【ネタバレ注意】 作品解説
「ゲームの悪役に転生した少年の異世界英雄譚 ~五色の妖精と世界の終わり~」をご覧いただきありがとうございます。
ここでは作品をもっと楽しんでいただくために、ちりばめられた作者の意図というものを紹介していこうと思います。
【全体を通して】
この物語は二つの軸を意識して書きました。
主人公は愛と良識をもってこの世界で生きていこうとし、それを悪意と暴力によって邪魔されます。そして、結局のところ世の中は自分にとって一番いい結果を求める、エゴとエゴのぶつかり合いであることを学び、自分はこれからどんな手を使ってでもココのためにハッピーエンドを手に入れてみせると誓っています。善人が善人であるがゆえに破滅する悲劇ですね。これが一つの軸です。
もう一つは深い愛情を持ったヒロインの存在です。
それでは各話を個別に見ていきます。
【第一話】
>「あなたって素敵ね。とっても素敵。ねえ、一緒にいてもいい?」
ココはルイに契約を迫る時、常に積極的でした。しかし最初だけはどこか控えめな態度をとっています。これはルイに受け入れてもらえるかどうか不安でいっぱいという、強い緊張ゆえの態度です。
ルイは全く気がついていませんが、ココにとっては本当に勇気を出した一言だったと言えます。こういうところから彼女の奥ゆかしさや繊細さを感じてもらえたらなと思います。
>「そ、そんなことより君のことが知りたいな。まだお互いに自己紹介も済ませていないわけだしさ」
>「本当!? 私のことが知りたいの?」
>「いいよ! 何でも訊いて! あ、名前はココ。ルイのためなら何でもするから! さっきの奴らを殺してこいって言われたらすぐにやるし、ルイの村の人間全員に『死んだ方がまし』って思わせることもできるよ!」
ルイに興味をもってもらえて嬉しくて仕方がないココ。受け入れてもらったこともあり、非常にテンションが高い状態です。
>(絶対選択肢ミスったな……)
ルイのモノローグですが、皮肉ですね。正解や失敗を気にするなら、マッシュを助けた時のことも気にしておくべきでした。
【第二話】
>「ううん。何でもないの。ただ、私はあの、妖精だから、食事の必要がなくて。今まで食べ物のことなんか考えたことが無かったから……」
>「そうなんだ」
以前黒の妖精であることを理由に迫害されたココにとって、人と違う妖精であることは強いコンプレックスになっています。そのせいでこのセリフも非常に歯切れの悪いものになってしまっていました。
ルイはそんなココの心理も知らず、情報収集に躍起になっていますが。
【第三話】
>「僕は世界中の人間を相手にするような真似は御免だ。そんなの時間の無駄じゃないか。それともココは魔法を使わないのは嫌?」
>「ううん、ルイがそう言うならそうする!」
>ココは少し考えた後、そう返事をした。
それまでルイの言うことなら何でも聞いてきたココですが、この時初めて若干の間を空けて返事をしています。この間が、ルイに対する失望の度合いを表しています。
>「ふ、二人で……? 本当に? 本当の本当の本当に?」
思っていたのと違ったとがっかりしていたココですが、二人で暮らそうと将来のことを話され、一気に嬉しさが高まっていきます。
こんな風に簡単に感情を揺さぶられてしまうのも、好きな人からの言葉だからです。
【第四話】
>彼女はこの一週間、ずっと店のマスコットとして椅子に座っている仕事をしていた。なにしろ見た目が良いので、それだけでなんとなく雰囲気が華やかになるのだ。
>暇だろうから店の売り子を手伝うかと何度か尋ねたけれど、それには断固として首を縦に振らなかった。座っているのがいいらしい。何が楽しいのか、とにかくご機嫌で大人しくしているのでルイも好きにさせている。
じっと傍でルイのことを見つめていられるからココはご機嫌です。飽きるはずもないですし、店の売り子を手伝ったりしたらルイから目を離さなければいけないのでやるはずがないですね。
>「ああ、町に行きたいんだけど、足がなくて」
>ルイが答えると、ココははっとした表情になった。それから背中を丸めて、暗い顔で俯いてしまう。
>「そう……」
他の妖精であれば、町に行くための魔法が使えます。それを知っているため、ココは「自分が黒の妖精でなかったら……」というコンプレックスを刺激され、落ち込んでしまいました。
>「どうしたの。別に手段が無いのはココのせいじゃないでしょう」
>ココの顔の前で笑顔を作ってみせると、彼女もかすかに笑った。
>「そうそう、その調子。可愛いじゃん」
コンプレックスを抱えたココに対して、笑顔で接するルイ。優しい様子を感じてもらえたらと思います。
>空には、土砂降りを予感させる黒々とした雲が渦巻いていた。
天候はここから最終話まで、状況の悪化に合わせて徐々に悪くなっていきます。
【第五話】
>「ルイに何をしているの、お前ごとき世界の塵のような人間が」
>ココがこの状況をただ黙って見ているはずがなかった。
>彼女は素早く叔父さんの顔を両手で掴むと、魔法を発動した。
>彼女の魔法の発動はシンプルだ。巨大な炎などの派手な飾りは要らない。ただ、一瞬で人を不幸に落とすためだけの魔法。
ルイの前だと可愛いだけのココですが、本質は人を不幸に落とすことに躊躇いの無い人知を超えた恐ろしい存在です。そのことがよく表れています。
【第六話】
この話で初めて、それまでよく分からない存在だったココが急に身近に感じられるようになります。
ストレートなココの感情が伝わってくるお気に入りの話でもあります。
【第七話】
>今さら迷いや躊躇いはない。ルイのためならすべてを捨てられる。惜しむことなど、あるはずもない。
第六話と合わせてココの強い気持ちが伝わってきます。
主人公が出てこない時はココの独壇場ですね。
【第八話】
最終話です。
ラストではみんなと仲良くできると考えていた善人が、敵と味方の区別を理解し、敵は排除しなければならないと学んでしまいました。悪役になってでもハッピーエンドを実現してみせるというある意味闇堕ちのシーンでもあります。
以上で作品解説を終了します。ありがとうございました。
ゲームの悪役に転生した少年の異世界英雄譚 ~五色の妖精と世界の終わり~ おかのヤギ @okanoyagi
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