宇宙人に好かれて!
高2になった。平凡を絵にかいたようなぼくに、当然のごとく彼女はいない。クリスマスもバレンタインも誕生日だって、ぼくには関係ない。仲がよさそうな男女を見かけると心が沈んだ。新学年がスタートしても、ぼくの心は雪解けの気配すら感じられなかった。
ピポン。
授業中にスマホのメール着信音がなった。ヤバイ。音声着信を切っていなかった。ぼくは慌ててスマホを取り出し、モードを切り替えた。
ん?なんだこれ。
『ずっと好きでした。キミが生まれた時から』
悪質ないたずらメールか何かだろうと思ってメールを削除しようとした時だった。高校のグラウンドに巨大なUFOが出現した。クラス中が大騒ぎになる。パトカーのサイレンが鳴り響き、報道ヘリがUFOの周りを飛び交った。
先生たちは慌てふためき、避難先のグラウンドを失った生徒たちは、取りあえず体育館に集められた。その間に外の様子はさらにあわただしくなり、地上では自衛隊の戦闘車両がUFOを取り囲み、上空を戦闘機が飛び交った。
校長先生が壇上に立ち、マイクを握った。
「えー。先ほど宇宙人から全世界に向けての発表がありました。わが校の生徒のスマートフォンにラブレターを送ったとのことです。各自、自分のスマートフォンを確認してください!」
生徒たちはもはやパニック状態で自分のスマホを取り出した。ぼくも慌てて自分のスマホを確認する。
『ずっと好きでした。キミが生まれた時から 差出人:宇宙人』
えっ、うそ、まさかぼく。差出人、宇宙人ってなんだよ!意味わかんねー。ってかどうすんのよ。ぼくは恐るおそるメールを開いた。
『こんにちは。宇宙人です。突然でごめんなさい。私、ずっとキミのことを月のかげから見守っていました。いつ告白しようか。何度もなんども悩みました。私の心のときめきは、もう押さえ切れません。私はあなたが好きです。宇宙一、大好きです。つき合ってください。お願いします」
はあーっ。やっぱりぼくじゃん!てか、なんでぼくなわけ?他にイケメンの男がうようよいるだろ。
「心当たりのある生徒は手をあげてください。自衛隊方がUFOまで案内します」
自分じゃないとわかって安心した生徒たちが、きょろきょろとあたりを見回し出す。おいおい、この状況で手をあげられる奴なんているのか?完全に人柱じゃんかよー。泣きてー。逃げてー。どうすんのよ。
「えー。自衛隊の方よりご連絡がありました。宇宙人のもうすところによると、愛する彼と一目会って話ができないのなら、地球を消滅させて自分も死ぬとのことです。どうか、地球のために手をあげていただきたい。さもなくば強制的にスマートフォンを確認して回るとのことです」
体育館の扉と言う扉が開かれ、武装した自衛官たちが立ち並んでいるのが見えた。話を聞きつけたテレビ局のカメラが望遠レンズで生徒たちを撮影している。
あー。終わった。ぼくの人生、何もかも。涙でかすんで視界がゆがむ。ぼくは観念してゆっくりと右手をあげた。
ぼくは直ぐに自衛官に取り囲まれ、UFOの下に連行される。UFOの下から黄色い光が伸びて、高校生くらいの女の子が空中をゆっくりと下りてきた。
「やっと会えましたね。来てくれて、うれしいです。私はキミのことが大好きなんです。あのー。良かったら私とつき合ってください」
彼女はぼくの顔を見てにっこりとほほ笑んだ。テレビ局のカメラが二人の様子を全世界に伝えている。ぼくに逃げ場なんてなかった。
『来てくれて、うれしいです』って完全に脅迫じゃん。『私はキミのことが大好きなんです』ってメガトン級のおデブちゃんじゃんかよ。『あのー。良かったら私と付き合ってください』って断れんのかよ。あーもう、ぼく、クラスのみんなの笑いものなんだろうな。
平凡な暮らしに慣れ親しんでいたぼくは、人類の運命をかけた決断を迫られた。どうやら彼女の体は人間の女の子と変わらないようだ。顔だてかなりかわいい。問題は・・・。
「ぼくが協力するから、キミ、ダイエットしなさい」
「はい」
彼女はコクンとうなずいた。こうして二人のダイエット大作戦が始まった。政府の全面協力のもと。
今日から二学期が始まる。ぼくは教室で登校してくる彼女をまっている。
ダイエット?もちろん、大成功さ。
おしまい。
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