晩秋

中学三年生、晩秋。

私の学校生活は夏とは一変、かなり辛いものになっていた。理由はというと、何故かいきなり持田さんのいるグループが敵意をむき出しにしてき出したのだ。心当たりは、一つしかない。一週間ほど前に凛から、私と吉川が研修の夜に一対一で電話をした、というデマが流れているという話を教えてもらったのだ。凛が言うには、そのデマが彼女たちのグループにまで伝わり、ご立腹だとか。デマの元情報自体は予想がつく。


私たちの学校は毎年、十月の上旬に研修旅行に行く。学年によって場所と日数が違い、京都に今までで最長の三泊四日ということもあって私たちはかなり色めき立っていた。私たちの部屋は、真由と私を含む七人部屋だったのだが、最終日の夜、私たちのルームメイトは綾香と麻里、そして私という三人を残してみんな消灯時間とともに眠ってしまった。私たち三人はしばらく、三人だけで話していたのだが、話題も尽きてしまったので、初日の夜にも電話をしたのだからどうせ起きているだろうという理論で下の部屋にいるクラスメイトの中谷たちに電話を掛けたのだ。案の定彼らは起きていて、電話に出てくれた。その後私たちは朝が来るまでずっと電話をしていたのだ。お察しの通り、その部屋には吉川もいた。だが吉川は電話で私たちが騒いでいるほとんどの間寝ていたのだ。ほんの数分しか電話には参加していなかった。そのうえ、殆どしゃべっていないのだから電話には参加していないと言っても過言ではない。私と吉川が会話をしたのは電話を切った後から起床時間までの間というほんの二時間程度かつ、マイン上での文章のやりとりのみ。


というような話なのだが、まあ真実が伝わっていれば問題にはならない訳で。一体どこで話がねじ曲がったのか、疑問だ。ただ正直、私は凛に怒りを覚えた。私は研修の後、凛にその夜のことを話していた。だから彼女は、すべての真実を知っている。それだというのに、デマが流れているという話を持田さんのグループの子から聞いて訂正してくれないのだろうか。誤解さえ解ければ、彼女たちに敵意を向けられている私の状況はかなり改善するというのに。


彼女たちの敵意は中間テストの後くらいからかなり顕著に表れ出した。私はいつも昼食を他クラスの瑞樹と一緒に私のクラスで食べていたのだが、ある日私と瑞樹が話し始めると、彼女たちは一気に無言になり、私たちの会話を盗み聞きしだしたのだ。私は彼女たちに背を向ける体制で食べていたので気が付かなかったのだが、瑞樹いわく、無表情でこちらを向いていたらしい。


更につらいのが授業中だった。中間テスト後に席替えをした際、吉川を挟むようにして持田さんと吉川、私が横一列に並んでしまっていたのだ。更に持田さんの反対側の隣は彼女のグループのメンバーが一人いるという状況だった。一番の地獄はここからだった。授業中の友達との会話、先生に当てられたときの発表の仕方、ジェスチャー。とにかく一挙一動全てに対する悪口を言われた。しかも中途半端に席が近いから全て聞こえてしまう。それでも彼女たちは私に対して話しているわけではなく、あくまで友達と話しているだけ。だから私は彼女たちに対して文句を言えるわけではない。ただひたすらに悪口を言われ続ける毎日。私は精神にかなり負荷がかかっていた。


私はあんな人たちに負けていられない、そういう思いで毎日学校に行っていた。

凛はそんな状況の私を見て心配したのか、

「大丈夫?つらいんだったら逃げちゃってもいいんじゃない?」

と言ってきた。でも私は、完全なるデマなんだから、いつかは誤解が解けるでしょ。そう答えた。凛は困ったような笑みを浮かべていたが、私は持田さんたちなんかに負けたくない、その一心で学校に通い続けた。

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