冬 後編

その日の放課後、涼花と凛、そして私の三人は揃って立っていた。人の来ない、学校の屋上、のさらに上。周りに防護柵すらない学校の六階の天井の上。そこに私たちは無言で立っていた。沈黙に耐え切れなかった私は、話を切り出す。

「凛、涼花に研修の電話の話した?」

「したよ。」

ここまでは想定通り。これは事実を言っても問題がないからか。

「じゃあ、何て涼花にその話したか覚えてたりする?」

「あぁ、そういうことね。」

凛は、私たちの質問に答えることなくうっすらと笑みを浮かべ、話し出す。

「もう気づいちゃったんだ。もっと時間かかるかと思ってたよ。」

呆気にとられる私たちに構う事なく、凛は続ける。

「正解。優香のデマを流したのは私だよ。吉川君に好意を寄せてる持田さんのグループに伝わるように広めたの。その証拠に、そのグループ以外はあまり知っている人がいなかったでしょう?」

私は何も言えなかった。彼女の行動を思い起こせばそれはすぐ証明されてしまって。信じられなかった。信じたく、なかった。

続いて涼花が口を開く。

「じゃあ、私がグループを抜ける原因になったあの噂も…?」

「うん、そうだよ。持田さんなんかお似合いじゃないって涼花が言ってたって、ネットで呟いたの。案の定、持田さんは私のアカウント知ってたから、そこからだろうね。」

信じられない。

「凛、何故そんなことができる?」

もうこれ以上彼女がついた嘘を知りたくない。そんな思いで口をはさむ。

それでも凛はうっすらと浮かべた笑みを崩すことなくこう言った。

「何故って、あなたは知っているはずよ、優香。」

「ふざけるな。何が、知っているはずよ、だ。私は何故かと聞いたんだ。質問に答えろ、凛!!」

必死で耐えていた今までの私を全て否定された気がした。私は思わず声を荒らげ、彼女の胸倉をつかんでいた。


と、その瞬間だった。


涼花の絶叫と共に、身体が引っ張られ、浮き上がる感覚がした。いつのまにか私たちは屋上の端まで移動していたらしい。凛が立っていた場所から後ろに向かって跳んだのだ。胸倉をつかんでいた私も勢いに引きずられ、宙に浮いていた。


世界がゆっくり動き出す。地面は近づいても凛は、笑みを浮かべている。

そして、何と言ったのだろうか、彼女ははっきりと、口を動かした後、満足そうな笑みを浮かべた。

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