ただの村人だが、勇者に選ばれた件

こたつみかん

第1話【プロローグ】〜ある村人の話〜

僕は村人だ。そう、村人。ポジション的にはまぁmobだと思う。僕の村の職業事情はちょっと変わっていて、10歳になると村の長老様から占いを受け、その結果に応じて職業が決まるというシステムになっている。


もちろん、【魔法師ウィザード】や【騎士セイバー】などといった職業も存在している。しかし、そんな上位職に就けるのは貴族階級のお偉い様のご子息、ご令嬢と決まっている。普通の村人僕たちは【農家ファーマー】【警備員ガードマン】【研究員サイエンスト】などなどごく普通の職業にしかならないそうだ。そう言えばこの間うちの領主様のご令嬢が上位職の【魔法師ウィザード】になったと噂されていたっけ…


え?そういう僕はなんの仕事をしているのかって?それは…非常に言い難いが、いわゆる【自宅警備員ニート】なのである。そもそも長老様から占いを受けた時には結果が【無】であったそうだ。だが、よく良く考えれば解せない話だ。あれももうかれこれ7年前の事か…


村で唯一の【自宅警備員ニート】である僕は皆から可哀想だという目で見られる。しかしながら、長老様から与えられた職業は絶対である。それ故に僕は働きたくとも働けない【自宅警備員ニート】なのである。


なんてことを考えていると、

「おい、クリスー!」

と僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。そして僕返事をする。

「なんだー?その声はセリスだな?呼んだかー?」

声の主はセリス。僕の幼なじみで彼は長老様から【秘書セクレタリー】という普通の村人には珍しい職業を与えられている。そんな彼が、どうしてだろうかとても焦った様子で返事をした。


「クリス!い、今すぐ俺と来てくれ。長…老様が、君をお呼びなんだ!」


「え?今なんと?」


「だから、長老様がお呼びだ!」


僕は暫く考えた。そして、

「いや、おかしいでしょ…長老様がこんな【自宅警備員ニート】に用事なんて…」


「俺にもわからない。でも、すぐにって言われてるんだ!頼むよクリス来てくれ!」


「はぁ……」


僕は仕方なくついて行くことにした。


そのあと何が待ってるかなど知る由もなく。

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