第15話「他愛のない話、気になっていること」
「それじゃ、早速活動を始めようか」
放課後。
俺と中野、そして涼奈の三人が揃ったところで、いよいよ新制ボランティア部の活動はスタートした。
といっても、メンバーが一人増えただけだが。
「あ、はい。今日からよろしくお願いします」
既にお互い見知った仲なので、特に自己紹介なども無い。
……にしても、同じ部活に妹がいるってのは、変な感じだな。
これまで学校ではお互いほとんど絡んでこなかったから、すごく新鮮だ。まぁそれを言ってしまえば、ここ最近の涼奈とのやり取りは、どれも新鮮なものばかりなんだけど。
「うん、よろしく。……と言っても、今日はこれといって活動する内容も決まっていないんだよね」
「そうなんですか?」
「今日というより、ほぼ毎日だけどな。ここ最近は俺と中野の二人になることが多かったから、活動をするにできなかったんだよ」
中野の説明に、俺が付け加える。
すると、それを聞いた涼奈は、どこか複雑そうな表情で。
「ずっと二人だったんだ……」
と、ポツリ呟いた。
「んー、そうだね。それじゃあ今日は、いつも通りの感じで行こうか。本当は涼奈ちゃんが来たら、一緒にどんな活動をするか考えようかと思っていたんだけど……まあ、初日だからね」
「普段通りか……何か、逆に難しいな」
改めて聞かれると、普段何してたっけな。
適当に本を読んだりスマホをいじったり、時折中野と談笑しつつ部活動終了の時間を待つってのが日常的な光景だったような気もするが、果たして。
「そんなに固く考える必要は無いさ。いつも通り、僕と他愛のない話をしてくれればそれで」
そう言いながら、チラっと涼奈の方へ視線を飛ばす中野。
……今のアイコンタクトみたいなの、何なんだ?
涼奈も涼奈で、難しい顔をしているし。
「他愛のない話か……そうだな」
そんな涼奈の表情を伺いつつ、俺は突然中野から振られた『他愛のない話』となる話題を考える。
最近、何か面白いことあったかな……色々と思い浮かぶことはあるけど、果たしてそれは他愛のない話なのかは微妙なところだ。
涼奈とのことなんて、なかなか話しにくい話題もあるし……そうだ。
「そういえば、悠一が彼女に振られたらしいぞ」
丁度今朝仕入れたばかりのホットな話題を投げてみる。
すると、興味深そうな面持ちを見せながら話題に食いつく中野。
「へえ、やっぱりそうなったかい」
どうやら、勝手に悠一が振られる未来を想像していたみたいだ。
かわいそうなやつである。
「そういえば涼奈は知らないよな。悠一ってのは、俺のクラスメイトで、一応子の部活に所属してる幽霊部員の一人なんだが……まあ、そいつが彼女に振られたそうなんだ」
「……ふーん、そうなんだ」
一方、こっちはあまり興味が無さそうである。
それもそうか。涼奈の知らないやつの話だし。
「で、悲しみのあまり結局封印してたギャルゲーをまたプレイし始めたらしいぞ。タイトルは何だっけな……虹色グラフィティだとか言ってたような」
「──にじっ!?」
と、俺が記憶を頼りに勧められたゲームタイトルを口にすると、さっきまで全く興味を見せていなかった涼奈が、突然驚いたように声を上げた。
「ど、どうした涼奈?」
「……はっ。いや、何でもないから。うん、何でもないよ本当だよ」
必死にごまかそうとする涼奈。
虹色グラフィティなるゲームに、何か心当たりでもあるのだろうか。涼奈がゲームをしているところなんてみたこと無いし、ましてやギャルゲーだけど……。
と、不思議に思っていると。
「その、好きなアーティストがいて、最近出したアルバムが同じ名前だったからびっくりしちゃって」
と、説明をしてくれた。
なるほど。そういうことだったか。
まさか涼奈がギャルゲーの名前に反応するはずないもんな。
「……ふふっ。なるほどね」
一方、中野も納得したような表情を見せる。
それにしても、慌てた涼奈を見るの、ここ数日で何回目だろうな。ふと思い浮かべてみると、ちょくちょく見ているような気がする。
こないだ、母さんたちが帰ってきてた時に部屋へ呼びに行ったときなんか、かなりあたふたしてたもんなぁ。
今まで、そういう涼奈の一面を見たことが無かったから、ちょっとだけ面白い。
「……そういうことだから、これ以上はこの話題は終わりで」
結局、そんな涼奈の一言で、悠一の話題は終わった。
さて……これ以上、他愛のない話になるような話題あったかな。
と、今日あった出来事を思い浮かべていると。
「それじゃ、僕から一ついいかな」
中野が、手を上げながらそう言った。
「ああ。どんな話題だ?」
「いや、話題ってほどでもないんだけど、少し気になってることがあってね」
「気になってること?」
「涼奈ちゃんと涼太郎、二人の関係についてさ」
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