第103話 俺、ヒーローと悪の首領が数千年ぶりに再会するのを目撃する

 港町に到着した。

 インペリアルガードも一緒なのだが、そこへ狙いすましたようにアレがやって来た。

 そう、それは。


「天空の大盆が来たぞー!」


「災いを振りまく悪魔の浮島だー!」


 港の人達が逃げ惑う。

 なんということだろう。

 うちのホリデー号がもうすぐ到着するという頃合いなのに。


『コレハイケマセン。おくのサン、一度撤退シマショウ』


「何言ってるんだダミアンG。やっつければいいだけだろ。それに最近お前、港に来るのを嫌がったりしてたけどなんでなの」


『潮デ錆ビルカラデス!!』


「ほんと?」


『ホ、本当デス』


 汗をかかないはずのドラム缶ボディ。

 表面にうっすら塩分を含んだ雫が浮かんでいるような。


 こいつ、とことん高性能だな。


 そうこうしていたら、空からロボットが降ってきた。

 落下傘みたいなものを展開しており、樽状の鋼鉄ボディが次々と港町に着弾していく。


 現実の樽よりも大きな金属塊が振ってくれば、いかに落下傘で減速しようと着地の衝撃が大きくなる。

 突っ込まれた家々は屋根を吹き飛ばされ、地面の石畳は砕け、海に落ちたものは大きな水しぶきを上げた。


「大変な迷惑だな! みんな、戦闘態勢! イクサとカリナは組んで、遊撃を!」


「分かった。カリナ、俺が打ち漏らした奴を頼む」


「了解です!」


 戦闘マシーンであるイクサと、そつなくどんな仕事もこなすカリナ。

 これで穴のない遊撃チームになるのだ。


 そして、俺はルリアとアミラとラムハとダミアンGを率いて、手近なロボットから潰していくのである。


『ピピピピガガガー!』


 目の前に落下した樽が、機械音を上げながら変形する。

 樽が展開して、昆虫のようなロボになるのだ。


 八本の足と、翼のように開いた外側部分。

 そして複眼に、邪悪な意図を感じる牙のようなパーツ。

 大変に悪役ロボットっぽい。


 ダミアンGもこいつらと同じ場所から降ってきたのだ。


 ……。


 ん?


 同じ場所から?


 俺は、ロボットとダミアンGを見比べた。


「オクノくんよそみしないでー! うりゃー、風車ー!」


 飛びかかってきたロボを、槍の回転で跳ね飛ばすルリア。


「ああ、すまん! ええとね、ダミアンGとあのロボ、全然ちがくない?」


「言われてみれば違うわね。というか、共通点が一箇所もないわ」


「そう、そうなんだよラムハ! ロボっていう共通点だけで同類だと思ってたけど、あいつらはクリーチャーみたいなデザインなんだ。でもうちのダミアンGはドラム缶に手足が生えたポンコツロボだろ? おかしいなあって」


『何モオカシクアリマセンヨ~』


「ダミアンG、声が震えているぞ」


 だが、今はこれを追求している場合ではない。

 とりあえず、目の前にいるロボ達を連携で粉砕していくのだ。


『ホアーッ』


 おっ、ダミアンがビームサーベルでロボットとやり合っている。

 互角だ。

 今のダミアンのスペックで互角ということは、このロボ、一般兵じゃ歯が立たないな。


 天空の大盆が脅威に思われるはずだ。

 俺達の強さが上がっていたから、ロボをそこまで恐ろしく感じていなかったもんな。


「さっさと天空の大盆をどうにかしないとなっと!」


 俺はドロップキックで手近なロボをぶっ飛ばし、真横にいるやつを抱えあげてエアプレーンスピン。

 地面に叩き落として粉砕する。

 さらに横合いの奴の足をひっつかみ、ジャイアントスイングで振り回して他のロボに叩きつける。


『キュイイイーッ!』


『ガガガガガガ!』


 ロボ達の目が赤く輝き、俺めがけて殺到してくる。

 俺を脅威だと判断したようだ。

 こいつら、なんかネットみたいなもので繋がっているな。


「集まってくるぞ! 俺ごとやれ!」


「ほいほーい!」


 俺の指示を躊躇なく実行するのがルリアだ。


「スウィング!」


 振り回された槍が、集まってきたロボットを俺ごとぶっ叩く。

 当然俺はブロッキングだ。

 来ると分かっているならブロッキングでスタンも回避できる!


 プロレスも技を掛けられる瞬間に覚悟を決めれば耐えられるからな。


「本当にいいのね? 行くわよ、コールレイン!」


「オクノだから大丈夫でしょ……! 闇の魔槍!!」


『スウィンコールの魔槍』


 俺に向かって集まってきていたロボットたちが、まとめて粉々になった。

 よしよし、いいぞいいぞ。


 向こうでは、イクサが屋根の上でロボット軍団を迎え撃っている。

 軒下でカリナは援護射撃だ。


 インペリアルガードと皇帝たちも戦っているようだな。

 向こうは一般兵を抱えているから大変だろう。

 兵士が足手まといになる戦いというのも、大変レベルが高いな。


 だがしかし、これだけの手数があっても降り注ぐロボットの群れを撃退しきるにはちょっと足りないのだ。


「ウワーッ、船がー!!」


 船乗りたちの悲鳴が聞こえた。


 五花のやつめ、俺がここにいるのを察したな?

 めちゃめちゃな量のロボットを降らせてくる。

 現に、天空の大盆は港町の上空で止まったじゃないか。


 これは、一旦俺が外に出たほうがいいか?

 いや、性格最悪なあいつのことだから、港町を滅ぼし尽くすだろう。

 うーむ。


 あの高さまで到達する手段は今の所ないしなあ。


「困ってるようだなオクノ! 俺達の到着だぜ!!」


 そこへ、凄まじい勢いで飛び込んでくる船がある。

 ホリデー号だ。

 港町まで飛び込むと、そのまま船なのに風と水流を駆使してドリフトする。

 やや傾いた船から、オルカとグルムル、ロマ、フタマタ、インペリアルガードのファルコンに、日向が飛び降りた。

 それから見慣れぬ男が船から身を乗り出す。


 あれは誰だろう。


「こいつらはッ!! ダーク・ダイヤモンドの機械兵どもか!! 時代が変わっても、まだまだ生き残っていたとはなッ!! ならば俺は一人のヒーローとして立ち向かわねばなるまい! 復讐が終わっても、まだこの俺の手に残るヒーローの力ッ! それは罪なき人々を襲う悪と戦うために残されたのだと、今なら分かるッ!!」


「長いぞー!」


 俺は思わず突っ込んだ。

 男はハッとする。


 そして、船から飛び出した。


「行くぞ悪党!! 装着! エスプレイダー!!」


 すると、男が跳躍した。

 その全身が青い輝きで包まれて、なんかヒーローっぽいのになるではないか。


『ゲゲエーッ!! ア、アレハえすぷれいだー!! 生キテイタノカーッ!!』


「知っているのかダミアンG!」


『ウム、アレハ私ガマダ大首領トヨバレテイタ頃……ハッ』


 ダミアンG、慌ててお口をチャックする。


『危ナイ危ナイ……!! 危ウクおくのサンニ何モカモ聞カレルトコロデシタ』


 大首領……?

 そしてあのヒーローっぽいのと面識……?

 さてはこいつ、相当後ろ暗い過去があるのでは?


 だが、人の過去にはこだわらないのが俺だ。

 ロボだがな。


「まあいい、ダミアンG! あのヒーローを支援するぞ。どうやらヤツも俺の団の仲間になっているらしい。今、日向からパーティの詳細が送られてきた。……これ、送れるのか。どうなってんだこれ」


 ステータス画面を確認しながら、ロボの一体を捕まえてSTFの体勢に持ち込み、粉砕する。


「レイダーダーッシュ!!」


 疾走するエスプレイダーとかいうヒーローが、直線状に並んだロボを次々にふっ飛ばしていく。


「やるじゃねえかフロント! グルムル、俺達も負けてられねえぞ!」


「了解です、船長」


 オルカの銃弾が、グルムルの槍と水の呪法がロボたちを襲う。


「よっし、フタマタ副長、マキ、エスプレイダー! あたいらでやるよ!」


「わおん!」


「吹雪!」


「わんわーん!」


「鬼走り!」


「レイダーダッシュ!!」


『吹雪わんわん走りダッシュ』


 わんわん走りダッシュ!!


 凄まじい語感にクラクラする。

 だが、その威力は凄まじい。

 吹き荒れる吹雪で動きが止まったロボの軍勢を、フタマタの突進が次々に跳ね飛ばす。

 それを、フタマタの背を駆け上がった日向が空中鬼走りで次々に撃ち抜いていく。

 さらに、跳躍したエスプレイダーが遥か上空で次々に突進。


 ロボ達が連続して爆発した。


『連携ガえすぷれいだーヲ更ニエググシテマスネエ。戦イタクナイナアー。おくのサン、チョットあいてむぼっくすヲ借リマスヨ』


「あ、こいつまた勝手に」


 ダミアンGがアイテム欄に隠れてしまった。

 よっぽどあのエスプレイダーが怖いらしい。


 だが、これでうちの団が勢揃いしたようだ。

 増えに増えたり。


 団長、俺。

 副団長、オルトロスのフタマタ。

 最強の剣客、イクサ。

 ラッキー槍使い、ルリア。

 お姉さんな癒し手、アミラ。

 ロリ狙撃手、カリナ。

 フラグ満載の闇使い、ラムハ。

 海賊、キャプテンオルカ。

 オルカの相棒、グルムル。

 主務担当、イーサワ。

 体術使い、日向。

 古代の戦士ジェーダイ。

 人魚の万能呪法師、ロマ。

 ポンコツロボ、ダミアンG。

 謎のヒーロー、エスプレイダー。


 イーサワ抜きで行くとして、あと一人入ると三つ陣形が組める……!!

 だが、その算段はロボを壊滅させてからだな!

 後少しばかり、戦闘に励むとしよう!

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