レモン
雨に包まれた街をゆく
赤や黄色の傘が綺麗だ
私はレモンを片手に
商店街を歩いていた
いつも立ち寄る古本屋
店先の商品にはシートがかけられ
奥ではおじさんが居眠り中
新しくできた雑貨屋さん
お洒落な品々に目を惹かれて
ついつい足を踏み入れてしまう
商品棚のいちばん隅
ぽっかり開いた空白地帯
少し前までは何か置いてあったのか
物の不在が妙に気になって
レモンをそっと置いてみる
すっかり溶け込んだ私のレモン
店の空間にしっかり馴染んで
私のもやもやも消え去った
私は店を後にする
レモンはもちろんそのままで
私はレモンが大好きだ
なんと言っても形が良い
あの紡錘形の
均整の取れたフォルムがなんとも良い
私のレモン
黄色いレモン
爆弾によく似た
私のレモン
脳裏をかすめる
危険な想像
瞬間突風吹き抜けて
ばっと吹き飛ぶ
綺麗な雑貨
ガラス片たくさん飛び散って
通りすがりの少女は真っ赤っか
危ない危ない僕の思想
貧しさと孤独からの僕の妄想
レモンはいつも掻き立てる
暴力的なさまざまを
だから僕は本当に
黄色いレモンが好きなんだ
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