神託の勇者を探して

 神託を受けた。

『いずれ世界を救う運命の勇者を見つけるであろう』

 それは大司教から国王に伝わり、「勇者を見つけよ」という王命が出されるまで十日と掛からなかった。

 神託によれば、僕が勇者を見ればその者が勇者だとわかるらしい。


 その日から僕は国中を飛び回り、大陸でも有数の剣士や魔術師らに会いまくった。

 しかし、ピンと来る者は一人も現れなかった。

「俺じゃねぇのかよ」

 昨年の武術大会優勝者は、僕が「なんか違う」と言うと、肩を落として去って行った。


 そんな勇者を探す日々は続き、瞬く間に一年が過ぎた。

 ある日、定期報告のために王都に戻ると、自宅で待ち構えていた婚約者がぷりぷりと文句を言ってきた。

「いったいいつまで待たせるのよ! このままじゃ、おばあちゃんになっちゃうわよ」

「しかし、使命が終わるまで結婚は延期しようって話したじゃ――」

「もう限界なの! 先に結婚して、それから勇者を探せばいいじゃない」

 確かに。

 そんなわけで、僕と彼女はほどなくして結婚した。


 勇者が見つかったのは、それから十ヶ月後のことだ。

 なるほど、まだ生まれていなかったのか。道理で、どこを探しても見つからないわけである。

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