第104話 俺、団を合流させて進撃する

「これがオクタマ戦団か。なるほど、全く統一感というものがないな」


 ファイナル皇帝はうちの団を見て、ちょっと笑った。


「だがつまりは、各々がエキスパートということだろう。軍を成し、戦略で戦いを推し進める余とは違い、そなたらは個の力で戦うわけだ」


「そういうことです。一応陣形とかあるんで、大群との戦いにも対応してますよ。軍隊は強いけど、人と人との戦いじゃないとなかなか厳しいでしょ。今回みたいなロボの軍勢とかは俺らの方が向いてると思うよ」


「確かにな。では、そなたらに先駆けを任せよう。天空の大盆が呪力を補充するための舞台がこの先にある。その地を守る結界と、鋼の巨人が厄介でな。倒すためには、インペリアルガードが全力を出さねばならん」


「山巨人並みかあ」


 少人数なら面倒かもだが、今の俺らはめちゃくちゃ数が多いからな。


「大丈夫でしょ。押しつぶしてくる」


「任せた」


 皇帝とそういうやり取りをして、俺達は先行するのだ。




「久々だな、オクノ。元気してたか? お嬢ちゃんたちも変わらねえなあ」


「ぶー! あたしはちょっと成長してますよーだ」


「年頃の女の子の成長を甘く見ないでほしいのです」


「分かった分かった! で、またお前、新しい仲間を増やしたのか。なんだこの筒」


『だみあんGデス。今後トモヨロシク』


 ダミアンGがピコッと手を上げた。


「かわいい」


「かわいいねえ」


 日向とロマが騙されている。


「ダミアンG……。その名前は初めてだが、この気配、どこかで感じたことがあるような……」


 人間の姿に戻ったエスプレイダーが、じろじろとダミアンGを見ている。

 ほほう、これはあれだな。

 ダミアンGの正体がばれるとエスプレイダーとのバトルが発生するやつだな。


「ダミアンGはぽんこつロボだぞ。おたくとは何の面識もない、初対面だ。いいね?」


「お、おう。あんたが団長か」


「その通り。オクノだ。よろしくなエスプレイダー」


「何っ……。どうしてそれを……!?」


 お前名乗ってたじゃねえか。


「俺は石神フロント。フロントと呼んでくれ」


「そうか。よろしくなフロント。古代文明時代のヒーローだったりする? 悪の秘密結社と戦ったり」


「何っ……! どうしてそれを……!!」


 フロントが身構えた。


「俺もそういう事には詳しくてな。俺がいた世界でもヒーローという概念は(特撮とかマンガとかで)一般的だったんだ」


「そうだったのか……!! 俺の事情は秘密だが、理解者がいることはありがたい。目的を果たし、抜け殻となっていた俺だがまだできることはあるようだな。この力、人々の平和と安全のために役立てて欲しい!」


 俺と固く握手を交わすフロント。


 嘘は言っていない。

 理解を深めるための方便というやつだ。


「……で、ダミアンG、お前こいつの敵だったんだろ。あれか。お前、悪の大首領だったとか」


『ギクギクッ! ナ、ナンノコトデスカネー』


 ダミアンGのモノアイが横を見て、口笛みたいな音を立てた。

 あ、これ、ケトルで湯を沸かした時になる音だな。

 もしやダミアンG、単体で湯沸かしができる……!?


 今度試そう。


「では、また用があったら呼んでくれ。俺は日向とともにいる」


「うむー。……日向と? なんで?」


 俺が首を傾げると、ロマがぐふふ、と笑った。


「まあ色々あったのさねー」


「なんだとぉー」


 大変興味があるぞ。

 だが、見ているとなんか、そういう関係ではないっぽい。


「フロントくん、いつまで正体を隠してる設定してるの」


「設定じゃなくてだな……」


「仲間なんだから、そういうのオープンにしていいんじゃない?」


「し、しかし俺の正体を明かすと、ダーク・ダイヤモンドの標的に……」


「それは何千年百合の話でしょー」


「ううう」


 姉弟のように見える……。

 フロントの方が明らかに年上だがな。


 だが、日向も前よりも受け身ではなくなっているようだ。

 これなら、別働隊の隊長として仕事をしてくれるようになるかも知れない。

 俺以外で唯一、陣形を選択して行使できるっぽいしな。


 さて、そうこうしている間に見えてきたぞ。


 一見してなにもない空間。

 だが、なにもないはずの場所が陽の光に照らされて、時々きらりと反射する。


 結界だ。


「日向、この間とおなじやつだ」


「うん、分かった!」


 日向が進み出た。


「おっと、その前に」


 俺はこの間、ミルマスと話をして、彼の技を会得できないか試してみたところだった。 

 結果、俺のステータスにミルマスの技は増えなかった。

 誰かから俺に対して継承することはできないようだ。

 だが、宙に浮いた形でミルマスの技が俺の中にある。


 つまり……継承待ちの状態になっているということだ。


 人から人への受け渡しが可能なようだ。


「日向に継承する。これは、百手巨人拳。パンチを連打する技な。俺は自分で閃かないといけないみたいだ」


「あ、うん。もらうね」


 技を受け入れた日向。

 すると、百手巨人拳が日向のステータスの中で、その名を変える。



名前:日向マキ

レベル:41

職業:体術使い


力   :103

身の守り:72

素早さ :123

賢さ  :31

運の良さ:27


HP330

MP33


体術25レベル

精神抵抗10レベル

動物会話5レベル

☆体術

・浴びせ蹴り・裏拳・三角蹴り

・空気投げ・爆砕鉄拳・鬼走り

・千手観音



 千手観音!

 なるほどなあ。この世界に観音様はないだろうしなあ。


「この技……。凄い威力っぽい気がする……!」


「よし、使ってみよう。俺は斧で行くぜ」


「よかろう、手を貸す」


「なんだか分からんが、ここは出番だな!」


 イクサとフロントも前に出てきた。

 お前ら、結界が視認できないはずだが……?


 まあいいか。


「行くぞ! 高速ナブラ!」


 俺の突撃からの斧での斬撃。

 そして、


「裂空斬!」


 空を裂くイクサの斬撃。


「駆け抜け!!」


 疾走しながら、フロントが結界を斬りつける。


「千手観音!」


 そこへ日向の連続パンチが炸裂した。

 姿勢を正したまま、無呼吸での猛烈な連打だ。


『高速裂空抜け観音』


 抜け観音!!

 バチが当たりそうである。


 結界は澄んだ音を立てて、粉々に砕け散った。

 この音は、集まった全員に聞こえたらしい。


「結界を破ったか。さすがだ。我がインペリアルガードでは、これを破るために力を使っている間、鋼の巨人への守りが疎かになる。そこだけが弱点だったのだ」


 皇帝、そう言うと、手をかざした。


「陣形。インペリアルクロス!」


「御意!」


 皇帝を中心に、十字に配置されるインペリアルガード。

 余ったファルコンはうちに入れておく。


「来るぞ、鋼の巨人だ!」


 重いものが地面を蹴る音がする。

 向こうから、のしのしとやって来るのは……。

 巨大ロボである。


 キューブ状の物体を積み重ね、頭、肩、胴、足を作ったような怪物だ。 

 まあかっこよくないよね。


「オクタマ戦団、総攻撃!」


 俺は指示を下す。


「跳弾!」


「油地獄!」


「吹雪!」


「わんわん!」


「ピガガー! コレデモクライヤガレー!」


『跳油吹わんピガー』


 これはひどい。

 跳ね回る弾丸が鋼の巨人を穿ち、油の海が足を取り、吹雪が装甲を凍らせ、フタマタの炎が冷え切った装甲を一瞬で灼熱に変える。

 そこに、ロボから銃を回収したダミアンGが連射するのだ。


 鋼の巨人の表皮があっという間に砕かれていく。


「影矢!」


「双龍破!」


「アクアバイパー!」


「闇の雨!」


「ミヅチ!」


『影双龍アクアの雨ヅチ』


 途中まではかっこよかったんだけどなー。

 漢字とカタカナが合わさるとやっぱだめだな!


『もがー!?』


 強烈な攻撃に、鋼の巨人が揺らぐ。


 そこへ、皇帝率いるインペリアルガードが一斉に技を放った。


「ハヤブサ斬り!」


「トマホーク!」


「ジャベリン!」


「飛翔撃!」


 連携にはならないようだな。

 そして剣を抜き放つ皇帝。


「彗星剣……!!」


 皇帝の剣に光が集まった。

 その光は上空へと舞い上がり、鋼の巨人へとまるで彗星のごとく集中的に降り注ぐ。


『もががががーっ!!』


 こりゃすげえ。

 呪法技だが、かなり威力が高いやつだ。


 二回の連携でボロボロだった巨人は、この技を受けて限界を迎えたらしい。

 全身の結合部が破壊され、キューブ状になってばらばらと崩れ落ちていった。


 うーん、数の暴力!!


「私だけ何もしてない……!!」


 インペリアルガードのファルコンが頭を抱えていた。

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