第66話 俺、海賊王の砦を家探しする

 七勇者とか名乗っていたカイヒーンを撃破したら、謎のフィールドは解除された。

 どっちかが勝つとなくなるらしい。

 俺もこれ展開したりできるのかな?

 ちょろっとステータスをチェックしてみることにしたら……。



名前:多摩川 奥野


技P  :993/1168

術P  :313/393

HP:1051/1148


アイテムボックス →

※カールの剣

※祭具・ローリィポーリィ

※戦士の銃


✩体術         →

・ジャイアントスイング・ドロップキック・フライングメイヤー

・バックスピンキック・ドラゴンスクリュー・シャイニングウィザード

・フライングクロスチョップ・サンダーファイヤーパワーボム・エアプレーンスピン

・ブロッキング・ラリアット・ブレーンバスター

・エルボードロップ・アクティブ土下座・スライディングキック

・ナイアガラドライバー・パリィ・ワイドカバー

・ドラゴンスープレックス・フランケンシュタイナー・ムーンサルトプレス


★幻の呪法

◯幻炎術◯幻獣術◯雷幻術

◯幻影魅了術◯幻氷術◯水幻術

◯幻影戦士術

★陣形・陣形技      →

・マリーナスタンス3

・マリーナスタンス5

・デュエル



 デュエルに、幻影戦士術、そしてドラゴンスープレックスにフランケンシュタイナーにムーンサルトプレスっと。

 また技が増えてステータス欄がとんでもないことになってきた。

 マリーナスタンスも5があるな。

 これ、五人で使えるタイプってことだろう。


 今度試してみよう。

 そして、デュエルというのがさっきのフィールドを展開するやつかもしれない。

 こっちからも仕掛けられるんだろうか?


「オクノくん、何してるの?」


「ステータスを確認してるんだ。俺のステータス、データ量がクソ多くて」


「あー、そうだよねー! 今はなんか減ってるけど、全部出せばあたしのステータスの何倍も量があるもんねー!」


 ルリアは感心している。

 さすがだなーとか言ってくる。

 うむ、我ながらよく管理していると思う。


 イーヒン辺境伯から、ステータスを矢印で管理する方法を学んでおいてよかった。


 さあて、俺たちは堂々と海賊王国へ上陸する。

 海賊たちはみんな、あちこちにある小さな掘っ立て小屋に隠れてしまっているようだ。

 恐る恐るこっちを窺ってくる。


「なんで上陸できるんだよう……」


「たった一隻で俺たちの海賊艦隊を抜けてきたのかよー!」


「あいつ、体術だけで七勇者とかいう化け物をぶっ倒しやがった……。化け物だ……」


 これを見て、オルカが笑った。


「いいか、お前ら。海賊なんて言っても所詮はあんなもんだ。まともな仕事がやれねえから、はみ出し者になって徒党を組む。で、人様のものを奪って生活してるってわけだ。海の上にいるのも、仕返しが怖いからさ。海に逃げれば簡単には追ってこれねえからな」


「そうだったのかー。じゃあ、オルカもか?」


 俺の質問に、オルカの笑みが深くなる。


「俺はな、自由がないと息が詰まって死んじまうから海賊になったのさ」


 グルムルが、ムフーっと鼻息を出した。

 何か言いたげだが、オルカと視線を交わすだけで口は開かない。

 色々ありそうだぞ。


 だが、詮索はしないのが俺だ。

 何しろどう聞いていいか思いつかないからな……!


 ちなみに、海賊の幹部であるジェーダイは台車に載せて運んでいる。

 まだ目を回して目覚めない。

 それから、イーサワは都市国家に置いてきてるのだ。

 これからの戦いについてこれそうもないからな。というかあいつはうちの事務全般担当だし。戦闘要員じゃないし。


「おう、あれがシン・コイーワの砦だ。海賊王なんて言っちゃいるが、所詮は海賊だな。建築だってできやしねえから、砦ぐらいが精一杯だ。城なんざ立てられねえのさ」


 なるほど、材木を寄せ集めて作ったような建物が、そこにはあった。

 とても南国チックだ。

 周囲も熱帯雨林だしな。

 フロンティア冒険の時に使った、除虫用の草の汁を使ってなかったら、虫にまとわりつかれて困っていたところだろう。


「この島は元来、私たちリザードマン族が暮らしていたのですが、ここにシン・コイーワが訪れてから追い出されてしまったのです。残ったものは奴隷になり、これらの砦を作ったのでしょう」


 淡々と語るグルムルだが、きっと腹の中には怒りが渦巻いているだろう。


「グルムル、お前の仲間も解放してやるからな」


「ありがとうございます」


 彼はいつも通り無表情に見えたが、目がちょっとだけ細められていた。

 多分、これが笑顔何だと思うぞ。


「よし、じゃあ砦に入ってみるかー!」


「おー!」


 威勢のいい女子たちの声を背後に、真っ先に俺は砦へと足を踏み入れ……。


「わんわん!」


「フタマタに先を越された!」


「次はあたしだよー!」


「ルリアは危ないから一番槍やるのやめよう!」


 俺も慌てて、フタマタとルリアの後ろを追った。 

 罠でもあったらどうするのだ。


 結論から言うと、中には誰もいませんよって感じだった。

 まさにもぬけの殻だ。


「これは一体」


「逃げたのかしら。オクノくんの戦いがここからも見えていたはずだもの。恐れを成してしまったとか?」


「海賊、恐るるに足らずなのです」


「アミラの推測はあるかもしれないが、カリナ、慢心はよくないぞ。海賊と見せかけてとんでもない化け物になるかも知れない。この世界、常識というものが通用しないからな」


「ぶー。非常識と言うなら、オクノさんが一番非常識です。強くなるために人間じゃなくなった人たちを、人間のまま素手で叩きのめすじゃないですか」


「言われてみればそうだ」


 俺はハッとした。

 なんで素手で勝ってるの俺。


「多摩川くんの次元は凄い高みなんだけど、私はそこまでは行きたくないなあ」


 シツレイな事を言う日向だな!

 ま、でも、俺のレベルまで来るとなんか人間を超越したよく分からないものだしな。

 俺と互角っぽいイクサも、意味が分からん強さだし。


「裂空斬!」


 噂をしたら、イクサが技を使っている。

 どうやら、隠し扉が無いかあちこちをぶった切って回っているらしい。

 砦がギシギシ言い始めた。


「イクサやめろー! 砦が崩れるー!」


「オクノか。残念ながら隠し扉の類も無いようだ。壁という壁に穴を開けてみたが、何も見当たらない」


「おまっ、もう壁中に穴を開けて回ったのか……! もうだめだ、砦は崩れるね」


 俺は仲間たちに撤退の指示を出そうとした。

 すると、である。


「わん! わんわん!」


 フタマタが鳴いた。

 そして、奥にある部屋へと駆けていく。

 そこにあるのは豪華な椅子だ。

 なんか床に固定されてる。


「これはシン・コイーワの椅子? なんでこんな木造の砦なのに、椅子が固定されてるんだ」


 ここで、ピンとくる俺。


「グルムル、手伝ってくれ。こいつを押すぞ」


「はい」


 俺とグルムルで、椅子をぐぐっと押してみる。

 かなりの重さだが、それでもズズズッと椅子が移動した。

 おお、椅子の下に移動用のレールみたいなものがある。

 本来は何かの仕掛けで動くみたいだな。


 そして……椅子があった場所には、下へと降りる階段が口を開けていた。


「伯爵の屋敷と一緒だな」


 イクサが、俺と出会った帝国の頃の話をした。

 なるほど、地下へと潜る階段か。

 あの時は、六欲天が潜む地底湖に続いていた。

 そしてこの階段はどこに続いているのか。


「群島地帯には古代遺跡が存在しているわ。それは全て、地下で繋がっていると言われているの。いいえ、群島そのものが、沈んだ古代遺跡が僅かに顔を覗かせている姿だとも言うわね」


 ラムハの言葉に、俺は頷いた。

 ここからは、遺跡探索だ。

 海賊王は何を考えたのか、遺跡の中へ逃げ込んだらしい。


 海賊王退治と、宝探し。

 これは両方同時にやれってことなんだろうな。


 

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