6.
「こら、渡瀬。来てくれた方に急に愚痴吐かない」
後ろから声がし、振り返ると180cmはあるだろうか。
長身の男子生徒がファイルを何冊も持ち、少し呆れた顔でドアの前に立っている。
私の目の前にいたオレンジのつなぎ集団は一瞬で笑顔になり、「お疲れ様です」とあいさつを交わす。
「あ、俺3年の前園佳祐。一応学園祭の有志の総責任者。ごめんねー、小坂が無理矢理連れてきたみたいで。でもせっかく来てくれたんだし、よかったら話でも聞いていってくれない?」
営業のセールスとかにあった時ってここで足を止めると危ない方向に進んでしまうよね。
このままここに残ったらもしかして学園祭有志入部させられてしまうのでは。
脳をフル回転させるけど自分の中でいい思考が思いつかない。
返事が返せず立ち止まっていると黒板に大きく書かれた文字に視界に入った。
「永劫回帰...?」
「あぁそれね、一応学園祭のスローガン。正直学年集会とかでみんなの前で発表するだけだからみんな知らないし俺らの活動スローガンみたいなとこあるけどね」
「どういう意味でしたっけこれ」
小坂がじっと黒板を見つめ、前園先輩に尋ねる。
私も中学生の時の国語の授業で四字熟語を覚えさせられたときに知っただけで
意味はとっくに忘れてしまった。
「この世に存在する全てのものは永遠に同じことを繰り返している。その中でも今の人生を肯定して一瞬一瞬大事に生きようという意味だよ。」
「へぇ...」
「前にいた先輩が引退したときにね、貴方たちの取り組みは誰かから評価されることも少ないし、何をやっているんだろうと思う時がくるかもしれないけどそれが正しいと思う行動なら堂々とすべきだって言ってくれたの。それでこの言葉」
自分の中でドクンと胸を打つ音が聞こえた。
”正しいと思う行動なら堂々とすべき”
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