第3話・弁当
「しゅ、修斗さん!一緒にご飯食べませんか!?」
高校1年の5月、特にこれといった友達も居ない俺は、いつも通り1人でボッチ飯を決め込もうと財布を持って立ち上がった時であった。
持ち前の天真爛漫の性格と、2次元並みに整った顔立ちで、無意識のうちにクラス内最大権力を手に入れて居る天音に、何故か敬語で飯に誘われた。
「あぁ、別に良いけど…」
断る理由も見つからないので了承すると、天音の顔が喜びで満ち溢れ、満面の笑みで俺の手を引いてくる。
「じゃあ行こ!この前偶然見つけた良い場所があるから!!」
「分かった分かった。まず落ち着けっての」
そう言って、俺は大人しく天音に連行されるのであった。
………
……
…
「へっへーん!凄いっしょ?」
連れてこられたのは、普段は滅多に使われることのない北校舎の教室。机や椅子もそのまま放置され、誰1人として廊下を歩く人物はおらず、この教室の中には俺と天音の2人きりであった。
「すげぇ。よくこんなとこ見つけたな」
「ふふーん、天音ちゃんの情報網を使えばこんなもんよ!普段だーれも来ない無人の教室。探すのに苦労したんだよー?」
凄く無駄なことに労力を割いている様な気がするが、口に出したら天音の苦労が無駄になってしまいそうなので言わないでおく。
「しかし、なんでまたこの教室に連れてきたんだ?普通に俺らの教室で食えばいいじゃねぇか」
「そんな事したら折角の修斗とのご飯が邪魔されちゃうじゃん!」
そうだ、天音は俺と違って沢山の友人が居る。昼休みともなれば話しかけられる事なんてごまんとあるだろう。
「それに〜…ここなら…こんな事してもバレないじゃん?」
ここなら、の所で俺に抱きついて、擦り寄る様に体を押し付けてくる。
「てんめ…!学校で発情してんじゃねぇよ…!」
「ははっ、流石の私も学校でするなんてリスキーな事はしないよ。今は修斗にR指定ギリギリの行為して楽しんでんの」
こいつ… 端から弁当じゃなくてこっちが目的だったんじゃないだろうか。というか…
(ヤバイヤバイヤバイ…!このバカなんつうことしてんだよ!)
顔が真っ赤に染まり上がり、獣欲を必死に押し殺して理性を取り戻そうとする。
「はぁ…幸せ…」
本当に幸せそうな表情を浮かべている天音に、俺はイラッとしてしまった。コイツのせいで俺はこんな大変な思いをしているのに、のうのうと幸せない気分を味わってる。
割に合わない。
「ふぇ?」
一度天音を体から引き剥がすと、トロン、と魅惑的な目になっている天音と目があった。
そして、天音の唇に自分の唇を持っていく。
「っ!?」
軽いキス…で反撃は終わりにしようと思っていたが、それだとこのバカにバカにされてしまう。
ので、朝やった奴とはまた違う、舌を入れたキスで、天音の舌に何度も触れる。
「うっ…あぁっ…しゅうっ…とぉ…」
そして、天音がその気になり、俺と舌を絡めようとした所で辞めて口を離す。
「どうした天音。不服そうな顔だな?」
「うっ…くぅっ…カウンタードS…このことかぁ…」
なんの事だろうか。俺はただ天音に反撃をしただけであってドSは発動させてないはずだ。
「つか…俺ら学校で何恥ずかしいことしてんだよ…」
「そ、そうだね…」
よくよく考えてみればこんなのヤバすぎる。もし教師にでもみられたりしたら不純異性交遊で停学…は無いだろうが、反省文書かされるかもしれないレベルでヤバいことはしてた。
「お、お弁当食べよっか?ほら、私作ってきたから」
「そうだな…」
何とも言えない奇妙な気分になりながら、俺は少し塩辛い弁当を食べるのであった。
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