林檎を手にして何を思う

柊木 渚

第■話 ■■■■■■

眠りに着くたびに見る光景、視界に広がる本棚の森の中でポツリと僕の方を向いて佇む人の影があった。


「君はいったい誰なんだ?」


 影に尋ねると


「私は如月図書館館長の如月です」


 ノイズのかかった冷めた声でそう答えた影は身を翻して本棚の森に戻っていく、


「待って!ここはいったい!」


 最近は眠るたびにこの夢を見る、その謎を影は知っている筈だ。

 僕は声を大きくして聞いてみると、影は首だけ捻ってこちらを向くと、


「今はまだ時では無いので何もお答えする事は出来ません。ですがこれだけは言っておきます。貴方は特別な人です。これから起きる出来事にしても私から貴方に贈る奇跡にしても貴方は特別なのです。いいですか、悔いの無い人生を送ってください、でないとこの本はとても悲しい物語で綴られてしまいます」


 言い終わると影は歩き、片手に携えた影に覆われた大判の本に視線を落としながら本棚の森に消えて行ってしまった。


「それって―――――――――」


 視界がだんだんと暗くなっていく、耳に刺さるノイズと共に暗闇は僕を包み込んでいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る