第4話・ヤベェ秘密
「天音、帰ろうぜ」
「ひゃ?」
椅子に座った天音を見下すような体制でその言葉を放つ。天音は訳が分からない、といったふうに、頭に?マークを作った。
「いやだから、一緒に帰らないか誘ってんじゃん」
「え…ぁ…はい!!い、行きます!いかせてください!!」
頭の凍結が解けた天音は、ぐいっ!と俺に顔を近づけて、目を血走らせながらそれを言った。
「お、おう…」
………
……
…
「いやぁ…なんか一緒に帰るのは久々だね。一緒に学校行くことはあっても」
「まぁな〜。一緒に帰ってるとまさにカップルだし」
でもそれをいうなら朝一緒に学校行くのも大分怪しまれる筈なのだが、どうやら昔の俺たちの間には朝一緒に行くのと放課後一緒に帰るのでは少し意味合いが違っていたらしい。
「あ、あのさ…?」
「ん?」
「今日…私の家来ない?」
指を絡ませて、上目遣いを使いながらそれを提案してくる。それを提案すると言うかとは…まさかそう言うことだろうか。
「も、もちろんそう言うのじゃなくて!単にイチャイチャしたいだけだからね!?」
「お、おぉそうか!単に……ん?」
内心少ししょんぼりしたのは俺だけの秘密としようと心に思ったのはさておき、その後に発せられた言葉に謎の疑問を覚えた。
「い…イチャイチャとか…そんなバカップルみたいな…というか昼休み散々やっただろ…」
「ふふん!幾ら食べ物を食べても、いずれはお腹がすくもんなんだよ〜?」
どうやら天音にとって俺は食料と同じらしい。
「どうせ修斗ってば友達居ないから暇でしょ?だったら私とイチャイチャしてよーよ!」
悲しい気持ちと嬉しい気持ちの二つの矛盾したような気持ちを胸に抱える。というか何気にすごいことを言われたような気がする。
「わ、分かったから外でそれを言うな!恥ずかしいだろうが!」
俺はしぶしぶ…いや、はい、内心でかなり喜んでましたが、そういう体を装って、天音の家に向かうのであった。
………
……
…
「ほれほれ、ゆっくりしててくださいませ」
そう言って、天音は部屋を出て行った。恐らくはジュースかなんかを取りに行ったんだろう。
何度も来た事のある天音の家の、天音の部屋。いかにも女の子らしい部屋の中で、机に飾られている俺と天音が中学校卒業の写真が入った額を持ち上げて、目に映す。
「なんか懐かしいな…」
卒業証書のケースを持って、天音が笑顔でピースして、俺に抱きついている写真を懐かしみながら見ていると、本棚にアルバムを発見する。
(………すげぇ気になる…)
高級そうなアルバムだ。この中にどんなのが入っているのかとても気になる。いや…まぁうん、天音の成長の写真とかあるのかなぁ…という下心もありますはい。
(そうだよな…数秒だけ見てもバレないよな!!)
好奇心が勝ってしまい、俺は恐る恐るアルバムを手に取って、それを開いた。
「ん?」
そこには一面俺の写真が載っていた。幼稚園の頃の積み木をしている写真や、節分の日に鬼の格好をした先生から天音を守ろうとして庇っているが、涙目になっている姿。
天音と俺が一緒にいる写真が、ずっとずっと続いていた。それが中学3年まで…ずっと。
「……長かったよなぁ…」
初恋は実らない。そう言うが、俺は叶ってしまった。というか親父も初恋を無事叶えてその人と結婚までしてる。
俺もいつかは…
「何々?修斗アルバム見てるの?」
いつの間にかお盆を持って部屋の中に入って来た天音が、俺の顔を覗き込む。
「ん…あぁ、ごめん。つい」
「別にいいよ〜。そこに見られて困るものは入ってないしね」
「そうか…ありが……………ん?」
今『そこに』つったか?ってことは…もしかして見られて困るものが…この部屋の中にある?
「天音?」
「……し、しらないでしゅよ〜?み、見られて困るもんなんて…ないですよ?ほ、ほら!気になるなら部屋の中を隅々まで探索するといいですよ!」
「そうか、じゃあ遠慮なく」
即答した俺は、早速天音の部屋の中を探索し始める。まずは机の引き出し…はない。本棚の奥もないか…。
「じゃあ次は…」
ベッドに行った途端、天音の顔色が青いものに変わって行った。それを直感した俺は、ベッドの床を覗き込んでみる。だがそこにはない。
「どうやら俺の思い過ごしだったみたいだ」
「ふぅ…そ、そうだよ!私がやましい写真なんて持ってるわけな…」
俺が本気でそれを思ったのだとしたらそれは大間違いだ。今のは天音を油断させるためのモノだ。最後に確信を持って、サイドフレームとマットレスの間に腕を突っ込んだ。
どうやらビンゴのようだ。
「ぁ…ああぁ…」
絶望に顔を浸らせているが、それをお構いなしにそれを引き出す。顔を出したそれの正体はアルバム。それを開くと、そこには林間学校や水泳の授業などで海パン姿となった俺の姿が大量に写っていた。
「さぁ?これはどういうことか説明してもらおうか」
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