第8話

 数日後、カノンたち八人は人気の無い広い公園に行った。アケミは説得されしぶしぶついて来た様子だったが、動物型ロボットたちは大はしゃぎして跳ね回っている。アークトゥルスは黙って空を見つめていて、ユラはカノンに背負われていた。


「なんというか……静かですね」


 想像していた雰囲気とは違ったのか、マルがやや不満そうに言った。


「ユラは今、最先端のロボットだからな。あまり目立ってはまずい」


 カノンは憂鬱そうに答えた。


 あの二人組からユラを受け取った時、もし誰かにユラを作った人は誰かと問われたら自分だと答えると約束してしまった。


 あの事を、今では少し後悔している。やってもいない事をやったとは言いたくないからだ。


 だが、人前に出なければユラの事が話題になったりもしないはずだ。一人や二人なら、他の人に見られたところでそんなに気にされることも無いだろう。そう思って、今回は人のいない公園に来た。


 スズたちは思いきり走り回れて楽しそうだがユラはここでは動けない。なのでカノンがユラを抱いて歩き回った。


 すると公園の隅に広い池があるのに気付いた。ユラがカノンを見上げたので、カノンは

「ああいいよ、泳いでおいで」と言ってユラを水に下ろした。


 人気の無い公園だがしっかり整備されていて水は綺麗だった。カノンは側にあるベンチに腰を下ろし、のびのびと泳ぐユラを眺めていた。


 しばらくするとスズが来て、ぐいぐいとカノンの服を噛んで引っ張った。


「何か見つけたのか?」


 カノンが立ち上がるとスズは森の方へ入っていった。カノンが後を追うとスズはどんどん奥へ進んで、やがてピタリと足を止めた。


「あ……」


 カノンが目にしたのは、高く積まれたガラクタの山だった。


 それらはよく見ると、様々なロボットの形をしていた。しかし長い間放置されていたのか、侵食がひどく皆錆びつき、原型を留めていない。


 スズはすがるようにカノンを見上げた。カノンはスズと目を合わせられないまま

「ごめん。これではもう直してあげられないよ」と力なく答えた。スズはしょんぼりとうつむいた。


 カノンは公園の管理者にこの事を電話で連絡し、スズと共に森を抜けた。


 森から出るとアケミが立っていて、カノンの方は見ずに

「外へ出たって良いことなんて無いよ」と呟いた。


 そんなこと無い、とは言えなかった。



 せっかく出掛けたのに暗い気分になってしまったが、カノンはもっと楽しい思い出を作りたかった。今回は運が悪すぎただけだ。


 カノンはそれから積極的に皆を誘って外に出た。ただ、嫌がるアケミを無理に連れ出すことはしなかった。


 家族と遊んで笑い、たまに人間の知り合いに出会えばロボットたちとの思い出を語った。ロボットたちは人間と同じ仲間なのだと、全身で表現しつつ生きたかった。

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