第3話猿

 俺は図書館で本を探す。流石にライトノベルの本はないな……。あるのはこの国の歴史や医学・薬学、それに農業と経済情勢についての本が殆どだ。残りは魔術書。

 試しに医学・薬学関係の本を取り出す。

 

 ぺら……ぺら……。


初めのページにはこの本の意義が偉そうにずらずら並んでいる。文の一説には

 

「貴様らのためにわざわざ作ってやったのでこれを読み自分で直せば良い」


などと偉そうなことが書かれている。

 だが、更に読み進めると保健の教科書以前のレベルでびっくりした。間違っていることも書かれており、この世界のレベルの低さに痛感した。また、この世界で絶対に病気をしないように誓った瞬間だった。

 

症例1

Q:あなたのところには高熱のある人が居ますどうすればいいでしょうか


A:地面に寝かせ周りで降霊術を行う。さすれば神が降りて、判断するだろう。


 この場合、暖かい毛布、暖かいご飯を食べさせた後、水を取らせ、寝させることだろう。この世界は神頼みかよ……


 図書館にいる人はそんな感じの本を真剣に読んでいる。


 さて……


 俺は魔術の本を開いた。信用できるかわからないが、素人なので判断つかない。この本を読み進めていくとわかったことがいくつかあった。

 

 ・この世界にはレベルやステータスの表示はないらしい。

 ・人々は皆魔力を有している。

 ・中でも十一の獣は膨大な魔力があり、一匹で一国分の戦闘力を保有しているらしい。

 ・12匹居たが鳥がいなくなったらしい。理由は謎に包まれたまま

 ・獣といっても獣の姿ではなく普段は人の姿らしい。眷属として人間とペアで動くらしい。


ここまで見ると、あの解読中の巻物路内容が類似している。だが、本来の目的である左腕の紋様についてはいまだにわからない。








  いつの間にかすっかり暗くなってた。もう宿に帰るとしよう。図書館を出る。ここから宿へは歩いて十分もかからない。寄り道しながら帰っていると。フードを被っている老人が現れた。魔法使いなのだろうか。何かあざのことを知っているかもしれない。声を変えようと目を合わせた瞬間。じいちゃん魔法師は不気味な笑みを描いた。その笑みは誰でもない俺に向けられたものだと気がついた時はもうこっちに向かって走り出していた。速い……、そう感じた。反応は遅かったが私は急いで逃げた。その場を離れ、細い路地を走り抜け、大通りへ出てきた。ここから宿へは近い。そう安心した。その時だった。

 

 「ようやく追いついた」


 不気味な声が頭に響く。

 真後ろに立っていたのだ。背中に何かを押し当てられる感覚。これが刃物だとすぐにわかった。頭だけその声のする方、老人なのは間違いない。

 だがその不気味な笑みは変わらぬまま……、気味が悪い。

 瞬間左手が一瞬光じいちゃんを吹っ飛ばす。なんだ?


 「おのれ〜中におったか、とりの奴」


鳥?疑問を残しながらも俺は必死に走る。左手がさっきから熱い。


 人里から離れ大きな倉庫の中へ。こんなのは夢だと思いたい。地球に帰りたいと思ってしまう。当然だろう。まさか私がこんな命のやり取りをしないといけないなんて誰が想像するか。近くにあった冒険者の弓と矢を持ち狙いを定める。

 

 「落ちたな、鳥よ……、猿を忘れるなんぞ舐められたものよ」

 

 何のことだろう。迫ってきたやつに矢を射る。だが、簡単に弾き返される。

 嘘でしょ。最悪だ死ぬと思った直後、左手が勝手に動き弾き返される。見るとそこには純鋼の羽でできた鎧があった。そして目の前には銀髪がたなびいていた。

 

 「お前が私の主人で間違いないか?」


 そう問われた。

 




 

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