思惑
マルスの記者たちがある女性を取り囲んでいます。
記者たちは戒厳令の事と、噂のガリレオ開発計画のことを聞きだそうとしているのです。
案の定、戒厳令については軽くいなされたのですが、ガリレオ開発計画の話題は、戒厳令よりもマルスの住民の最大関心事になっています。
ミコ、つまりナーキッドオーナーの口から聞き出せれば、大スクープ間違いなしと考えられるのです。
ナーキッドオーナーの写真は公開されたことがありません。
しかしオーナーの姉である吉川茜は、少しばかり写真などが出回っており、その茜が神々しいほどの美女と、ステーションDのレストランで食事などしていた。
さらにチョーカーをつけた女たちを従えている。
チョーカーとはナーキッドオーナーの愛人、つまりこのマルスでは我妹子(わぎもこ)として、認知されている女たちが身につけるものであることは、知れ渡っています。
感のいい記者連中のかぎつけることとなり、この騒動となったのです。
「ソル星系外惑星鉄道のことでしょうね、もうすぐ完成します」
「完成すればこの鉄道は開放されます、土星の輪が間近に見られますよ」
「ガリレオ衛星を、デヴィッドソン財閥などに下賜されたとか?」
「下賜ではありませんが、論功行賞の意味があります」
「知っての通り、マルス移住は彼らの協力があって実現したのです」
「女性を献上したからですか?」
「否定はしませんよ、当初、私はテラに介入するつもりはありませんでした、ナーキッドも成立させる気はありませんでしたよ」
「私は他にもやるべきことがありますので、休養のつもりだったのです」
「しかし女を頂いた、こういってはなんですが、そのような状況になってしまった」
「その女の為に、関わらざる得ないことになってしまった」
「結果的には、女を差し出した褒美として、テラを救い、こうしてガリレオ衛星を与えているのです、法的には問題ないのはご存知でしょう」
この後、本当の大スクープがあったので、このガリレオ開発計画の報道が小さくなったのですがね。
木星の四大衛星を開発するためという名目で、デヴィッドソン財閥にカリスト開発、ロッシチルド財閥にガニメデ開発、法王領の正義と平和評議会にエウロパ開発、鈴木商会にイオ開発が、割り当てられています。
ガリレオ衛星ステーションは、その衛星につながる路線の分岐点、この四つの衛星を管理するための、管理部門も設置が予定されています。
またソル星系外惑星鉄道の、拠点としての機能も持たせていますので、かなり大規模のステーションで、その内部には機能を増設して、ほぼ十万都市の計画も立てられています。
ガリレオ衛星ステーションからは、土星のタイタンステーション、天王星のチタニアステーション、海王星のトリトンステーション、エッジワース・カイパーベルトのエリスステーション……
宇宙鉄道は基本的には軍事路線、当然このソル星系外惑星鉄道はマルス防衛もかねています。
従ってガリレオ衛星ステーションは、防衛拠点の性格をあわせて持ち、軍事要塞としても機能するのです。
ほぼ出来上がったソル星系外惑星鉄道について、エールとゼノビアが、ニライカナイで打ち合わせをしていました。
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