ひみつはトクベツ
「今日も、ありがとう」
「う、うん」
ちゅ。
一瞬だけ頬に触れた唇の感触だけで、私の顔が十分は熱いままなのを、あおいちゃんはわかってるんだろうか。
はじめはとにかく怪物たちからあおいちゃんを守らなくっちゃって必死だったのに、いつの間にかあおいちゃんにチューしてもらえることを期待して駆けつけてしまう自分が恥ずかしい。
でも、だって、嬉しいんだもん。
ずっと、ずっと仲良くなりたいって思ってたあおいちゃんにチューしてもらえるのはもちろん、それをあおいちゃんが「みんなには秘密」って言ってくれたのが、とても嬉しい。
だって秘密は特別だ。私とあおいちゃんだけの秘密。私達ふたりだけの秘密。それはあおいちゃんにとって、他のみんなと私は違うんだってことの証明だと思えた。
あおいちゃんにとって、特別な人になれて、嬉しい。
その喜びを噛みしめるたび、じぶんがふにゃふにゃになっていくような気がして慌てて気を引き締める。そんな邪な気持ちであおいちゃんを守りきれるわけがないんだから、ちゃんとしなきゃダメだ。
時々様子を見に来るお姉さんは、
「いんじゃない? 動機がなんであっても、思いが強まれば貴女の「力」も強くなって、あおいちゃんを守ることに繋がるんだし」
なんて言ってたけど。だめだめ。そんなふわふわした気持ちのせいであおいちゃんを守れなかったら後悔したってしきれない。
……でも理性だけじゃどうにも出来ないから、いつも急いでその場を離脱している、んだけど。
「待って」
いつかのようにまた、ぎゅっと両手を握られて引き止められた。期待と不安とが混じって、喉がひくっと引きつった。
「な、なに」
「あの、かえでちゃん」
あおいちゃんはもじもじと、少しだけ躊躇うように視線を泳がせてから、思い切ったようにパッと顔を上げて言った。
「こ、今度の土曜日、デートしよ?」
「ふぁ」
――篁かえで、十一歳。好きな人からデートに誘われてしまいました。
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