土佐編 二回目
朝御飯をいただいてチェックアウト。
今日も良い天気。
晴れが続いてくれるのは有り難い。雨だと運転不安だからな。
当初の旅の目的地は山の中腹にある札所。
地図のコメントによると『運転が不安な方は歩いて登った方が』という場所にあるらしい。当然、歩いて上る。
ふもとの駐車場に車を停め、リュック(中にはスポーツドリンク、お手拭き、お菓子)を背中に。地図のナビに従って。
車で進むのも良いが、歩いて行くのもまた格別。周囲の風景に溶け込んでゆっくり進むのも旅の醍醐味……等と考えつつのぼる道は細くて、車おいてきて正解だったとかみしめた。
街中のお寺に比べ小ぢんまりしている。でも門は立派だし、お堂の彩飾も綺麗だ。見回るうちに気がついた。山の中腹にある為に『大きな』建築物は作れなかった様だ。
上り道も急坂だったしなあ。
他の参拝者に混じって手をあわせた。
『挨拶はきちんと』我が家の家訓だ。
改めて周囲を探検しつつ御朱印どうしようと悩んだが、並んでいるのでやめておいた。
結願が目的じゃないし。
このお
昔ある所に、いられ(せっかち)で臆病で、殺生好きな男がいた。
稲刈りの時期だというのに猟銃を持って山に入り、獣を追いかけ回していた。
ある稲刈りの時期、銃で狩りをする事に飽きた男は連れだって歩いていた猟仲間にそれを言った。それを聞いた仲間は「なら鴨ふせはどうか」と提案し、男は喜んでその案にのった。
「鴨ふせ」とは明け方、鴨が餌を求めて田んぼの低い所を飛んでいるのを網で捕らえる猟である。
抱えていた獲物を仲間に押し付けた男は早速鴨ふせの準備をして寝たが、ドキドキワクワク、興奮して眠れず、暗い内から一人で鴨ふせに出掛けた。
田んぼに着くとまだ鴨は来ていなかったが、男は待切れず持って来た鉄砲をぶっぱなし、それに驚いた鴨がたくさん田んぼに出てきた。夢中で鴨を捕り、袋はあっと言う間に鴨で一杯になった。
だがその時どこからか「鴨返せ~」という声が聞こえてきた。振り向くとそこにはひとつ目の赤い大きな化け物が立っていた。驚いて逃げ出し、いつの間にか猟仲間の家の前に来ていた。すると仲間が出て来て鴨ふせに行くと言う。男は今の化け物の話をし、行ってはならないと言ったが相手は聞かなかった。
そして田んぼに着くと、さっき見たのはどんな化け物だったかと聞いた。ひとつ目の赤い大きな化け物だったと答えると、仲間は振り向きたちまち赤いひとつ目の化け物に変わった。男は肝をつぶして逃げ出し、どこをどう走っているかも分からなかった。
そして日が上り、気が着くとまた仲間の家の前に来ていた。出てきた仲間が男を見て笑うと「あ、あ、あ、赤ぼうれ~!」と叫んで逃げてしまった。仲間は寝過ごしたのであやまろうと思ったが逃げた男を不思議に思っていた。
後にこの事を聞いた村人は「それは男がむやみに殺生ばかりするから山の神様が怒ったんだ」と言い、あまりむやみに殺生することをいましめたそうだ。
鬼が出てくる正統派の昔ばなしだけれど、引っ掛かったのは鬼じゃなく場所。
舞台になってる山には弘法大師の伝説がある。『弘法さまが杖で突いたら水が湧いた』
という弘法大師の伝説として他でも聞く話。
これだけならまぁ四国だしでいいんだが。
変だなと思ったのは、昔ばなしの中に弘法大師の『こ』の字も入らない事だ。
山の名前が『清滝山』。
『弘法さま由来の湧水がつくった滝』があるんだから一言『弘法さまが修行された山じゃ』とか、最後のオチに『弘法さまに懲らしめられたんだろう』とか入ってもおかしくないのでは。
入ってないと言えば札所の事にも触れていな
い。札所になる前の景山密院繹木寺(けいさんみついん たくもくじ)についても。
何故昔ばなしに寺についてが全く入っていないか。単純に考えれば『ここに弘法大師は来ていないから』。それを確かめられればと思い足を運んで見たのだか。
昨日紙の博物館で聞いた話はとても参考になった。
ネットで検索したら『弘法大師が立ち寄ったお寺でなくては遍路のコースに入らない』と決まっている訳ではないらしい事がわかった。でも『弘法さまが立ち寄ったお寺』の方が箔が付くので『弘法さまが立ち寄った』事にした……納経所の人に聞かれたら怒られそうだ。
その他クチコミで読んだ寺社縁起等と、
昨日偶然立ち寄った『紙すく里』で聞いた話とをあわせて、『ここに弘法大師は来ていない』根拠になりそうなのは『宗我部元親の先祖』と『水』だ。
紙の博物館で聞いた。紙を漉くには水が重要だと。近くには仁淀川が流れているし、(昔は)川から水を引いて作業用水を確保していたのかなと想像していた。が、ネットに公開されている縁起に昨日改めて目を通した時『弘法さま由来の湧水は田畑を潤し、紙漉きが産業として定着する上で重要な役割を果たした』とあった。ここが土佐における紙漉きの発祥地だったという事になる。当然『紙すく里』の舞台でもあった事になる。隣のいの町でなく。現在、湧水が枯れてしまっている以上、作業場(産業の中心)が別の場所に移るのはまだわかるが、話の舞台まで移ってしまったのだ。今音を響かせている『滝』は人工のモノらしい。『まんが 日本昔ばなし』では『赤ぼうれ』と『紙すく里』は全く関連性が無かった。教えて貰った伝説にも清滝山の『き』の字も出なかった。これが一つ。
『紙すく里』舞台がここではないのと逆に、長宗我部氏の本拠地は南国市の方であったらしいのに、何故他郡の寺に納経してるんだろう。
四国を(一時期とは言え)平定した元親以降なら納得行くけど。特別信心深いご先祖だったのか。なら他の場所にも経納めたりしてるはずだけど。
これが二つ目。
想像日記 あかな @koubai_1024
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