第2話

吉武さんは、簑輪さんとは高校で? え、ネトゲ? へぇ、真似できん。いや、ネトゲとかSNSとかあんましやってないから、まぁ出会いがないね。城野覚えてる? そう、ロッシー。ロッシーさ、あいつツイキャスやっててさ、月1くらいで女の子と飯食ってるらしい。いや、それも向こうが出してくれるんやって? そう、かなりビビった。僕もやろかなって思ったけど、話すことないし人と飯食いたくねえしなと思ってやってないねん。


あ、ごめん。えっと聞きのがした。

あぁ、中学時代になんでウチをいじめたんかって、いや僕だけに聞いてもわからんやろ。僕、殺されんのかなと思って自衛のスタンガン持ってるくらいやで。

すみません、コークハイください。


――


というかさ、僕の思い出を話してもそれが事実とは限らんっていうのはわかってほしいな。聞いたことあるかもしらんけど、911テロがあったときのアメリカ人って、そのときあなたは何をしてたのと聞かれて、忘れるわけないと自信満々に答えるらしいねんけど、その人たちに後で調査すると違う記憶を話すらしい。記憶が空気のように曖昧っていうのを物語ってるけど、それは僕らも同じで、簑輪さんがいじめられてたというのを僕は真に受けてないどころか、まるっきり記憶にないというか、本人がいうからそうなんだろうなというか、どうでもいいというか。

聞いて何になるん?

あ、話ずれてる? ずらしてるねん。で、聞いて何がしたい?


小説のネタになるの、これが? 気ぃ狂ってるんとちゃう?

まぁええけど。あ、じゃあ僕も。


僕の話す内容はフィクション。好きに加工して面白くしてもらっても構いませんし、なんなら、どこの載せてもらっても構わんけど、その文責は簑輪さんが負うことになるし、その内容を僕が論評することになると思う。僕の過去は簑輪さんのものになった。僕と無関係の僕の過去だから脚色されてるので一言たりとも信用できないし、してはならない。これって小説に反してて面白いんとちゃう? まぁ、小説がくそだから、それ以上にアマチュア小説ってくそっぽいからどうでもいいけど。

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