第76話 俺、有名人になってる

 人魚のロマに案内されて、潜水艦がやって来るという村に到着した。

 都市国家群からそこそこ離れていて、風まかせだと3日くらいかかるところだ。

 オルカが使う風の呪法で、半日でついた。


「ありゃー! もしかしてあんたがた、オクタマ戦団だべか」


 出迎えてくれた漁師のおじいさんがいきなり俺達のことを知っている。


「知ってるの?」


「久しぶりに都市国家の船が来てなあ。すごくあんたがたの事を褒めてただよ」


 なるほど、俺達は結構有名になっているらしい。


「もしかしてあんがたが、この村を助けにやって来ただか?」


「そうだよ」


 即答した。

 俺のふわふわした正義感が、村を救えと囁いているのだ……!

 その直感を裏付ける何かとかは全然ないがな!


「ありがてえ! こっちに来てくんろ! あ、人魚さんもどうぞどうぞ」


「ほいほい」


 ロマも当たり前みたいな顔をして桟橋に上がる。

 そして、何かもにゃもにゃと呪文を唱えた。

 ロマの魚な下半身が、人間の足になる。


「足が生えた!」


「幻の呪法の応用よ。尾びれを実体のある幻の足にしちゃうわけ。まあ、あたいが水の生き物だってのは変わらないので、あんまり陸に長くいると乾いて大変だけど。定期的な水の補給が必要なのね」


「なるほど、ではつまり……」


「お姉さんの出番というわけね」


 我が団随一の(唯一の)水の呪法使い手アミラが出番を得た。

 じろじろとロマを見て、


「ねえオクノくん。この子、私とキャラが被ってない?」


「ロマはどっちかというと、ルリアとアミラを足して二で割った感じでは? ……そう思うとなかなか強烈だな! あ、胸は二人より大きい」


「オクノくん胸だけが価値じゃないわよ!! そこのところ今度夜にでもみっちりと二人きりで教えて……」


「あたいを放置して痴話喧嘩してるんじゃないわよ」


 ロマに冷静に突っ込まれた。

 いかんいかん。

 それにアミラもしれっと、淑女協定違反なことを口にしていた。


 見ろ、船の影でラムハが目を光らせているぞ!

 後でアミラはお説教かもしれん。


「お金が関わってきますね? では僕の出番です」


 イーサワがごく自然な流れで加わった。

 今回、村に話を聞くのはこの四人で行くことにする。


 そしてしれっとロマがパーティメンバーみたいな顔をしてるんだが。



1・ロマさん、こんなところにいていいんですか?

2・お前もパーティメンバーにしてやろうか!


「お前もパーティメンバーにしてやろうか!」


「!?」


 ということでロマを勝手にパーティ登録したぞ。

 これ、特に異論がないとそのまま登録されちゃうんだけど、ロマは別にそれで構わないっぽい?


「あー、別にいいけど。あんたも好きねえ。船には山程リザードマンがいるし、双首の犬のモンスターが甲板の犬小屋で日向ぼっこしてるし。なんなのあんたたち?」


「オクタマ戦団だ。どーれ、ステータスを拝見」


「いやーん」


 そんな小芝居をしながら、ロマのステータスを見るのだ。


名前:シ=ロマ=ルー

レベル:51

職業:マーメイドメイジ


力   :56

身の守り:87

素早さ :120

賢さ  :188

運の良さ:105


HP254

MP388


幻の呪法(人魚)30レベル

風の呪法25レベル

水の呪法20レベル


 おお、魔法使いタイプ。

 なんとなく見た目からそうかなーと思っていたが。

 あと、運の良さが高い。


 呪法も三種類使えるな。

 ただ、名前付きの特殊なのは使えないっぽい。

 ここはこの世界の普通の人だと仕方ないんだろう。


 幻の呪法(人魚)とはなんぞや?


 ついでに、ジェーダイのステータスも載せておくぞ!


名前:ジェーダイ

レベル:60

職業:古代人の戦士


力   :185

身の守り:170

素早さ :100

賢さ  :120

運の良さ:125


HP540

MP213


光刃剣55レベル

気の呪法50レベル


☆光刃剣

・リフレクトソード

★気の呪法

・フォースアーマー・フォースパワー・フォースチョーク


 すっげえ強いのだが、気の呪法が色々危ないな!

 フォースチョークはだめだろう。

 ちなみにジェーダイは、漁村が珍しいらしくキョロキョロしながら歩き回っている。


 これを、オルカが色々解説しながら案内しているようだ。

 あのおじさんたちはすぐに仲良くなったな。


 さて、ひとしきりステータス確認をして俺は満足した。

 ロマも、俺のステータスを見てゲラゲラ笑っている。


「何これ! 変なステータス! こんなの見たことない! なんで能力値表記がめっちゃ少ないの!? あとこの矢印なによ」


「スライドするんだ」


 シャッシャッシャッと技表をスライドすると、ロマは腹を抱えて笑った。


「わ、技多すぎぃーっ! 絶対あんたも把握できてないでしょ」


「お前、突っ込んではならぬことを突っ込んだな? 今まで誰もがスルーしてきたというのに」


 ロマ、恐ろしい女だ……!




 さて、俺達は村長の家っぽいところに案内された。

 だが四人くらいでどやどややって来たので、慌てて村長の奥さんが外に席を用意した。


「漁村にお偉い人とかやってこないし、だいたい飲み会は外でやってるから話し合いも外でやってよ」


 だそうだ。

 なるほど、海風が吹いて気持ちがいい。

 都市国家と言い、漁村と言い、外が好きなのではないか?


 まあ南国だしなあ。

 雨が降ったらどうするんだろうなあ。


 俺がそんなことを考えていると、いつの間にかイーサワが村長と話し合いを進めていた。


「ではそのセンスイカンなるものは、遠い父祖の時代からこの辺りに出没していたと。そして一年に一人、誰かをさらっていくわけですね。被害は大きくないようですが」


「いんや、おらたちは慣れてるからいいんだ。だが、旅人がやられる。偶然センスイカンの出てくる時期に海にいた船乗りは、船ごとやられた。あれは恐ろしいものだべ」


 ほうほう。

 結構な被害が出ているようだな。


 この村が無事な理由は、潜水艦を知らない海賊がここまでやって来たときに、まさに船ごとさらわれてしまった事件があったかららしい。

 あの海賊王までも、この海域を警戒して封鎖するに留めたほどだ。


 ちなみに都市国家の船乗りたちは、ある程度潜水艦が出てくる頻度みたいなのを把握しているようだ。

 今までも、潜水艦が出づらい時期を狙って通過していたとか。


「ということは、センスイカンとは上手く付き合っていたわけですね」


「んだ。だども……七勇者を名乗る奴らがやって来てからおかしくなっただよ。あいつらが来てから、センスイカンは頻繁に出てくるようになっただ。そして船を襲うだよ」


「七勇者とな」


「おや団長さん知ってるだか」


 俺が反応したので、村長が驚く。

 ここでイーサワが俺のことを説明する。


「団長は、七勇者と因縁が深い戦士なのです。宿敵と言っていいでしょう。先日海賊王国を滅ぼした際にも、七勇者と一騎打ちを行いこれを激闘の末に倒しているのです!」


「ひゃあ、なんと! あの化け物を一騎打ちで!」


「しかも素手で!」


「素手で!! ひええ、おっそろしい豪傑だべ」


 いつの間にか村人たちも野次馬で集まってきており、イーサワが語る俺の武勇伝に、「ひゃあー」とか「すごいだなー」とか騒いでいる。

 しまいには、屋台が出てきて海産物のあら煮が供され、みんなで酒を飲みながらイーサワの話を聞く集まりに変化した。

 なんだこれ。


「あら煮美味しいわねえー」


「そうねー」


 ロマとアミラがニコニコしながら、あら煮を食べている。

 こっちのお姉さんたち、すっかり仲良しになってるな?


 仕方ない。

 俺もあら煮を食べながら、イーサワの話がまとまるのを待つとしよう。


 だが、この話、進展する気配はなく、いつしか漁村全体を巻き込んだ飲み会になっていった。

 途中でオクタマ戦団の連中も全員合流し、飲めや歌えやの大騒ぎなのであった。


─────────────

すっかり有名人のオクノとオクタマ戦団。

漁村の飲み会は長いのだ。


お読みいただきありがとうございます!


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