第67話 俺、遺跡の地下を進撃する

 階段はどう見てもあとから作られたもので、しかも木造だった。

 ギシギシするけど、まあいける。

 降り立った遺跡は、一見して石造りの迷宮だ。


「団長、この男も一緒に持っていくのですか」


 グルムルが、担いだジェーダイのことを言っている。

 この中で一番体格がいいので、運搬役として頼りにさせてもらっているのだ。


「あ、そうだね。重い?」


「いえ。ですが戦闘の時はこれ置かねばなりませんから、テンポが遅れますね」


「なるほどー」


 俺はちょっと考えた。

 オルカが外野から、「殺しちまおうぜ! 置いてっても目覚めたら敵に回りそうじゃねえか」とか言ってるが、こんな面白そうなビームサーベル使いを殺すなんてとんでもない!!


「フタマタ、戦いには参加できなくなるけどいけるか」


「わおん」


 人のできた俺の犬が、了承してくれた。

 フタマタには炎の呪法があるし、人を一人載せていても鼻の効きには違いはない。


「わんわん!」


 背中にジェーダイをくくりつけて、フタマタが元気に先行していく。


「さすがは魔獣オルトロスね。大人の男一人を載せてても気にした様子もないわ」


 ラムハが感心している。


「体格的には大型犬くらいなんだけどな。パワーだけならでかいクマくらいあるんじゃないかな。俺と力比べでいい勝負するからな、フタマタ」


「ステータスも高かったものねえ。モンスターも成長するものなの?」


「ああ。戦いを経てフタマタのレベルが上がってる。決まった単位で上がっていくっぽくて結構強いぞ。また賢さ上がったし」


「ひええ、またフタマタに賢さで差をつけられたぁ」


 ルリアの嘆きが聞こえた。

 おいおい、イクサを見習うんだ。

 ほぼ全人類に賢さで差を付けられているのに、あいつはあんなに泰然としているじゃないか。


 さて、フタマタが先行してくれることで、俺たちは安全に遺跡を歩くことができた。

 この遺跡、ぼんやりとあちこちが明るい。

 どうやら照明をつけるシステムがあるようだ。


 一応、グルムルがフタマタのヘルファイアでつけた松明を持ってくれている。


「私の三叉槍は片手でも使えますからね」


 このリザードマンの剛力は、片手でも成人男性に匹敵するのだ。

 どうぶつ組大活躍だな。


「わんわん」


「おっ、罠があるんだな」


 オルトロスの忠告をもらって、俺がのしのし前に出る。

 そして、罠があると思しきところで防御の体勢を取った。


「ブロッキング!」


 罠が発動する。

 壁際から巨大な鎌が現れて、俺目掛けて振り子の要領で襲いかかってきた。

 これを体で受け止める!

 よっしゃー!


「イクサ!」


「裂空斬!」


 俺が受け止めた鎌を、イクサが斬撃で切り落とす。

 でかい刃部分をゲットなのだ。

 ホリデー号のヘッドにつけてかっこよくしよう。


「オクノ、さすがにそれは持っていけないわ。ポイしなさい」


「ええー」


「そんな大きな鎌を持ってたら戦うのに不便でしょう。それにこれから戦いがあったら絶対に壊すわよ」


「言われてみればそうか……。残念だ……!」


 ラムハに言われて、鎌をポイする俺。

 先端にでかい刃物がついた船、絶対かっこいいと思ったんだけどなあ。


 ……と、ここで気づく。

 これ、装備としてアイテムボックス入れとけばいいのでは?


 鎌を拾い上げて、装備のように持ってみた。

 おっ!


名前:多摩川 奥野


技P  :1060/1168

術P  :338/393

HP:1111/1148


アイテムボックス →

※カールの剣

※祭具・ローリィポーリィ

※戦士の銃

※首刈りの大鎌


✩体術         →

・ジャイアントスイング・ドロップキック・フライングメイヤー

・バックスピンキック・ドラゴンスクリュー・シャイニングウィザード

・フライングクロスチョップ・サンダーファイヤーパワーボム・エアプレーンスピン

・ブロッキング・ラリアット・ブレーンバスター

・エルボードロップ・アクティブ土下座・スライディングキック

・ナイアガラドライバー・パリィ・ワイドカバー

・ドラゴンスープレックス・フランケンシュタイナー・ムーンサルトプレス


★幻の呪法

◯幻炎術◯幻獣術◯雷幻術

◯幻影魅了術◯幻氷術◯水幻術

◯幻影戦士術

★陣形・陣形技      →

・マリーナスタンス3

・マリーナスタンス5

・デュエル


 おっ!

 装備できた!

 そしてこれを、ドラッグしてアイテムボックスの矢印に放り込む……。

 いけた!


「呆れたわねえ……。そこまでして持っていきたいの?」


「船をかっこよくしたかったからな」


「分からない世界だわ」


 ラムハがため息をついてみせた。ただ、ちょっと笑ってるので怒ってはいない。


「お姉さん的には、オクノくんのHPとかが結構な勢いで回復していっているのが気になるなあ」


 ここで、我がパーティの回復役にして回復薬であるアミラから意見が飛び出した。

 そう言えば、さっき見たステータスよりも色々回復してるな。

 七勇者カイヒーンを倒してから二時間くらいだろうか?

 HPはたっぷりあるから回復呪法はかけてもらっていなかったのだ。


「そうやって治っちゃうんじゃ、お姉さんの仕事がなくなっちゃう……」


「アミラさん、私たちはここまで急速に回復したりしませんから。普通は怪我をしたらそのままですから」


「うんうん、オクノくんを基準にしたらだめだよねえ」


 何気に散々な言われようでは?

 だが、俺がこうして高い回復力を持っているのにも何か理由があるかもしれない。

 そのへんはまた今度調べてみよう。


 今は遺跡の探索だ。

 次々と襲いかかってくる罠、また罠。

 俺はこれを、ブロッキングして、ブロッキングして、ブロッキングして、ブロッキングした。

 俺が受け止めた罠を、イクサとオルカとグルムルが破壊する。


「罠が多いなあ」


 俺が思わず呟くと、オルカが同意した。


「全くだ。こんなに頻繁に罠が出てきたんじゃ、昔遺跡にいた連中はどうやって生活してたんだ」


「もしかしてこれ、運のよさに関係して発動するんだったりして」


 俺が適当なことを言ったら、ルリアが「まさかー」と笑った。

 ちなみにルリアはしんがりだ。

 そこでは、一度も罠が発動していない。


 大体罠が襲ってくるのは、フタマタのすぐ後ろにいる俺とラムハが並んでいるところ辺りで……。


「あっ」


「あっ」


 俺とラムハが同時に声を上げた。

 ステータスの偏りについて、イクサがあまりにも目立つので見過ごされてきたが、ラムハも大概だぞ……!


名前:ラムハ

レベル:35/■88

職業:記憶を失った女/黒曜の女■


力   :23/■2■76

身の守り:30/■3■9■

素早さ :59/■75■■

賢さ  :111/4■1■■

運の良さ: 3/1■■


HP212/6■6■6■

MP292/■6666■


闇の呪法20レベル

✩杖

・スペルエンハンス・パワーエンハンス・アンチマジック

・スピードマジック

★闇の呪法

◯闇の炎◯闇の障壁◯闇の衝撃

◯闇の支配◯闇の呪縛◯闇の魔槍

◯闇の結界



 ほら、これ!

 運の良さ3!!

 ラムハの伏線っぽいスラッシュの横の能力値が三桁だから見過ごしていたけど、これめちゃくちゃ運が悪いのでは?


「あー……ごめん。運が関係しているの、あるかも。全部私がいるところで罠が発動してるわ」


 ラムハが申し訳無さそうにした。

 こういう彼女はとても新鮮なのだ。


「なら、俺が罠を防ぐことになると思うので、ラムハは可能な限り俺にくっついているのがいいのでは?」


 俺は提案した。

 けっして、よこしまな考えがあったわけではない。

 別に、久しぶりにラムハにくっつかれたいなーなんてこれっぽっちしか思ってない。


「そ、そうね。合理的だわ」


 ラムハは真面目な顔で頷いた。

 そして、俺の横にぴったりとくっつく。


 しまった。

 移動しながらくっつこうとすると、おんぶや抱っこでは俺の腕が塞がってしまう。

 ブロッキングが難しくなる。

 そうなると、真横にくっつくしかないではないか。


 ここは要改善だな。


「ラムハが役得だ……」


「羨ましいわ……」


「わ、わたしだって抱き上げやすいサイズのはず」


「多摩川くんの手が塞がっちゃうでしょ」


 女子たちの声をよそに、罠を引き寄せるラムハを伴い、次々と発動する罠を防いでいく俺なのだった。

 これ、ある意味安全だな。


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