コールドスリープ

 AIは加速度的に成長して、人類を幸福へと導いた。AI戦闘ロボットの登場で地域紛争によって亡くなる兵士が激減、AIによる新薬の開発と医療技術の発展で病死も過去のものとなりつつある。AIによる自動運転技術は交通事故などの事故死さえ無くしてしまった。


 戦死、病死、事故死が無くなり人類は増えにふえた。西暦二千百年、世界人口はあっと言う間に二百億人を突破した。どんなに生産効率をあげても、食糧も資源も不足する事態が予測された。


 丁度その頃、AIによる解析技術の発展で、宇宙から届く膨大な数の電波を瞬時に分析できるようになった。巨大な宇宙電波望遠鏡が建造されて、そのスイッチが入れられんとしている。人々はテレビモニターの前で、固唾を飲んでその時を待った。


『全世界の皆様!これより、宇宙電波望遠鏡のスイッチが入れられます。我々、地球人がこの宇宙で孤独な存在なのか、はたまた、宇宙は知的生命体に溢れているのか。今まさに、その事実が明らかにされようとしております』


 厳かな儀式の後、宇宙電波望遠鏡のスイッチが入れられた。凄まじい数の電波をAIが分析していく。


 ビビー、ガガー、ドルドル、ピポピポ。


『地球人の皆様。あなた方は、今、人口爆発と言う危機に直面しております。我々は宇宙の隣人として、これを見過ごすことは出来ません。我々からのプレゼント、地球型巨大惑星を是非とも受け取ってください』


 宇宙から届いたメッセージと共に、巨大宇宙船の製造方法と地球型巨大惑星の座標が事細かに送られてきた。各国政府は宇宙移民に夢をはせ、なけなしの資源を投入して巨大宇宙船を建造した。


 それから一年がたったある日。地球資源の枯渇寸前に、遂に全人類が搭乗できる巨大宇宙船団が完成した。人々は我先にと宇宙船に乗り込み地球を出発した。二百億人の民がコールドスリープで眠る巨大宇宙船団が銀河を進む。その荘厳な光景は見るものを圧倒した。その雄姿は人類の希望そのものだ。






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 宇宙の彼方で知的生命体が、その光景をモニターしていた。


「もの凄い大船団だな」


「ああ、二百億人の民が冷凍保存されている」


「全く上手くいったものだ。これで我々は食糧難から救われる」


「そうだな。冷凍保存された食糧が、新鮮なまま我々の元に届くのだからな。しかも、タダ。その上、解凍して調理しやすいように一匹ずつコールドスリープカプセルに入っているとは傑作だ」


「ああ。我々が送った設計図が、巨大冷蔵庫だとも知らずに。あの冷蔵庫も、ちゃんとリサイクルして資源にできるように設計されているのだからな。人類と言うものはつくづくおろかな生物だ」






おしまい。

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