第4話 気配とは?
元気で勢いがあって明るい人や芸能人に対して、『オーラがある』という言い方をする。反対に、この人何か嫌だなと感じた人が犯罪者とまではいかなくても、嫌な人だったり、自分にとって苦手な人だったりする。
言葉では説明しづらい感じをお掃除部では『気配』と言っている。
優は気配を感じ取ることが得意で、佐智と私はほとんど感じない。
でも佐智は元気で明るくて一緒にいてパワーを分けてもらっている気がする。
私はただお掃除した後の
翌日の放課後、体操服に自前のエプロン、紺の三角巾に身を固めたお掃除部員全員が美術準備室前に集まった。手には掃除道具の入ったマイバケツ。
「お掃除部です、美術準備室のお掃除に来ました。」
「ちょっと、今とても忙しいのよ。依頼した覚えもないし、またにしてくれないかしら。」
美術部の部長と部員が美術室から出てくる。
泉先輩が一歩前へ出た。
「見られたらまずいものでもあるのかしら。
「……いいわ、その代わり可能な限り準備室で見たもののことは、他言無用にして欲しいの。コンクールのこともあるし……。」
苦渋の選択、といった顔で美術部部長が戸を開け、中に入るとそこには…。
「なっ、どうして!こんなことになる前に、言ってくれたらよかったのに。これじゃあ手遅れよ、もう……。」
「コンクールの締め切り前でそれどころじゃなかったのよ。みんなギリギリで気が付いたらこんなことになっていて。」
美術準備室の中の机の上には、しおっしおに
「待って、それを片付けないで!もう少しで仕上がるから!」
これをまだ描いてる人がいたのか!
「……何が芸術かは私たちが判断することではないわ。恵さん、気が済んだでしょう。さあ、家庭科室で皿洗いよ。」
皿洗いは嫌いじゃない。友達とおしゃべりしながらどんどん洗っていく。
美術準備室の心配も消えて、心まであったかいお湯で洗っているようで楽しい。
「嫌な気配が傷んだ食べ物だったなんて、笑えるーメグらしいわ。」
「そんなに笑わないでよ、佐智。すみませんでした、泉先輩。」
「いいのよ。何事もなくてよかったわ。これでみんな嫌な気配がしたら相談しやすくなったでしょうし。さあ、皿洗いが終わったら、歓迎会をしましょう。料理部からクッキーを頂いてるし、三年生も色々と持ってきたわよ。」
洗い終わった食器や調理器具を棚に戻す。
心なしか食器棚が清々しくなったように感じた。
お掃除部は時々家庭科室でお茶会をしたり、落ち葉の季節に焼き芋をしたり、寒いときに豚汁を作ったりとおいしいものを食べることも大切な部活動の一つ。
部員同士おいしいものを食べて仲良くなり、またお掃除頑張ろうねというわけ。
「はぁぁ、このクッキーとってもサクサクしててバターもたくさん使ってあるみたいでおいしいですね。おいしさが体に染み渡るみたい。」
一年生の川西ちゃんがクッキーを食べながらため息をついた。
「最近の料理部はプラスパワーが入っているお菓子や料理を作る人がたくさんいて、文化祭ではお菓子類は即完売でなかなか手に入らないのよ。」
「恵先輩、食べ物にもプラスパワーがあるんですか?」
「幸せな人が、心を込めて食材も吟味して作るお菓子や料理は、心のすさんだ人が嫌々投げやりに作るものとはおいしさが全然違うわ。味もだし、体にもたらす影響もね。」
「へーそうなんですか。」
「
副部長の有馬先輩に泉先輩が声をかけた。私もお代わり欲しいな。
「私が淹れます。」
「ちょっと泉、これオレンジペコーじゃなくてアールグレイよ。」
笑い声が起きる。
新学期早々、嫌なことがあったけど、大抵は校内を清めてその後は部の仲間とおいしいものを食べて満たされる穏やかな日々が続いていくはずだった………。
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