ピコーン！と技を閃く無双の旅！〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

第161話 俺、冥界で悪い霊の除去作業をする

「そおれ、ブレーンバスター！

『ウグワーッ！』

「フライングメイヤー……からの、エルボードロップ！」

『ウグワーッ！！』

「カールの剣も使うか。うっし、行くぞ、マルチウェイ！」

『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』

「うわっ、今マルチウェイで何人も一度に倒したぞ！？　パワーアップしてる……」

　俺は驚いた。

　駆け抜けた俺の周囲には、人魂モードになった魂がたくさん転がっている。

　さくさくと、暴れる魂を退治しているところなのだ。

「とうっ！　ブラッディマリー！」

「わんわん！」

　向こうでは、カリナとフタマタのコンビが魂達と戦っている。

　……と思ったら。

「とりゃー！」「てやー！」

　おお、トリオになった。

　変幻自在のフタマタ。

　敵の数に合わせて、二人になったり一匹になったりする。カリナとのコンビネーションも抜群だな。

　冥界に来てから、フタマタの術と技の冴えがますます増している。

　色々な教師に教えてもらっているおかげであろう。

　フマとタタが強くなると、それを合わせたフタマタも大変強くなるのだ。

「オクノ、私も手伝わせて！」

「お姉さんも頑張っちゃうから！」

「おおっ、頼む！　ラムハは攻撃、アミラは支援で！」

「ええ！」

「任せて！」

　ということで、ラムハとアミラを加えて再び戦闘だ。

　魂の数はわんさかいるので、技を試すには丁度いい。

　強さ的にはちょっと強いモンスターくらいで、俺達からすると大した脅威ではない。

　技を閃きはしないが、そこそこのタフネスがあるので都合がいいぞ。

　この光景を、冥神がまったりしながら眺めている。

　彼からのアドバイスで、俺は器用貧乏スタイルを極めていくことにしたのだ。

「力の水！」

「私は……そうだ、オクノをさらに強化してみよう！　バイタリティ！」

　むむむーっ！

　なんか体の中に、とんでもないパワーが満ちてくるぞ。

　力の水とバイタリティで、俺のフィジカルな強さが二倍以上になっている気がする！

「よーし、ならこいつで……ベアクラッシュ！」

『力のバイタリクラッシュ』

　うおーっ！　補助呪法といっしょに使ったら連携になった！

　俺が飛び上がって繰り出した一撃は、魂の一つを戦闘不能にした。

　それだけではなく、周囲一帯に衝撃波が走る。

　それに巻き込まれた魂が、どれも同じようなやられ方をして人魂になっていくのだ。

『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』『ウグワーッ！』

「うーむ！！」

　さっきのマルチウェイと、強化された連携ベアクラッシュで魂の大多数が一掃されてしまった。

「これ、もしかして……。今まで技をひたすら繋げてきたけど、そこに補助呪法を加えると破壊力が跳ね上がるのか……！」

「オクノさんオクノさん！」

　そこに、フタマタにまたがったカリナがやって来た。

「今、わたしがブラッディマリーで気絶させた魂に、フタマタが死の牙をしたんですが！　そしたらなんか凄く威力が跳ね上がったみたいな。ええと、周りの魂がまきこまれて、一気にやられたんです！」

「なんと！」

「わん、わんわん」

「ほう、フタマタの見解では、技を使う順番を考えることで威力の相乗効果が生まれると。ふむふむ……」

　ありうる。

　ブラッディマリーは相手を気絶させる技で、死の牙は一撃死させる技だ。

　効果的には似ているけれど、合せて使うとさらに強力な効果をもたらすのだろう。

「これはメイオー攻略の糸口が見えてきたかも知れないな」

『えっ、お兄様に勝てそうなのです？　あの人、キョーダリアス最強の単体戦力ですよ』

　女神ハームラの言う通り。

　タイマンでメイオーに勝てるやつは存在しない。

　あれは間違いなく、この異世界キョーダリアスで最強の存在だ。

　で、俺と同じようにブロッキングを使いこなす場合、連携を当ててもダメージがろくに通らない可能性がある。

　単発のいつもどおりの連携ではだめだ。

　俺が単騎で挑んでも勝ち目は薄い。

　ならば、俺達の強みでメイオーに挑むのが良かろう。

　つまり、仲間との連携とそのバリエーションである。

　あと陣形もある。

「仲間のパワーで立ち向かうことになるわけだな。俺がこの世界でたくさん集めてきた仲間が勝利の鍵だ……！」

　今まで進んできた道のりを思い返し、感慨にふける俺。

　これ、効果的なのは威力や強さだけじゃなく、順番もあるよな。

　地上に戻ったら一旦仲間のステータスを確認して、どういう技と呪法を持っているかを知っておかねばな。

　組み合わせで一番効果的な連携を作り出すようにするのだ。

　しかしまあ、膨大な組み合わせになるなあ。

　戻ったらフローチャート作ろ……。

　そういうチャート作成、確か一番得意なのは父だな。

　まさか最終決戦のために親の手を借りることになるとは……。

　今後の計画を立てながら戦っていたら、この辺りの暴れる魂は一掃したようである。

　人魂がひくひくしながら、大量に転がっている。

　俺はこれらをアイテムボックスに回収した。

「随分魂狩りもやったことだし、そろそろ終わりかな？」

『そうですねえ。皆さんの頑張りのおかげで、残りの暴れる魂たちも怖気づいて自首してくる者が増えているそうです。もう帰っちゃっていいんじゃないですかね』

　月の女神がとてもいい加減な事を言った。

　冥府に来てからの付き合いで、女神ハームラが大変に適当に日々を暮らしていることが判明したので、今更驚かないぞ。

　なんで女神の巫女であるラムハがちゃんとしてて、ハームラはこうなんだ。

　あっ、巫女がしっかりし過ぎてるからか。

　過保護な親が子どもを甘えん坊にしちゃうのといっしょだな。

『英雄オクノはどうしてわたくしを生暖かい目で見ているのですか』

「あ、オクノ、私の気持ち分かっちゃった……？」

「よく分かった」

　俺とラムハは分かりあえた気がする……！

　主に、女神ハームラに対する見解において。

　そして、ハームラからお墨付きも出たことだし、これで冥界をおさらばしようという話になった。

　戦争になるという地上も気になることだし。

「フタマタ、冥神に会いに行くぞ」

「わんわん！」

　背中に掴まって、と言うフタマタ。

　俺は彼の背にまたがった。

　……フタマタに乗るの、何気に初めてだったりしない？

　俺もでかいので、いくらフタマタがでかいとは言っても足がついてしまう。

「ふーむ。ではこうだ」

　俺はフタマタの胴を抱えると、腹で体重を支え、両足はピンと伸ばした。

「オクノさん、変なかっこです！」

「わはは！　なんだそりゃオクノ！」

「過去に俺の仲間に、そういう奴がいた気がするな」

「ああ、いたであるなあ！　こういうポーズで空を飛ぶ者が！！」

　なにっ、知っているのかフロント、ジェーダイ！！

　これは俺の世界で言う、スー◯ーマンポーズに近いものなのだ。

「わん、わおーん！」

　フタマタが高らかに鳴いた。

　そして、猛烈な勢いで走り始める。

　俺のポーズは空気抵抗の邪魔をしないのだ。

　……冥界に空気抵抗はなかったな。

　このポーズの意味とは一体……？

　まあいいか。

　あっという間に冥府に到着し、冥神ザップが魂を裁いている様子が見えた。

　彼は俺に気づくと、

『ちょっとストップ』

　と仕事を止めてやって来た。

『そろそろ帰るのですかな？』

「おっ、話が早い！　実はそうなんだ。結構な数の魂を狩ったからさ」

　俺はアイテムボックスから、ざらざらざらーっと人魂を出した。

　これを見て、裁かれている魂たちが『ヒエー』とか言っている。

『よかろう。では、帰還の準備をするのだ。どこか希望する帰還場所はあるか？』

　聞かれて、俺は少し考えた。

　そろそろ、戦争が始まっててもおかしくないよな。

　オクタマ戦団は強いとは言っても少数精鋭。

　全員が揃わねば、速攻で勝負を決めたりはできまい。

　イクサにも今は守るべき人がいるしな。

「じゃあ、王国と帝国の国境線あたりで。この間戦争があったとこ。多分、どんぱちやってると思うんだよな」

『よしきた』

　冥神ザップはとても話が分かる。

　すぐさま手続きをしてくれるそうだ。

　さあて、地上に帰還して早々に仕事がやって来そうだぞ。