つけ合わせのコーン
気がついたら、俺はステーキに添えられるコーンの一粒になっていた。メインのステーキならともかく、その他大勢のオマケみたいなコーンだ。正直、凹む。どんな世界だろうと、俺の人生は見向きもされない。
うわっ!前言撤回。ステーキでなくて良かった・・・。炭火の上で火炙りにされたあげく、ステーキホークで串刺しかよー。恐ろしすぎる。マジかよ、人間。ステーキ君の身にもなってみろ。
ジュー!
「あう。暖ったけー!反対側もヨロシク」
ブス!
「わぉん。そこ、そこ。気持ちえぇーわ。もっと、もっとガツンと刺してくれー」
・・・。ステーキ君、ドMだったのね。しかし、見た目、地獄絵図なんですけど。ステーキ君、今度は焼けた鉄皿の上に!
ジュ、ジュー!
「くぁー。最高だ。湯気、出てくるわさ」
はい、はい。もう聞き飽きたわ。って、俺達もかよ。うわっ。ばか。止めろ。俺はMじゃねーんだよ。猫舌なんだって。あれっ、食われる身なんだから猫舌、関係ねえし。やば。鉄皿近い。
ジュ、ジュー!
「あっちー。死ぬー」
ほんま、死ぬわさ。てか、俺、生きてんだっけ?ようわからん。頭んとこ、焦げた。って、コーンの粒に頭とか尻とかあんのか。
こうばしい匂いが漂う。キャロット君もポテト君も熱々の鉄皿の上でジュージュー音を立てながら姿焼き。残酷なり、人間。うまそうに眺めていた時のことを思い出す。すまん。みんな。食べる側から食べられる側になって料理されることの恐ろしさを知った。
『お待たせしました。こちらが、牛たんシチューランチになります。こちらが、ステーキランチでございます』
ぐっ。恋人同士なのね。しかも、女子、可愛い。が、牛たんシチューランチとステーキランチ。美少女の注文はどっちだ?
『はい。私、ステーキです。美味しそー』
マジかよ!予想に反してステーキランチかよ。俺、彼女に食われるんならあきらめるわ。あの白い歯で噛んでもらって、プチっと弾ける。後は彼女の栄養となって混然一体に・・・。うへへ。
うっわー。ステーキ君、めった刺しにされた揚げ句に、切り刻まれてるわ。グロいなー。まあ、でもドMだから超ー喜んでるし。しゃーねーわな。先に逝ってくれ。
くあー。キャロット君もポテト君も逝っちゃいましたかー。残すところは我々、コーンだけなのね。ワクワクするわー。彼女の口、ちっちゃくてかわいいわー。
『私、コーンってさー。つかみ辛くって、苦手なんだよねー』
『んじゃ。俺、貰うわ』
おい。ばか。やめろ。男に食われて最後かよー。何て哀れな・・・。
あれっ!俺れだけ食われていない。何が起きたんだ?
『もう、ほっぺについているよ』
彼女の白くて細い指がスッと伸びてくる。俺をつまんで口へと運ぶ。ふぅー。助かったー。
プチ!
痛ってー。マジですか。聞いてねーよ。
おしまい。
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