろ歳で足腰が悪くなってきたから、という理由でこちらから行くことになったはず。

じいちゃんちははっきり言ってドがつくほどの田舎。

山に囲まれたわずかな盆地に集落が寄り集まっているような場所だった。

そういうわけだから子供たちの遊び場と言えば山だった。

俺は幸いにも村の子供たちの仲間に入れてもらえて、山へ虫取りに行くことになった。

村の子供たちが何人いたのか今でも思い出せないんだけど、両手の指で足りるくらいしかいなかったはず。

そこから女の子の数を差し引いた人数が俺と遊んでくれた子供たちの数。


で、その子供たち(年齢は割と幅があったけど中学生はいなかった)に連れられて虫取りへ山に入った。

俺は山になんて入るのは初めてな都会っ子だった。

だもんでひょいひょいと獣道を進んで行く子供たちを必死で追いかけていた。

その中でもDってやつだけが、ときおり後ろを振り返って俺がついて来てるか確認してくれているようだった。

Dはクラスの背の順で後ろの方にいた俺よりも背が高かったし、しゃべり方がちょっと大人びていたんで、俺は年上(小六)だと思っていた。



222 :2/4

で、子供たちに教えてもらいながら色々と虫取りをしていたんだが、気がついたら俺ひとりになっていた。

なんでひとりになったのかは今でも謎。

でもなんか気がついたらすげえ背の高い木と、雑草がボーボーに生えた山の中にひとりきりになっていた。

虫の声も、鳥の声もしなかった。

幼心に俺はヤバイと思った。心臓がドキドキとものすごい音を立てていた。

俺は内向的で悲観的なタイプだから、すぐに遭難っていう言葉が浮かんで、最悪の妄想で頭がいっぱいになった。

でも突っ立っていてもどうしようもならない。

山を下りればどうにかなるだろうと思って、半泣きで山を下り始めた。

途中で「おーい」とか震えながら大声を出してみたけど、返事はない。

おまけにどんどん周りが暗くなり始めて、日が暮れてきたんだ!と思ってますます焦った。

今思うと夕暮れは見なかった。霧が立ち込めるように周囲が薄暗くなって行った。

めちゃくちゃに焦っていたから、当時はそれがおかしいことには気づかなかったけど。


それでもう夜がそこまで迫ってる、っていうくらい暗くなったところで、荒れた山小屋っぽいものを見つけた。

まさしく掘っ立て小屋といった風体の小屋だ。

子供なりに暗くなったところを立ち歩くのは危ないと思ったんで、俺はその小屋にお邪魔して一晩明かそうと考えた。

小屋は普通の山小屋という感じだった。中にはなにもない。

屋根がちょっとはがれかけているくらいの特徴しかなかった。

俺は小屋の隅へ体育座りに座り込んで、ぼんやりと欠けた屋根から夜空を見上げた。

不安で不安で仕方なくて、ぐずぐずと泣いていたんだが、しばらくしたら山を歩いた疲れもあったのか寝入ってしまった。



223 :3/4

次に目を覚ました時には、そばにDがいた。

俺はおどろいてDに「なんでここにいるん?!」と聞いた。

Dは困ったような顔をして、「ここで待っとって欲しいんやけど」と言った。

俺はDの意図がよくわからなかった。

「他のみんなはどうしたん?」「怖いからいっしょにおって」みたいなことを言ったんだが、Dは困った顔をするばかり。

しばらくして「ここで待っとって」と言ってDは立ち上がると、山小屋を出て行った。

山小屋の周囲は完全に闇に包まれていて、明かりと言えば月明かりだけ。

そんな中を外に出ていける度胸は俺にはなく、年上(だと思っていた)Dの言葉もあって山小屋で待つことにした。


しばらくして俺は山狩りをしていた村の消防団の人に助け出された。

親にはめちゃくちゃに怒られて、ばあちゃんには泣かれた。

いっしょに山に入った子供たちには謝られた。でもどうして迷ったのか俺は思い出せなかった。

俺はDが消防団の人に俺の居場所を教えたから助けられたんだと思っていた。

でも不思議なことにその場にDはいなかった。

それと親にめちゃくちゃ怒られて落ち込んだのもあって(俺はしょっちゅう怒られるようなタイプの子供じゃなかったんで)、すぐにはDのことは思い出せなかった。


次の日の朝にようやく思い出して、Dにお礼を言いたいから家を教えてくれとじいちゃんに言った。

じいちゃんは「Dなんて子はおらん」と強張った顔で言った。

結論から言うと、本当にDなんて名前の子はこの村にはいなかったんだ。



224 :4/4

今思い返すと日焼けしまくりな村の子供たちの中で、Dだけは日焼けしてない色白の肌だった。

あと俺はDを小六だと思ってたけど、そのとき村には小六の子供は女の子しかいなかった。

もちろんその女の子と俺は面識がなかったし、Dという名前にはかすりもしない。(苗字も下の名前も)

俺はそのことを指摘されると、Dの顔を思い出そうとしても思い出せなくなった。


ばあちゃんはそんな俺を心配して、檀那寺に俺を連れて行って一応お祓い?をしてもらった。

三十代くらいに見えるお坊さんは、俺に「イマジナリーフレンド」という言葉を教えてくれた。

そのまんま「空想上の友人」って意味なんだけど、こういうのが山で遭難したときに現れて帰り道を教えてくれる…みたいな話があると教えてくれた。

だから怖がらなくていいっていう話なんだけど、俺は普通に納得がいかなかったし、怖かった。


ちなみに俺はイマジナリーフレンドとは縁なんてないはず。

親にも聞いたけど、架空の友達を作って遊んでいたみたいなことはなかったって。

Dは俺を助けてくれたっぽいから、怖がるのは悪い気がするけど、でもやっぱりちょっと不気味。

そして俺が遭難した日以降、Dは現れることもなく、遊んでくれた村の子供たちもDのことは知らなかった。

Dはいったい何なのか、今でもよくわからない。



225 :ななしの生徒さん

イマジナリーフレンドではなく、守護霊とかじゃないの?

あとはお盆の時期が被ってるんだったらご先祖様の霊とか。



226 :ななしの生徒さん

わたしもなんとなく守護霊っぽいなと思った。



227 :ななしの生徒さん

いっしょにいたら幽霊だってことがバレちゃうから消えたのかな?

あとDのことを怖いと言ってるけど、おれは唐突に山で遭難した話の方が怖い。



228 :ななしの生徒さん

>>227

山神様に気に入られちゃった、とかなのかね?

で、守護霊がそこに助けに入った?



229 :ななしの生徒さん

虫や鳥の鳴き声が聞こえなくなるとか、典型的な異次元に迷い込みました系の話だよね。



230 :ななしの生徒さん

神だか妖怪だかわからんが、>>221は魅入られちゃったっぽいよね。



231 :ななしの生徒さん

221は怖がってないでもっとDに感謝すべき。



232 :ななしの生徒さん

むしろDが山の神様ということもあり得るのでは?

子供に混じって遊んでたけど、バレちゃったから出てこなくなったとか。



233 :ななしの生徒さん

>>232

なるほど。

山の神さんだから山で遭難した221を助けた、というのは納得がいく説明だな。



230 :221

>>221-224です。

たしかにDのこと怖がってるのは悪いと思うんだけど、でもやっぱり不気味なんだよな…。

Dのことを自然と頼りに思っていたのも、なぜだかわかんなくて怖いんだよ。

山の神…はちょっと畏れ多いから、Dはご先祖様の霊だと思っておく。

ちなみにまたDが出てきたらどうすればいいのかわかんなくて、あれ以来山には近づいてない。



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