第14話「こうなることが、なんとなく分かってた」
「お前、涼奈のこと気に入ってるよなぁ」
昼休み。いつも通り中野と二人で昼ご飯を取りながら、そんな話を振ってみた。
この間の休みから、ずっと気になっていたことだ。
やけに中野が、涼奈と仲良くしているところを目にする。涼奈も涼奈で、中野のことを苦手に思っている感じもなさそうで……まあ、仲がいいのは良いことだとは思うけど。
「そうだね。涼奈ちゃんとは、気が合うみたいなんだ」
「気が合うか。まぁ、それなら良かった。何というかお前は、敵を……いや、やっぱ何でもない」
言いかけて止める。自分から話を振っておいてなんだけど、この話題は辞めておこう。
「ふふっ、気を使ってくれているのかい?」
「そういうわけじゃないけど……あまり、触れて楽しい話題でもないしな」
「そうだね。僕はあまり気にしていないけど、涼太郎がそう言うなら辞めておこうか」
「ああ。それより今は、涼奈とお前の関係が良好って話をしよう。俺としては、結構嬉しいんだぜ? お前と涼奈が仲良くしてくれることが」
過去、中野は色々とあったからな。
こうして涼奈と仲良くやっていけそうなのは、友人として素直に嬉しい。
「さっきも言ったように、気が合うからね。それに……趣味も、似ているみたいだし」
「趣味? ああ……」
料理のことか。
料理一つでここまで親睦を深められるのは、少し羨ましいと思ってしまう。俺も料理始めるか……? いや、ろくなことにならなそうだからやめておこう。
「……どうやら、また勘違いしているみたいだけど」
「ん?」
「いいや。何でもないよ。それより、今日から涼奈ちゃんが部活に来るみたいだけど……さて、どうしようか」
「そうだなぁ……最近、俺たちも活動らしい活動をしてないし」
去年までは、そこそこ出席率の良い先輩もいたから割と部活動らしいこともしていたけど、今年に入ってからは全くそれらしい活動はしていない。
俺と中野も、こうして部室にこそ足は運ぶが、お互い本を読んで過ごしたり、適当に雑談したりと『ボランティア部』としての活動とは縁遠いことばかりしてきた。
ただ、これからは涼奈も加入するわけだし、少しくらいはボランティア部っぽいこともしていった方がいいだろうというのが、中野の意見。ちなみに、俺も概ね賛成。
「とは言っても、この人数じゃ出来ることも限られてくるよなぁ……」
以前行っていた活動といえば、放課後にゴミ拾いをしたり、近所の介護施設を訪問したりと高校生らしいものだったが、俺と中野、そして涼奈の三人ではできることも限られてくる。
この中なら……せいぜい、学校周辺のゴミを拾って集めるくらいか。
「とりあえず、涼奈ちゃんが来たら一緒に考えようか。どのみち、今日すぐに活動は出来ないだろうしね」
「ああ。そうするか」
結局、議題は放課後に持ち越すこととなった。
◆
「え? 涼奈、部活動決めたん?」
お昼休み。
いつものようにクラスメイトの
「うん。ボランティア部にしたよ」
「ボランティア部って……なんでまた、そんな部に」
有紀と私は、小学校からの親友。
だから、私がボランティア部を選んだことが、意外だったんだと思う。
今まで、有紀の前でボランティアのボの字も出したことないしね。
「何でって……うーん、色々あって」
なんて言って説明すればいいのかな。
本当の理由は、お兄ちゃんと杏子さんがずっと一緒にいるみたいだから心配で……ってものなんだけど、それを正直に話すわけにもいかないし。
ボランティアに興味があって?
……いやいや、それは流石にすぐバレるよね。
「えー……じゃあ、私もボランティア部に入部しよっかなー」
「え、有紀も?」
「だって、涼奈は決めちゃったんでしょ? だったら私、一人になるし」
そういえば、前に『一緒の部活に入ろう』みたいな話をしたんだっけ。
すっかり忘れてた。有紀に悪いことしたかな。
「ちなみに、ボランティア部って誰がいるとか分かる? 一年生で、入ってる人とかいるんかな?」
「確か、一年生は私だけって聞いたけど……先輩も、幽霊部員の人が多いみたいだよ」
「ああ、それは聞いたことある。とりあえず籍だけおいて、部活には一切出なくても怒られない部活の一つだって」
杏子さんの言っていた通りだ。
もちろん、私はちゃんと出席するつもりだけど……よく考えたら、私と杏子さん、それからお兄ちゃんの三人しかいないんだよね。
「それじゃ、先輩もほとんどいないのかー」
「うん。一応、二年生の中野杏子さんって人が中心で活動してるみたいだけど」
「中野杏子……ああ、あの先輩ね」
「あれ、有紀知ってたの?」
「んー、そこそこ有名だしね。結構可愛くて、男子からの人気高いらしいよ」
そうだったんだ。
私はあんまりそういう噂に詳しくないから、全然知らなかった。
「じゃあ、先輩は中野先輩だけ?」
「いや、そうじゃないんだけど……」
「けど?」
「……あと、私のお兄ちゃんがいる」
結局、誤魔化しきれずに話をしてしまった。
「え? そもそも涼奈のお兄さんって、うちの学校だったん?」
「うん。有紀には話してなかったけど……」
有紀は、私にお兄ちゃんがいることは知っていたけど、同じ学校だということは伝えたことがなかった。
わざわざ伝える必要もなかったし、変に勘繰られるのも嫌だし、それに……。
「へー、知らなかった。それは興味あるなぁ……。じゃあ、今度部活見学がてら、私も遊びに行ってみようっと」
こうなることが、なんとなく予想出来てたから。
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